【リハに役立つ】拘縮に対するストレッチ方法別の効果の違い

【医療者向け】ストレッチ

関節可動域制限に対して運動療法を行うことは効果があると言われており、リハビリにおいて関節可動域制限の治療に運動療法を行うことは珍しくありません。

運動療法の中でもストレッチは、関節可動域制限に対する治療の代表であり先行研究では対象によっては有効だということも証明されています。

関節可動域制限の原因として、関節周囲軟部組織の柔軟性低下・骨格筋の伸長性低下などが多く、ストレッチは軟部組織を伸張するため、拘縮などの軟部組織の変化に対してストレッチが有効だとイメージしやすいと思われます。

しかし、拘縮などの軟部組織の変化に対してストレッチが解剖生理学的視点から効果を発揮するのかどうかは、いまだに結論がついていません。

拘縮に対するストレッチの効果についてまとめましたので、参考にして頂けたらと思います。

ストレッチは有効ではない!?

2011年に運動器疾患における関節可動域制限に対するストレッチの効果をメタアナリシスしたものによれば、ストレッチは膝関節伸展制限に対して有効ではないものの、足関節背屈可動域制限に対しては有効であるとされています。

ストレッチは膝関節伸展制限に対しては無効?足関節背屈可動域制限に対しては有効?

また別の関節可動域制限に対するストレッチをシステマティックレビューしたものによれば、ストレッチは効果を発揮しないとされています。

ストレッチは臨床効果が無い?

足関節骨折後によってギプス固定された患者に対する足関節背屈ストレッチは、【運動療法のみ】・【運動療法+ストレッチ】では有意差無し、というようにストレッチの効果が発揮されなかったもののあります。

ストレッチに対する治療効果は、上記以外に臨床効果が期待出来るとされていたり、臨床効果が期待出来ないとされていたり様々です。

しかし、ストレッチの臨床効果に対する研究の対象は、同じ疾患・受傷であっても細かく評価すれば一人として全く同じ状態という方はいらっしゃいません。

【治療処置の違い】・【元々の軟部組織の柔軟性の違い】・【筋力・筋肉量の違い】・【生活習慣の違い】 などにより、個人個人で異なります。

ストレッチの臨床効果を調べる研究では、個人個人の状態に合わせたストレッチを行うのではなく、ストレッチ方法を統一するために全員同じストレッチ方法・時間で取り組みます。

そのため、ストレッチに対する治療効果に賛否両論といった違いが出るのではないでしょうか?

マウスなどの動物実験では、それぞれの状態・条件を統一しやすく、動物実験を用いたストレッチ研究では治療効果が期待出来るとされています。

実験条件が統一しやすい動物実験ではストレッチの治療効果が期待出来るとされていますが、人と動物では身体の構造に違いはあるので鵜呑みにしないように注意が必要です。

 

関節可動域制限対の進行抑制に対するストレッチの効果 ※動物実験

Williams PE:Use of intermittent stretch in the prevention of serial sarcomere loss in immobilised muscle. Ann Rheum Dis  49:316-317,1990

上記研究ではマウスの足関節を最大底屈位で2週間不動化する過程で、毎日0・15・30・60・120分間麻酔下で足関節を最大背屈位に保持することで、底屈筋群を持続的にストレッチしました。

そうすると30分以上の持続的なストレッチを実施すると関節可動域制限を認めなかったとしています。

中田 彩, 他:持続的伸張運動の実施時間の違いが関節拘縮の進行抑制効果におよぼす影響ーマウスにおける実験的研究. 理学療法学 29:1-5, 2002

上記研究では週5回0・10・20・30分間持続的なストレッチを行い関節可動域制限の進行抑制効果を調べています。

この実験では20分以上のストレッチで、完全ではないが関節可動域制限の進行を抑制しているとされています。

関節可動域制限の進行を抑制したい場合:20分以上の持続的なストレッチ
完全に関節可動域制限を抑制したい場合:毎日30分以上の持続的なストレッチ

しかし、これはあくまで動物実験でありヒトとは異なります。また、完全弛緩位で常に固定されることも稀なケースであり、完全に臨床に落とし込むことは出来ないので注意が必要です。

西田まどか, 他:持続的伸張運動と間歇的伸張運動が拘縮と筋線維に及ぼす影響ー関節固定法と後肢懸垂法を組み合わせたラットの実験モデルによる検討. 理学療法学 31:304-311, 2004

上記では持続的ストレッチングと間歇的ストレッチングによる関節可動域制限の進行抑制効果を比較しています。

無荷重状態で2週間不動化する過程で毎日30分、【持続的ストレッチングを行った群】と【角速度10°/秒の関節運動による間歇的ストレッチング群】を比較しています。

この結果では、不動群と比較し持続的ストレッチング・間歇的ストレッチングの両者において関節可動域制限の進行抑制に効果があったとされており、ストレッチ方法による効果の違いは認められませんでした。

 

関節可動域制限に対するストレッチの回復効果 ※動物実験

Kondo Y, et al:Effects of prolonged stretching and thermotherapy on muscle contracure of immobilized rat soleus muscle.J Phys ther Sci  24:541-547, 2012

上記研究は足関節最大底屈位で4週間固定した後、固定を解除した2週間を以下の3つの群に分けて関節可動域の回復状況を調べています。

・週6回、1日30分の足関節底屈筋に持続的なストレッチ

・自然回復

・固定したまま

この結果では、持続ストレッチ群と自然回復群で固定群と比較し関節可動域の回復が認められ、その回復度合いは持続的ストレッチ群で良好であったとされています。

井上貴行, 他:不動終了後のラットヒラメ筋に対する間歇的伸張運動が関節可動域と筋組織におよぼす影響. 理学療法学 34:1-9, 2007

足関節を最大底屈位で4週間固定した後に固定を解除し、間歇的ストレッチングを行うことによる1週間・2週間後の関節可動域制限の回復状況を調べています。

・週6回、1日30分足関節底屈筋群を4秒に1回サイクルでストレッチング

・自然回復

・固定したまま

1週間・2週間ともに間歇的ストレッチング群は自然回復・固定群と比較し関節可動域の回復状況が良好だったとされています。

まとめ

持続ストレッチ・間歇的ストレッチとストレッチ方法の違いが関節可動域制限に対してどのような効果の違いが出るのかをお伝えする記事でしたが、ここで紹介した研究結果に基づくとストレッチ方法による明確な違いはありませんでした。

しかし、あくまで条件を揃えるための動物実験であり、ヒトに対して同じことが言えるのかどうかは、一度考察する必要があります。

ヒトを対象した研究でも、厳密には対象の全ての条件を揃えることは不可能なので、研究結果を完全に鵜呑みにしないことがポイントです。

ここまで読んで頂きありがとうございました。