【リハに役立つ!】脳卒中後早期からの歩行予後予測まとめ

【医療者向け】脳卒中

リハビリテーションでは入院時に予後予測に基づいた適切なリハビリを計画し、集中的にリハビリを実施することが重要とされています。

脳卒中片麻痺患者を対象とするリハビリでは、歩行自立獲得が在宅復帰可否に大きな影響を与えます。

脳卒中片麻痺患者を対象とした歩行に関する予後予測の方法は初診時の食事・尿意・寝返りの能力、初診時の端座位保持能力、初期評価時の能力低下を重視した予後予測を用いることが臨床的に有用とされています。

しかし、これらは急性期を対象とした予後予測がほとんどであり、重度脳卒中患者の場合では急性期において意識障害や不良状態により評価が出来ないこともあります。

今回、回復期リハにおける重度脳卒中片麻痺患者(ここではBRSⅡ以下とする)を対象とした歩行能力の予後予測についてお伝えしていきます。

 

重度脳卒中患者を対象とした歩行に関する予後予測

重度脳卒中患者を対象とした歩行に関する予後予測として、年齢・性別・JSS(Japan stroke scale)・MMSE・高次脳機能障害(失語・失行・失認など)・非麻痺側下肢筋力(体重当たりの)、TCT(Trunk control test)など多くのものが指標として用いられ研究されています。

その中でも、以下が歩行可否に大きな影響があると言われています。

1.年齢
2.JSS
3.非麻痺側下肢筋力
4.TCT(Trunk control test)

1.年齢

脳卒中患者を対象とした歩行に関する予後予測は年齢が一番影響が大きいとされています。

概ね年齢60歳以下では最終的に歩行獲得が期待出来ますが、70歳を超えてくると歩行獲得は困難になってきます。

脳卒中重度片麻痺患者の歩行可否に関与する因子の検討 ー長下肢装具を処方された患者を対象にー
平野ら 日本義肢装具学会誌 Vol.31  No.2  2015

では、歩行可能群は58.5±9.5、歩行不能群は68.6±8.1という結果が出ています。

重度脳卒中患者を対象とした歩行予後予測は全てとは言えませんが、年齢が60歳以下で歩行再獲得を十分に期待でき、60代では歩行獲得を目指しますが歩行獲得が出来なかったことも視野に入れておく必要があります。

70歳以上では移乗などの起立・立位以上の動作能力向上を目指す、または歩行獲得を目指しつつ歩行獲得に至らないことも十分に想定し訓練を進めていく必要があると思われます。

 

2.JSS(Japan stroke scale)

JSS(Japan stroke scale)は意識障害や失語・無視などの高次脳機能障害、眼球運動や視野欠損・瞳孔異常、感覚系や手・腕・足の運動麻痺など総合的に脳卒中後における症状が評価できるものです。

評価基準も複雑ではないため、簡易的に評価することが出来ると思われます。

ネットで調べるといくらでも評価シートが出てきますので参考になるかと思われます。

このJSSの点数が低いほど最終的な歩行獲得が期待できるとされています。

JSS7.2±4.3で歩行可能が期待でき、12.5±6.3で歩行獲得は難しいと言われています。

 

3.非麻痺側下肢筋力

脳卒中片麻痺患者の下肢装具
前田ら  総合リハ, 10:919-926, 1982

上記先行研究では運動麻痺が重度であっても非麻痺側筋力やバランス能力が良好であれば麻痺側下肢に下肢装具を装着し補助することで歩行獲得も期待出来ると報告されています。

 

高齢者の下肢筋力ならびに脳卒中患者の非麻痺側膝伸展筋力と歩行能力
岡本五十雄  北海道リハ会誌, 32:3-12, 2004

上記先行研究では脳卒中患者の歩行能力は非麻痺側下肢筋力と相関が高く、非麻痺側下肢筋力を強化することで歩行の改善に直結すると報告されています。

 

このように脳卒中片麻痺患者に対してリハビリを行うと麻痺側に注目しがちですが、歩行獲得に向けた訓練では非麻痺側の下肢筋力も決して無視できません。

非麻痺側の膝関節伸展筋力が体重当たり、0.3±0.2では歩行獲得が期待でき、0.1±0.1では歩行獲得は困難とされています。

脳卒中片麻痺患者を対象としたリハビリの評価・治療は麻痺側だけでなく非麻痺側も評価し総合的にみていく必要があります。

 

4.TCT(Trunk control test)

TCTは上図のように患側への寝返り・健側への寝返り・起き上がり・座位バランス保持の4つの項目を0・12・25点の3段階で点数を付けます。

0点:動作が実施出来ない

12点:動作可能だが何かしら物品を把持したりするなどが必要

25点:正常に動作可能

 

片麻痺患者の体幹機能と歩行能力の関係
江西ら   PT ジャーナル, 30:821-825, 1996

では脳卒中重度片麻痺患者では体幹機能が良好であると最終的に獲得できる歩行能力が高いとされています。

そのため、体幹機能は最終的な歩行獲得に向けた重要な因子になっているとされているので、体幹機能評価は欠かせないといえます。

TCTの数値の基準として以下の研究があります。

脳卒中重度片麻痺患者の歩行可否に関与する因子の検討 ー長下肢装具を処方された患者を対象にー
平野ら 日本義肢装具学会誌 Vol.31  No.2  2015

上記研究から、TCTが41.6±16.3であれば歩行獲得が期待でき、18.2±13.1では歩行獲得は困難と考えられます。

 

まとめ

重度脳卒中患者の最終的な歩行獲得の予後予測因子として、年齢・JSS・非麻痺側下肢筋力・TCTを用いることが出来ることをお伝えしてきました。

最終的な歩行獲得は年齢とJSSは負の相関があり、非麻痺側下肢筋力とTCTは正の相関関係にあります。

最終的に歩行が獲得できるのかによって、治療目的・手段は変わってきます。

移乗・立位保持能力を優先して筋活動が最も出る訓練を優先するのか、歩行獲得に向けた歩行時の適切な筋活動が出ることを優先するのかということです。

重度脳卒中患者を担当する機会がありましたら、ぜひ参考にして頂けたらと思います。

ここまで読んで頂きありがとうございました。