【大腿直筋は股関節伸展作用!?】歩行時の大腿直筋の作用とは?

【医療者向け】機能・解剖

大腿直筋が股関節伸展に作用すると聞くと、驚く方もいらっしゃると思います。

プロメテウスなどの解剖学の本では、解剖学的肢位では股関節屈曲作用とはっきり書かれています。

しかし、大腿直筋の収縮により股関節伸展が伸展することも事実です。

大腿直筋の収縮により股関節が伸展するメカニズムと歩行時の作用について解説していきます。

大腿直筋が股関節伸展に作用するメカニズム

大腿直筋の作用は、【股関節の屈曲】・【膝関節の伸展】は既に周知の通りです。

しかし、【膝関節の伸展】作用が結果的に、【股関節の伸展】に作用していると言われています。

大腿直筋:膝関節伸展➡股関節の伸展作用の付加!?
Hernandes A, et al:In vivo measurement of dynamic rectus femoris function at postures representative of early swing phase.J Biomech  41:137-144,2008

上記研究では股関節の角度を【歩行において足趾離地~遊脚初期に相当】に設定し、大腿直筋に電気刺激を与えて、その際の下肢の動きを調べています。

上記研究では、【膝関節の伸展】+【股関節の伸展】方向に下肢が動いたとされています。

大腿直筋がもたらす膝関節伸展作用とは、大腿遠位と下腿近位を後方へ回転させる力を発生させます。(下図)

大腿直筋の膝関節伸展作用は股関節伸展にも作用し、これは内側広筋のような膝関節単関節筋でも同様のことが言われています。

しかし、大腿直筋は股関節の屈曲にも作用するため、大腿直筋の収縮は股関節の屈曲と伸展の両方を引き出しているということです。

そのため大腿直筋によって生じる股関節の動きは、股関節屈曲と伸展作用のどちらが強いのかによって決まると考えられ、歩行における足趾離地~遊脚初期時では股関節伸展作用が強く、股関節が伸展するということです。

そこで、下記研究では様々な股関節・膝関節の角度条件下で筋収縮による下肢関節運動を調べています。

Frigo C, et al:A dynamic model of quadriceps and hamstrings function.Gait Posture  31:100-103,2003

股関節屈曲30°・60°では、大腿直筋が収縮すると股関節の屈曲が生じます。

股関節屈曲90°・伸展0°・15°では、大腿直筋が収縮すると股関節の伸展が生じます。

つまり、大腿直筋の股関節屈曲作用は股関節30~60°で最も大きくなり、そこから股関節が屈曲・伸展していくと、筋長の変化・モーメントアームの変化から股関節屈曲作用は小さくなります。

そのため、足趾離地~遊脚初期における大腿直筋は股関節を伸展させる作用をもっているということです。

【大腿直筋の収縮による股関節作用】
股関節屈曲30~60°:股関節屈曲作用
股関節屈曲90°・0°・伸展15°:股関節伸展作用

歩行における大腿直筋の作用

先ほど、足趾離地~遊脚初期時の角度に相当する股関節角度では大腿直筋が収縮すると股関節が伸展するとお伝えしました。

これは非荷重下だけでなく、実際の荷重条件下でも言われています。

また、遊脚初期よりも前遊脚期、つまり股関節伸展角度が大きい方が股関節の伸展作用が強かったとも言われています。

しかし、歩行に関する資料によっては前遊脚期の大腿直筋は股関節の屈曲作用により大腿の振り出しを生み出しているとあり、大腿直筋の前遊脚期の作用について考えていく必要があるかと思われます。

Stiff-knee gait(スティッフ・ニー・ゲイト)を改善するには

Stiff-knee gaitは前遊脚期~遊脚期にかけて通常なら生じる膝関節の屈曲が阻害されている状態をいいます。

Stiff-knee gaitは片麻痺患者などにおいてよく観察され、【大腿直筋の過剰な筋収縮の発揮】又は【活動開始のタイミング早期化】により生じるとされています。

足趾離地~遊脚初期にかけての股関節角度の大腿直筋の筋収縮は股関節伸展に作用することをお伝えしましたが、大腿直筋の過剰な収縮は遊脚期における股関節屈曲を制限している可能性があります。

そのため、Stiff-knee gaitは歩行の遊脚期を大きく阻害するものであり、治療するべき跛行の1つと言えます。

Stiff-knee gaitの治療は、他の股関節屈筋群より大腿直筋の筋張力が相対的に高くなっていることで生じているため、反対に他の股関節屈筋群の緊張力を上げる訓練を行ったりすることで、股関節屈筋の作用により大腿遠位を前方へ加速させる練習を行うと良いと言われています。

つまり、大腿直筋以外の股関節屈筋で大腿を前方に加速させる訓練(股関節を屈曲させる訓練)を行うということです。

 

具体的には大腿直筋より腸腰筋が股関節屈曲の貢献度が高くなる股関節深屈曲・伸展位で股関節屈曲運動を行います。

その後につま先荷重位で股関節の作用により大腿骨を前方に加速し、その結果として膝関節屈曲が生じる運動を繰り返す練習を行います。(下図)

 

また、下肢の振り出しには腓腹筋の張力も貢献するため、腓腹筋の張力を利用して下肢の振り出しを行う練習も有効と言われています。

具体的には身体の後方に接地し、前足部の下にタオルなどを敷きます。そうすることで、足関節背屈を強調させながら前足部に荷重を促すようにします。

このような前足部で一瞬荷重して、すぐに体重を移動する練習を行います。(下図)

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