【関節・南部組織に対する治療】棘下筋について

【棘下筋】
起始:棘下窩
停止:大結節
神経支配:肩甲上神経(C5~8)

特徴

肩関節後方支持組織の動的安定化機構として重要な役割をもつ。しかし、腱板断裂が発生する頻度が高いので、治療機会が多いとされています。

肩関節の関節包を前方と後方で比較すると後方関節包のほうが厚いとされています。【関節包厚み:前方<後方】

後方下関節包は疎性結合組織を介して棘下筋が連結しています。

※疎性結合組織:結合組織のタイプの1つであり、コラーゲン繊維(伸張性に乏しい繊維)が比較的少ないもの

腱板炎や関節包が炎症を生じた際には、疎性結合組織にも炎症症状が波及することになり、そこには肉芽・瘢痕組織が生成されるため、拘縮を発生させてしまう要素が強いと考えられています。

 

棘下筋に生じる疼痛や筋機能不全の原因は筋線維走行に特徴にあると考えていらっしゃいます。

棘下筋の走行は以下の3つに分かれます。
・上部(肩甲棘~大結節に向けて走行)
・中部(肩甲骨体部~大結節に向けて走行)
・下部(肩甲骨下角~大結節に向けて走行)
走行する筋線維に対して外旋作用するタイミングが分かれます。
・上部線維:下垂位
・下部線維:挙上位

 

腱板断裂後や骨折・脱臼後は、しばしば挙上障害を呈します。

棘下筋下部線維は挙上時に外旋作用を生じさせるため、挙上障害が発生している間は棘下筋下部線維の筋出力は行われません。

こういった患者の棘下筋を触診すると上部・下部線維の緊張は高く、硬さを感じたり圧痛が生じたりします。

しかし、下部線維の緊張は低く、圧に対して疼痛は陰性の場合が多いです。

下部線維の機能低下により上部・中部線維への負荷量が増加し、筋緊張が増大していると考えられ、下部線維の機能を改善させて上部線維・中部線維に生じている負荷量を軽減させることが重要とされています。

治療方法

治療方法は等尺性収縮から開始し、下部線維の筋出力を誘発することが中心となります。

そのため、挙上位による外旋運動が適しています。

しかし、多くの患者はインピンジメント症候群により肩関節が挙上できない状態であり、別ポジションで治療していくことを検討する必要があります。

下部線維の走行から3rd position(肩・肘屈曲90°程度)で外旋運動が適していると考えられます。

3rd positionで外旋運動を行うためには、十分な内旋可動域が必要であり可動域が不十分な場合は、まず内旋可動域を確保する必要があります。

 

出来る限りまずは疼痛を回避して治療を行いたい場合は、肩関節の水平内転から始めていき、水平内転可動性を確保しながら内旋ストレッチを行うとよいとされていきます。

肩甲骨の水平内転は肩関節+肩甲骨の動きを伴い、今回は肩関節水平内転の可動性を広げていきたいので、肩甲骨の外転運動は空いているで抑制します。(疼痛が誘発されそうになった時に疼痛回避出来るように肩甲骨は出来るだけ外転運動のみ抑制し、肩甲骨挙上・上方回旋はフリーにしておく)

肩甲骨の水平内転・内旋可動域が増大してくれば、棘下筋下部線維の筋出力を獲得するために外旋収縮訓練を行います。

下部線維の活動量が改善することにより、上部・中部線維の負荷量が軽減することで、棘下筋に生じる筋痛は軽減していく可能性があります。

【肩関節挙上障害を併発した棘下筋の治療】
ー棘下筋下部線維の筋出力促進(挙上位で外旋運動)ー
1.3rd positionで肩甲骨水平内転・内旋の可動域を拡大
2.3rd positionで肩関節外旋運動