【関節・軟部組織に対する治療】肩甲下筋について

【肩甲下筋】
起始:肩甲下窩
停止:小結節(+前方関節包)
作用:肩関節内旋
神経支配:肩甲下神経(C6~8)

特徴

肩甲下筋は肩甲胸郭関節深層筋として、肩関節前方支持機構としての役割があります。

肩甲下筋は上部線維・中部線維・下部線維の3つに分かれます。

上部線維:下垂位で内旋
中部線維:上部・下部の間
下部線維:挙上位で内旋

肩関節の脱臼は挙上位で前方下方向に生じるが多い(前方下脱臼)とされています。例:2nd positionの肩関節外旋位(投球姿勢)

挙上位は肩甲下筋の下部線維は伸長されて緊張亢進状態であるのに対し、上部線維は弛緩位となっています。(挙上位は前方への不安定性が生じている)

しかし、上腕骨には腱が付着することにより前方への安定性強度が増加され、前方への不安定性に対して補強を行っています。

 

肩甲下筋は棘下筋などの後方腱板と異なり、疎性結合織を介さずに筋線維が直接関節包に結合しています。

そのため、断裂などの炎症症状後、癒着・瘢痕組織の拘縮となる要素が少ない反面、損傷部位を瘢痕などで安定化出来ないので不安定性が発生しやすくなります。

 

肩甲下筋は烏口突起の変化による摩擦・摩耗が原因で断裂が生じることが多くあります。

肩甲下筋は疼痛を発生させることは少ないため、関節境視下手術中に棘上筋や棘下筋断裂と同時に発見されることが多くあります。

肩甲下筋の断裂の特定は、LOT(lift off test)が用いられます。

LOTは背中に手をまわした状態(手掌は後ろ向き)で手を背中から離す時の筋力を測定します。著名な左右差を認める時は肩甲下筋の断裂や機能不全が考えられます。

肩甲下筋の上部・下部線維の損傷の違いは以下の通りになります。

上部線維損傷:上肢下垂位で不安定性が生じる。(烏口突起の関節性変化による摩擦・摩耗由来の損傷)
下部線維損傷:上肢挙上位で不安定性が生じる。(肩関節脱臼が考えられる)

治療方法

肩甲下筋は肩甲骨前傾位では緩みの肢位となり、正常に機能しにくくなります。

前鋸筋上部線維・小胸筋・大胸筋の筋緊張が高い状態は肩甲骨前傾位につながるため、これらの筋緊張が正常であるかを確認する必要があります。

 

肩甲下筋の治療は膝立て背臥位から始まります。※膝立て背臥位は大胸筋の筋緊張を抑制しやすくなる。

前腕回外運動で上腕二頭筋腱を滑走させて結節間溝を把握し、そこから一横指内側に指をずらして小結節を触診します。

小結節に指を置き、内旋運動を誘導し小結節に動きが生じるかを確認します。

小結節の動きの確認は下垂位から始めて徐々に外転角度を増加させていきながら行います。

【小結節の動き】
・下垂位で動き○ 挙上位で動き× ➡下部線維の断裂・機能不全
・下垂位で動き× 挙上位で動き○ ➡上部線維の断裂・機能不全

肩甲下筋の機能不全・筋力不足の場合は、腋窩部で大胸筋の腱を圧迫して大胸筋の筋緊張を抑制させながら、肩関節伸展位で内旋運動を誘発するとよいとされています。(肩関節伸展位で肩甲下筋を伸張し筋出力が生じやすい状態を作る目的)