【リハに役立つ】バランス保持に必要な感覚:前庭感覚編

【医療者向け】バランス

バランスを保持するために人は視覚・体性感覚・前庭感覚の情報を基に姿勢を調整しています。

【それぞれの感覚で得る情報】
視覚:見え方の変化・眼球運動の変化に基づく周囲の環境と身体の距離関係
体性感覚:足底や下肢を中心とする全身の感覚情報に基づき、支持基底面に対する身体の位置や動き全身の姿勢や協調関係
前庭感覚:重力や頭部位置の変化を検知して身体の位置・動き

前庭感覚と姿勢制御

前庭感覚に関わる器官は耳石器と三半規管です。
【それぞれの検知する感覚】
耳石器:頭部に対する垂直・水平方向への直線加速
三半規管:頭部に対する回転加速度
上記の前庭器官で得られる情報は視覚・体性感覚と統合され、前庭眼反射・前庭脊髄反射・前庭自律神経反射と呼ばれる様々な調節系に利用されます。

前庭眼反射

前庭器官から得られた情報は視覚・体性感覚と共に前庭神経核に統合され、傍正中橋網様体といった部位の神経回路を介して、外転神経核・動眼神経核といった眼球運動に関わる領域に伝達されることで、外眼筋を適応的に動かします。
前庭・視覚・体性感覚➡前庭神経核➡外転神経核・動眼神経核➡外眼筋
上記による眼球運動の調整により、ある対象物を視認している際には頭部が動いたとしても、眼球は対象物を視認出来るように回転し安定した視覚像を得ることができます。

前庭自律神経反射

自動車運転・ジェットコースターのような急激な揺れを前庭器官が捉えることで前庭自律神経反射を介して交換神経が刺激され酔いが生じます。
無重力の経験が無い見習い宇宙飛行士では無重力を始めて経験する際に、前庭器官に対する重力加速度が0になる状況に慣れていないため「宇宙酔い」が生じます。

前庭感覚と姿勢制御

前庭感覚が関わる姿勢制御は、比較的早い姿勢調整に寄与します。
(視覚:ゆっくりな姿勢制御に関与)
(体性感覚:ゆっくり・早い姿勢制御の両方に関与)
閉眼状態や末梢神経障害を有する糖尿病患者のような人では、姿勢制御の際に前庭感覚への依存が高くなります。
前庭感覚への依存度が高い状態では、小さな前庭刺激でもより大きな姿勢応答が生じます。
前庭機能が喪失したヒトでは、両側・一側ともに姿勢動揺や体感の動きが大きくなります。
例えば、床が後方に傾くと前庭機能が喪失しているヒトでは、健常者と比較して足圧中心がより後方に傾きます。(姿勢応答の大きさは大きくなるが、姿勢応答にかかる時間は健常者と変わらない)

前庭機能と小脳機能

測定過大とは目標とする対象物を通り越してしまうように運動反応が過剰になってしまう問題です。
通常、測定過大とは小脳機能障害由来の失調症状の一つです。
しかし、前庭機能が喪失すると測定過大が生じることがあります。
これは前庭感覚情報は視覚・体性感覚と共に前庭神経核へ伝わり統合されます。
統合された情報をもとに小脳や脊髄を経由して姿勢や身体の動きを調節しますが、前庭感覚からの情報が欠如すると小脳における抑制性の出力が機能せず、姿勢応答が過大になると考えられています。

前庭機能喪失者に対するリハビリテーション

前庭機能強化

柔らかい床面上で閉眼すると、体性感覚・視覚情報が上手く活用出来ない状態で姿勢保持を行わなければいけません。
また、立位姿勢だけでなく床の物を拾う・棚の上の物を取るといった頭部と体感位置関係を変化させて姿勢保持させることも有用であると思われます。

他の感覚への重みづけを強化

指先の接触によるライトタッチ効果が、前庭機能喪失者でも確認されています。
杖を持つといった体性感覚情報を効果的に利用することでバランス保持が出来るかもしれません。

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