【リハに役立つ!】立ち上がり(起立)動作の運動学的視点について

【医療者向け】起立

日々リハビリを行っていると患者さんの歩行の再獲得の希望はすごく多いように感じます。

やはり移動の自由というものは生活していく上で欠かせないものであり、歩行の獲得というものは機能維持においても大切なのではないかと感じます。

歩行を行う前には、座位から「立ち上がる」ことが不可欠であり、立ち上がり動作が不安定であり転倒の危険が伴っていることは決して少なくないように思えます。

歩行に関しては書籍や文献が多くあり勉強しやすいですが「立ち上がり」動作に関する書籍や文献は少ないように思えます。

ここでは「立ち上がり」動作を運動学的視点から解説していきたいと思います。

 

立ち上がり動作の3つの相

立ち上がり動作は基本的に3つの相に分けることが出来ます。

第1相.重心の前方移動期
第2相.臀部離床
第3相.重心の上方移動期

第1相:重心の前方移動期は体幹を前傾させ身体を前方に移動させ、大腿部に支持基底面を作ります。加えて重心線を足部に移動させ足部に荷重を行う相でもあります。

第2相:臀部離床は前傾した体幹を急停止させ、その反動で臀部を離床させます。その後、前下方に体重を移動させて足部に荷重を乗せていきます。

第3相:骨盤前傾・腰背部伸展・足底で床を蹴り、両下肢を伸展させながら立位姿勢をとります。

立ち上がり動作の重心移動

立ち上がり動作時の重心移動は重心を前方に移動させ後に重心を上方させることで立ち上がります。(上図)

一直線に重心が移動するということではなく、二次方程式のような軌跡を描くということです。

立ち上がり動作の下肢関節角度

※上図の関節可動の動きはイメージです。座面の高さ・固さなどで実際とは異なることがあります。

 

座っている座面の高さ・固さなどにより、関節の動きは異なってくるため詳細な必要な関節可動範囲は省略します。

重心を臀部から足部に移行するために体幹前傾角度は必要不可欠です。

股関節の屈曲可動域制限は体幹前傾角度が不足するため、足部への重心移動が困難になり臀部離床時に重心が後方に残存しやすくなります。

また、重心を足部に移行しやすくするため重心前方移動期に足部を後方に引きます。そのため、足関節はわずかに背屈します。

立ち上がり動作の筋活動

立ち上がり動作 -力学的負荷に着目した運動分析とアライメント-
後藤 淳・高田 毅・末廣 健児 関西理学 2:25ー40,2002:改変引用

最初の重心の前方移動を行う為の体幹前傾は縫工筋大腿直筋の活動で生じます。

その後、体幹前傾速度を制御するために脊柱起立筋大殿筋が遠心性収縮して体幹をコントロールします。

次に重心を足部の支持基底面へ移動させるために前脛骨筋を収縮させて足部を固定し、下腿の前傾を制御する準備をします。

第2相の臀部離床では、脊柱起立筋大殿筋ハムストリングスの活動で膝関節・股関節・体幹を固定させたまま臀部を離床します。

加えて重心を足部へ移動させた瞬間、下腿の前傾角度をコントロールするために前脛骨筋がさらに強力に収縮します。

上図からも臀部離床の際に前脛骨筋の筋活動が最も強くなっていることが分かります。

臀部離床を行った後は、腓腹筋前脛骨筋の同時収縮により足部を安定させながら膝関節・股関節を伸展させて立位姿勢を取ります。

その際にハムストリングスの活動が臀部離床時より大きくなり、膝関節・股関節を伸展させます。(CKC時のハムストリングスの活動は膝関節・股関節の伸展に作用)

また、大殿筋大腿四頭筋といった個々の単関節筋も伸展作用として活動します。

なぜ、下を向くと立ちにくいのか?

立ち上がる際に下を向いて立ち上がろうとする患者さんが多いので、私たち理学療法士は前を向いて立ち上がるように指導することが多いと思います。

なぜなら、下を向くと運動連鎖により脊椎は円背するような配列になり、重心位置は後方に偏移します。

そのため、重心位置を前方にある足部に移行するために重心位置が後方に偏移することは立ち上がりを難しくします。

そのため、下を向かずに前を向いて立ち上がるということが大切です。

立ち上がる前の座位評価:仙骨座りは✖

仙骨座りは骨盤が後傾します。

骨盤が後傾した状態で体幹前傾を行おうとしても、十分に体幹前傾を行うことが出来ません。(重心が十分に前方に行かない)

そのため、立ち上がる為に準備として仙骨座りではなく、骨盤を起こす(前傾させて中間位に持ってくる)ことが大切です。

 

立ち上がりは初速(反動)が大切

立ち上がりの際に最も苦戦することが多い箇所は臀部離床だと思います。

臀部離床は筋活動によってダイレクトに臀部を持ち上げているわけではありません。

体幹前傾を脊柱起立筋・大殿筋・ハムストリングスが骨盤・股関節・膝関節を固定させながら急なブレーキをかけることで反動で下腿が前傾して臀部離床が生じます。

そのため、体幹前傾速度が遅いとブレーキによる反動が小さいため臀部離床が難しくなります。

そのため、縫工筋・大腿直筋による体幹前傾の初速が臀部離床を楽に行うために大切なポイントであり動作指導を行う必要があります。

 

参考文献

立ち上がり動作における運動学的分析 一椅子の高さによる影響一
Kinematic Motion Analysis of the Sit-to-Stand Motion The Influence of Chair Height
臼田 滋・山路 雄彦
立ち上がり動作 -力学的負荷に着目した運動分析とアライメント-
後藤 淳・高田 毅・末廣 健児 関西理学 2:25ー40,2002
立ち上がり動作を容易に行うために必要な足関節背屈可動域の検討―床反力,股関節屈曲角度に着目して―
森田 智美・宮崎 純弥

 

ここまで読んで頂きありがとうございました。