【関節・軟部組織に対する治療法】棘上筋について

棘上筋
起始:棘上窩
停止:大結節
作用:肩関節外転
神経支配:神経支配(肩甲上神経:C5~8)

特徴

棘上筋は肩峰下滑液包と共に活動機構を形成すると共に、肩関節上方支持組織の動的安定化機構としての役割を持ちます。

主に肩関節外転に作用しますが、外的モーメントアーム20に対して内的モーメントアームが1という比率であると言われており、棘上筋が重量負荷の20倍近く働く必要があります。

また、棘上筋遠位部は血流に乏しく烏口肩峰アーチと摩耗することで、使い過ぎで断裂が生じやすい部分とされています。

棘上筋は筋断裂の発生頻度が多く、理学所見からも断裂部位を特定することが多いです。

1.表層 or 深層線維

棘上筋の表層は肩峰下滑液包と接しており損傷すると症状として、腱板構成筋腱の部分的又は完全な肥厚性断裂関節包の炎症や癒着滑液包炎疼痛肩関節全体の脱力感が生じます。

炎症症状後には癒着瘢痕化による自動・他動ともに可動域制限が生じる可能性があります。

深層線維は肩甲上腕関節の関節包上部に合流し外転運動に加えて、上部関節包を緊張させることで関節包ない運動の転がりを生み出し上腕骨頭と肩峰の下部組織とのあいだで挟み込みが防止されます。

 

2.前方 or 後方線維

大結節の前方と後方部分にある腱板筋腱に触れて、腱による弾力の有無を確かめます。

大結節前方部分で弾力が感じられなければ棘上筋の断裂、後方部分で弾力が感じられなければ棘下筋の断裂を疑います。

※棘下筋の上部線維は走行から棘上筋と同様に外転作用を持つため確認

治療方法

棘上筋は下垂位~最大挙上までの全可動域で全て同じ筋線維が作用するとは考えられていません。

遠位線維は下垂位から大結節を引き上げるために有利な位置ですが、挙上角度の増大にともない大結節が近づくため緩みが生じます。

そのため挙上角度の増大にともない、近位線維の筋活動が必要になってくると言われています。

挙上初期は可能だが、挙上角度に伴い疼痛が生じてしまい挙上が制限されている場合、近位線維が上手く筋出力できていないとされています。

この近位線維の筋出力が上手く出来ていない状態が続けば、遠位線維の負荷量が増大し筋内圧の上昇ともに緊張が亢進します。

インピンジメント症状がある人の棘上筋遠位線維は筋緊張が亢進し圧痛所見が陽性になっていることが多いと言われています。

このような対象者の棘上筋近位線維の出力を誘導し、遠位線維の負荷量を軽減させることが重要です。

棘上筋近位繊維

棘上筋近位線維の筋出力を促すためには挙上位で外転運動を誘導していく必要があります。

外転運動時、棘上筋深層部で損傷している場合は上腕骨頭の転がりが不十分になりインピンジメントが生じる可能性があるので、大結節が烏口肩峰アーチの下に入り込むようにアシストする必要があります。

棘上筋遠位繊維

遠位線維は下垂位から肩関節を外転させるのに有利な位置にあります。

遠位線維に過剰な負荷がかかり筋緊張の著明な亢進が長期間続くと筋膜が短縮し大結節を挙上位で固定させてしまいます。

大結節の挙上位固定が長期間続くと肩関節の内転可動域制限が生じてしまいます。

そのため遠位線維に対する治療は上腕骨を下垂位方向に牽引しながら内転方向に誘導します。肩甲骨の下方回旋の代償が入らないように肩甲骨は空いている手で固定しておきます。

棘上筋の伸張操作

女性では結髪動作の獲得を必要としていることが多くあります。

結髪動作に必要な肩関節可動域は内転・内旋可動域であり棘上筋の伸張性が重要となると言われています。

棘上筋の伸張は固定期間などの経過をたどり損傷・断裂部位の瘢痕形成した部分を伸張することになるかもしれません。

棘上筋を伸長することで癒着・瘢痕形成した部分の傷口が拡大し炎症症状が再燃する可能性があるので注意が必要です。

瘢痕形成しているので、健側と比較すると可動域に左右が生じてしまうのは仕方のないことなので、無理のないように行う伸張する必要があります。

実際の伸張方法

ベッドは背臥位になり治療側上肢がベッドからはみ出るようにします。

上腕骨顆部を両手で把持し、セラピストは患者の前腕を乗せて自分の前腕にのせてリラックスした肩関節伸展状態をつくります。(上腕骨顆部を把持する際は、内側上顆下方に尺骨神経は走行しているので圧迫しないように注意)

肩関節伸展位で内転・内旋方向に誘導していきます。(前腕回内の代償が生じると内旋運動を阻害してしまうので代償に要注意!)