下腿骨骨幹部骨折は交通事故やスポーツなどのにより強い外力が加わることで生じます。
下腿部は大腿部などに比べて骨周囲の軟部組織が少なく、比較的表層に骨があります。
その為、血流量が比較的乏しいため骨の癒合は進みにくい特徴があります。
また、皮膚と骨の間の皮下組織が少ないということは骨折を起こした際には開放骨折となりやすく、感染を合併するリスクもあります。
下腿骨骨幹部骨折:受傷危険
下腿骨骨幹部骨折は強い外力で生じる骨折ですが、開放骨折を伴う場合は横骨折や粉砕骨折が多く、比較的弱い外力で生じる場合は斜骨折や螺旋骨折となります。
形状 | 定義 | リハビリの注意点 |
横骨折 | 骨折線が骨軸に対し直角 | 側方のストレスに弱いため、筋力強化運動時に注意 |
斜骨折 | 骨折線が骨軸に対し斜め | 荷重により剪断力が生じやすいので、荷重量増大や筋力強化運動時に注意 |
螺旋骨折 | 骨折線が骨軸に対し螺旋 | 回旋ストレスに弱いため、あらゆる方向に注意、荷重や筋力強化運動時のみでなく、術後固定そのものが弱い |
粉砕骨折 | 骨折部が粉砕し骨片が多数 | 骨癒合が困難となり、損傷部位周辺の組織に及んでいることが多い。筋力強化運動時や荷重時期の遷延化、拘縮に至ることも少なくない |
下腿骨骨幹部骨折:治療法
脛骨骨折は転位が少なければ保存療法が選択されます。保存療法としては、牽引・ギプス固定、装具などを用いて行います。
しかし、粉砕型骨折や転位・短縮が著明であれば髄内釘やプレート固定といった固定材料を用いて骨片を固定します。
感染が疑われる状態では創外固定といった方法を用いることもあります。
螺旋骨折の場合は内固定を行っても側方・回旋ストレスに弱いため、抵抗運動を行う際には十分な注意が必要です。
腓骨骨折においてもは荷重骨でないため、斜骨折のような荷重の注意が必要な骨折線でも腓骨頭と外果に骨折線を認めていなければ保存療法で様子をみます。
しかし、側方・回旋ストレスには弱いため運動療法を行う際には注意が必要です。
下腿骨骨幹部骨折:画像の見方
上図では【脛骨の螺旋骨折】と【腓骨の斜骨折】を受傷しています。
正面・側面像で転位があるため、骨折部周囲の軟部組織損傷が考えられます。
しかし、膝関節・足関節は温存されているため、骨折部を配慮しながら拘縮予防に向けて関節運動は愛護的に積極的に行っていく必要があります。
腓骨は腓骨頭・外果には骨折が及んでおらず、腓骨は荷重骨でないため保存療法が行われています。
脛骨は髄内釘を用いて内固定を行っていますが、螺旋骨折であるため、可動域運動野や筋力強化運動の抵抗位置や負荷を考慮して再骨折のリスクが高くなります。
下腿骨骨幹部骨折:リスク管理
受傷時の骨折線によって注意するリスクは異なるため、骨折線をしっかり確認します。
また、プレート固定は髄内釘に比べて、術侵襲範囲が広いため軟部組織の痛みを伴いやすいです。
下腿部は皮下組織が少ないため、特に感染に注意しながら痛みの治療・慢性痛の予防、可動域訓練や筋力強化運動を行っていきます。
下腿骨骨幹部骨折のリスクとしてコンパートメント症候群を発症することがあります。
コンパートメント症候群を発症すると神経麻痺・腎機能低下、不整脈などにつながる可能性があります。
コンパートメント症候群の治療法としては皮膚切開や輸液・透析などがあり、下腿部の異常を感じたらDrに相談します。
※コンパートメント症候群:特に前腕や下腿部の筋肉などの内圧力が上昇し、筋肉や血管、神経などの組織に圧迫を加えている状態
下腿骨骨幹部骨折:理学療法
術後早期の免荷期間は膝関節・足関節の可動域の改善、術側下肢の筋力強化を行い、特に足関節や足趾の筋力維持をタオルギャザーなどで図ります。
タオルギャザーは足底の感覚機能改善の効果も示唆されており、足底の感覚障害の予防・治療のためにも行っておく必要があります。
しかし、横骨折などは筋収縮により転位の可能性があるため骨折部や骨折線からリスクを考慮する必要があります。
部分荷重期間は平行棒内歩行や部分荷重を厳守しながら進めたり、PTB装具を装着し荷重量を調整しながら行う方法があります。
全荷重期間は、実用的な歩行の再獲得を目指しますが、歩行では全体重以上の荷重が加わることがあるので過荷重に注意します。
参考書籍
今回は下の書籍を参考大腿骨転子部骨折の画像の見方をお伝えしました。
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