【リハに役立つ!!】バランス保持練習:体性感覚について

【医療者向け】バランス

バランスを保持するために人は視覚・体性感覚・前庭感覚の情報を基に姿勢を調整しています。

【それぞれの感覚で得る情報】
視覚:見え方の変化・眼球運動の変化に基づく周囲の環境と身体の距離関係
体性感覚:足底や下肢を中心とする全身の感覚情報に基づき、支持基底面に対する身体の位置や動き全身の姿勢や協調関係
前庭感覚:重力や頭部位置の変化を検知して身体の位置・動き

下肢の体性感覚と姿勢制御

体性感覚は大きく表在感覚(表在感覚)と深部感覚に大別されています。

表在感覚

表在感覚は触覚・圧覚や温度覚、痛覚刺激の有無を検知します。
この中でもバランス保持に大きく関わるのは足底にある表在・圧覚刺激情報です。
足底は手掌部と同様に無毛性であり、無毛性皮膚の構造は機械的刺激がより強く検知し、精微な感覚を支えています。
通常、足底は立位姿勢時に唯一床面と接している部分であり、多数の機械的受容器が足底の皮膚の変化を感知し立位姿勢の状況が正確に伝えられます。

深部感覚

深部感覚は筋紡錘や腱受容器、関節受容器(固有感覚受容器)を通して運動・位置、力感覚を検知し脳まで伝達します。
特に足底部に比較的近い前脛骨筋や下腿三頭筋などは伸長された情報に基づいて足関節を支点として、どの程度前後に傾いたのかを検知します。

足底・足部の体性感覚情報としての役割

足部からの体性感覚入力が下腿筋の伸張反射を引き起こすまで約0.1秒かかります。(反射)
しかし、足底・下腿筋に振動刺激を与えたことに対する姿勢応答には約1秒かかります。(反射×)
伸張反射は0.1秒という時間に対し姿勢応答には約1秒かかることから、下肢の体性感覚情報に基づく姿勢応答は反射ではなく、中枢神経系による高次の調整作用に基づくものだと考えられています。
足関節部をアイシングなどで阻血状態にすると、足関節を含む遠位部の感覚受容器(足底の表在感覚・足関節部の関節受容器)の情報が利用しにくくなります。
足底の表在感覚・足関節部の関節受容器の感覚情報が得られにくい状態で閉眼すると、ゆっくりとした周期の姿勢動揺が生じます。(下図)
また、床がゆっくりと持続的に動揺している場合は、上記条件で姿勢動揺量が増加する一方で床を突然前後に傾けた状態では姿勢動揺量は増大しなかったとされています。
これは足底の表在感覚・足関節の関節受容器から得られる情報は比較的ゆっくりとした周期の動揺に対応していると考えられます。
大腿部を阻血し下腿筋群からの体性感覚情報が得られにくい状態で閉眼すると、足関節部を阻血した時と比較して早い周期で姿勢動揺が出現したとされています。(下図)
つまり、下腿筋群の伸張情報は姿勢を早い周期で常に一定に保つことに貢献していると考えられます。

外部刺激と姿勢動揺

立位姿勢に足底前部に振動刺激を与えると、姿勢前傾に伴う圧の変化と錯覚し姿勢は後傾します。
また前脛骨筋に振動刺激を与えると、前脛骨筋が伸長することで姿勢が後傾したと錯覚し姿勢は前傾します。

抹消神経障害と姿勢動揺

抹消神経障害を有する糖尿病患者では、抹消神経障害のない糖尿病患者や健常者と比較して姿勢動揺は大きかったとされています。
この時、末梢神経障害を有する糖尿病患者では健常者よりも約66%姿勢動揺量が大きかったとされています。
ある実験では末梢神経障害を有する糖尿病患者の姿勢動揺は健常者が視覚情報・前庭感覚情報を上手く活用できない条件と同程度とされています。
末梢神経障害がある糖尿病患者は、バランス保持の際に視覚情報と前庭感覚情報への依存度が高いため、視覚・前庭感覚が上手く活用出来ないと、末梢神経障害の無い糖尿病患者・健常者と比較して姿勢動揺量がより大きくなります。

加齢と体性感覚情報

体性感覚情報は加齢に伴い感受性は低下していくと言われています。
しかし、床面に突起物があるような健康サンダルを履くことで、足底の感覚受容器に刺激を増強させることで姿勢動揺が減少するという報告があります。
立位時に床の固さを足底感覚だけで弁別させるような訓練を比較的長期に行うと、高齢者や片麻痺者の立位姿勢動揺量が減少するという報告もあります。
以上から体性感覚は加齢と共に低下することは避けられませんが、筋力や体力だけでなく感覚も訓練を継続して続けることで機能維持を図ることが可能であり、将来的な転倒リスク軽減に繋がると考えられます。

