【リハに役立つ】不動による骨格筋の筋長・伸張性・筋線維の変化

【医療者向け】ストレッチ

 

不動による骨格筋の変化

Specter SA, et al:Architectural alterations of rat hind-limb skeletal muscles immobilized at different lengths. Exp Neurol   76:94-110,1982

上記研究はラットを使った動物実験ですが4週間ヒラメ筋を弛緩位・伸張位で不動化し、対照群(無処置)とその筋長を比較しています。

結果は以下の通りです。

●対照群(無処置):10.2mm

●弛緩位:8.8mm

●伸張位:12.6mm

イメージ通りですが、骨格筋は伸長位で不動化すると伸張され、弛緩位で不動化されると短縮するということです。

骨格筋は不動化するとその肢位に応じて筋長が変化するということを示唆しています。

また、別の研究では骨格筋の筋長は1週間不動化すると筋長が約11%短縮するが、その後の不動期間を延長しても骨格筋の筋長に著明な差は無かったとされています。

そのため、ラットを用いた動物実験ですが約1週間という短い期間でも骨格筋を弛緩位で不動化すると筋長が短縮しますが、1週間を超えて不動状態でも短縮した筋長はそれ以上短くはなりにくいということです。

1週間という短い不動期間で筋長が短縮するということは拘縮の発生に大きく関わっていることが予想されますが、不動期間の延長に伴う拘縮の進行には筋長の短縮は大きくは関わっていないことが予想されます。

【不動による筋長の変化】
1週間という短い期間でも、弛緩位で不動化すると約11%筋長が短縮される
1週間を超えて不動化を延長しても筋長は大きく変化しない

 

不動による骨格筋の伸長性の変化

沖田 実:関節可動域制限の病態生理.  理学療法 20:603-611, 2003

上記研究では2週間不動化したラットのヒラメ筋をramp stretchした際の張力➡伸張位を維持しhold stretchした際の5秒後の緊張力を測定しています。

この結果では筋を伸張させる速度に伴い緊張力は増大(ramp stretch)、その後の伸長位を維持(hold stretch)すると張力は減衰していき、ほぼ一定の値を示すようになります。その際の筋張力は対照群(無処置)よりも有意に増加したとされています。

筋長力が伸張させる速度に伴い大きくなることは粘性要素、時間経過に伴い安定した値になることは弾性要素によるものだと考えられており、弛緩位で不動化するということは骨格筋の粘性要素・弾性要素の増加により骨格筋の伸長性が低下していると考えられます。

 

ネコのヒラメ筋を用いた研究では、弛緩位で4週間不動化した後は正常筋よりも【長さ―張力曲線】が左方へ偏位することが示されています。(下図)

下図の【長さー張力曲線】は不動化した骨格筋は受動的張力が初期から高く、伸張率がわずかであることを意味し、弾性要素の変化による伸張性低下であると推測されます。

 

沖田 貞明, 他:不動性萎縮筋における筋性拘縮の発生と進行. 運動療法と物理療法 9:38-41. 1998

また上記研究では不動後の初期から受動的張力が高くなる傾向は、不動期間が長くなるほど顕著になることを示しています。

さらに不動後期間が3週間を超えてから伸張された際の受動的張力が大きくなり、その後10週目まで不動期間の延長に伴い張力は増大していきます。

骨格筋を伸張された際の伸長率低下は弾性要素に基づく伸張性低下を意味し、不動期間に伴い伸張性低下が大きくなります。

不動期間に伴い伸長率が大きく低下するということは拘縮の進行と強い関連があると推測されます。

 

不動による筋線維の変化

不動によって骨格筋の筋長の短縮・受動的張力の増大を認めることで骨格筋の伸長性が低下し拘縮の発生・進展につながることをお伝えしました。

Specter SA, et al:Architectural alterations of rat hind-limb skeletal muscles immobilized at different lengths. Exp Neurol   76:94-110,1982

上記研究では4週間不動化した際の筋節の変化について調べています。

●無処置(対照群):2.13µm

●弛緩位:2.19µm

●伸張位:2.23µm

無処置と比較して弛緩位・伸張位両者ともに筋節が伸びているという結果になっています。

しかしこれは、弛緩位で不動化した群の筋節の数が減少しており、伸張位で不動化した群は筋節数が増加していることが他の研究から言えます。

つまり、数週間にわたって骨格筋を不動化すると筋長に変化がみられますが、筋節数の変化はこれに対応するために生じている現象と思われます。

筋節数の変化の他に細胞小器官では、不動により様々な変化が生じています。

不動2日後:筋小胞体の増大・ミトコンドリアの電子密度の増加
不動5日後:局所的に筋節の配列異常・筋節長の短縮
不動7日後:筋原線維の配列の乱れ・Z帯の断裂・Z帯の蛇行
不動14日後:過剰収縮する筋線維の出現
不動28日後:筋原線維の配列の乱れ・Z帯の断裂・Z帯の蛇行が著明になる

筋原線維の配列の乱れやZ帯の断裂・Z帯の蛇行などは特に筋線維の伸長性を低下させる要因になるのではないかと思われます。

 

不動によるコネクチンの変化

Udaka J, et al:Disuse-induced preferential loss of the giant protein titin depresses muscle performance via abnormal sarcomeric organization.J Gen Physiol  131:33-41,2008

上記研究では、6週間不動化したラットのヒラメ筋を調べるとコネクチン含有量が減少していたとされています。

弾性要素であるコネクチン含有量が減少するということは、骨格筋の伸長性が増大するような印象です。

実際に同じ上記研究においても筋内膜や基底膜を薬剤で取り除いた筋線維の伸張性をコネクチンの有無で比較しており、コネクチンを取り除いた場合において伸張性が増加したと報告されています。

つまり不動に伴い筋線維内のコネクチンは減少していくためコネクチンの変化は伸張性低下に関与せず、筋節崩壊による筋フィラメントの滑走が困難になることが考えられます。

 

まとめ

不動に伴う骨格筋の筋長・伸張性・筋線維の変化についてお伝えしてました。

不動1週間で骨格筋の筋長は1割程度の短縮を認め、その後は著名な変化なくプラトーになりました。

しかし、骨格筋の伸張性は不動3週間を超えると有意に低下していき、10週まで不動期間に伴い伸長性が低下していくことが分かりました。

そのため、骨格筋の筋長の短縮は拘縮発生・伸張性低下は拘縮の進行に関与していることが予想されます。

その背景として筋線維では【不動5日では局所的な筋節の配列異常・筋節長の短縮】・【不動28日では筋原線維の配列の乱れやZ帯の断裂と蛇行】が著明になっています。

筋節・筋原線維の配列異常が筋フィラメント間の滑走を阻害し、拘縮の発生・進行に関わっていると予想されます。

コネクチンは不動により減少することから、不動に伴う拘縮の発生・進行にはコネクチンそのものは大きく関わっていないのではないかと思われます。

ここまで読んで頂きありがとうございました。

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