感覚の重みづけ変化

Doumas M, et al:Adaptation and reintegration of proprioceptive information in young and older adults postural contril. J Neurophysiol  104:1969-1977,2010
上記の研究では条件を2種類用意し、閉眼状態で立位姿勢を対象者に維持してもらいました。
条件1:前後動揺の同じ方向に床が傾く(前脛骨筋・下腿三頭筋の伸張由来の筋収縮が生じない)
条件2:前後動揺と逆方向に床が傾く(筋が通常の2倍伸長され、多くの筋活動が生じる)
2つの条件に対して前後に測定した通常の立位姿勢動揺量について比較し、それぞれの条件に対してどのように適応したのかをみています。
条件1では、事後測定で比較的早い姿勢動揺が10秒程度増加したとされています。
条件2では、事後測定で姿勢動揺にほとんど変化がなかったとされています。
バランス保持する際に閉眼状態であるということは視覚情報は使用できないので、体性感覚と前庭感覚情報でバランスを保持しないといけません。
●条件1
筋が伸長されないので体性感覚情報は上手く活用出来ません。そのため、バランスを保持する際の前庭感覚情報に対する重みづけ(依存度)が大きくなります。
床を通常に戻すと下腿三頭筋などの体性感覚情報が再び活用出来るようになるため、体性感覚情報に対する重みづけが大きくなります。
前庭感覚情報の重みづけが大きくなっている状態で、体性感覚情報の重みづけが大きくなるので一時的に2つの体性感覚情報の重みづけが通常よりも大きくなるため、大きな姿勢動揺が生じてしまいます。
重みづけを再調整し元に戻すために10秒程度の時間が発生したということになります。
一時的に体性感覚情報に対して過敏に反応して姿勢制御を行ってしまう
●条件2
では体性感覚情報が通常よりも大きく入ってくるため姿勢動揺が大きくなってしまいます。
そのため、全体として感覚情報への依存度を下げて徐々に前庭感覚情報に対する重みづけを大きくしていきます。
その後に床面を通常に戻しても、しばらくは全体への感覚情報の依存度は通常よりも小さいため、大きな姿勢動揺は生じません。
感覚情報に対する依存度が低い状態なので、体性感覚情報の変化で姿勢動揺量は大きく変わらない
こうしたバランス保持をする際の、感覚情報に対する重みづけの調整は若年者よりも高齢者で時間がかかるとされています。
そのため、感覚情報に対する重みづけの再調整にも加齢の影響があるといえます。

感覚情報の重みづけ評価

立位バランスを保持するために視覚・体性感覚・前庭感覚のそれぞれの感覚情報に対してどのように重みづけ(依存度)をするのかは個人差があります。
バランス障害のある患者に対してリハビリを行う際に、退院後の生活環境を踏まえて練習を行うことが望ましいです。
整備されているが人や車などの多い道を歩く必要があるときは、視環境が頻回に変化します。
反対に人通りの少ない田舎道では整備されていないことが多いです。
このように退院後の生活環境を想定し、それぞれの感覚情報に対する依存度を考慮しリハビリ・サポートを行っていく必要があります。

●視覚依存

開眼時よりも閉眼時に姿勢動揺が著名に大きくなる対象者は視覚に対する依存度が高いと思われます。

●体性感覚

柔らかい床面で立位姿勢をとった際に、固い床面で立った時よりも著名に姿勢動揺量が大きくなる人は体性感覚情報に対する依存度が高いと思われます。

●前庭感覚

頭部を上向きにして姿勢動揺が大きくなる対象者は前庭感覚情報に対する依存度が高いと思われます。

ライトタッチ効果

指先からの触覚情報は感覚情報の統合をサポートすると報告があり、姿勢動揺量が減少することが分かっています。(力は1N以下で支えていない)
また、指先からの感覚情報は状況によっては下肢の体性感覚情報を凌駕する場合があり、下肢から誤情報が入力されている場合でも指先からの体性感覚情報で中枢神経系は情報を補正出来ることが分かっています。
高齢者のような下肢の体性感覚情報が低下している対象者に対して、立位姿勢を安定させるために指先接触を利用すればサポートできる可能性があり、実生活・リハビリテーションに反映できる可能性が高いといえます。
また、指先で触れているものは固定されているものだけでなく、人と触れ合っているだけでも固定されているものには及ばないが姿勢動揺量が減少することがわかっています。
実生活・リハビリテーションで手引き歩行を行うことで安定するのは、筋力面だけのサポートではなく感覚機能面のサポートもしていると言えます。

コメント

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