【リハに役立つ!】骨格筋の変化に由来している拘縮についてまとめ

【医療者向け】ストレッチ
岡本眞須美, 他:不動期間の延長に伴うラット足関節可動域の制限因子の変化ー軟部組織(皮膚・筋)と関節構成体由来の制限因子について. 理学療法学 31:36-42,  2004

一カ月以内の不動で生じる拘縮は主に骨格筋が中心になると上記のような先行研究から考えられており、骨格筋の変化によって生じる拘縮が可動域制限をもたらします。

骨格筋の変化によって生じる拘縮【筋性拘縮】は骨格筋の伸長性が低下したものであり、その伸張性の変化は筋線維・筋膜の両者に由来します。

この記事では、骨格筋の変化が原因の拘縮についてまとめましたので、参考にして頂けたらと思います。

骨格筋の伸長性

長さ―張力曲線

骨格筋が収縮していない状態で、骨格筋が伸張されると骨格筋は元に戻ろうとするため受動的張力が発生します。

骨格筋は張力が生じない長さ(静止長)より筋長を伸張されると、その伸長された長さ(伸長率)に依存して受動的張力が大きくなります。(下図1)

この受動的張力はそれぞれの骨格筋によって異なり、固い骨格筋の受動的張力は筋長が短いうちから発生し、受動的張力は急激に上昇する傾向を示します。(下図2)

図1

 

図2

三要素モデル

骨格筋の受動的理張力が発生する要素は、1.収縮要素、2.直列弾性要素、3.並列弾性要素の3つです。

直列弾性要素:クロスブリッジ・筋フィラメント・コネクチン・腱

並列弾性要素:筋膜

筋収縮が生じていない状態で骨格筋を伸張すると、受動的張力はコネクチンや筋膜によって生じるとされています。

しかし、織物のように配列したコラーゲン線維をもつ筋膜が主に受動的張力を生み出すと言われており、コネクチンはバネに似た特性を備えていますが、受動的張力の発生は微量とされています。

 

弾性要素と粘性要素

骨格筋が生み出す弾性要素にはすべて粘性要素を伴います。

※弾性:変位に比例する抗力(具体的には加えられた外力に応じて変形し、力を除けば元の形状に戻る性質)

骨格筋を急激に引っ張ると瞬間的に強い受動的張力が生じますが時間とともに緩んでくる現象】、又【骨格筋を一定の力で伸張すると筋長は時間差をもって徐々に伸びてくる現象】は速度に比例する粘性要素を表していると言われています。

※粘性:速度に比例する抗力と定義されている

この粘性要素を発揮しているのは並列弾性要素である筋膜を構成している成分、プロテオグリカンによるものだと考えられています。

しかし並列弾性要素の筋膜だけでなく、直列弾性要素にも少なからず粘性要素は含まれるため、骨格筋の伸長には弾性要素+粘性要素として捉える必要があります。

 

筋線維の伸張性

直列弾性要素である筋線維には筋フィラメント・クロスブリッジ・コネクチンがあり、筋フィラメントとクロスブリッジは筋収縮によって筋線維の伸張性は低下することになります。

しかし、筋収縮による関節可動域制限は拘縮ではないので注意してください。

コネクチンの弾性領域はバネ状であり、筋線維を伸張するとほどけていき、短縮すると元に戻ります。

そのため、筋線維のうちコネクチンは筋収縮に依存しない骨格筋の伸長性に影響を与えるので、筋線維の伸張性低下が拘縮によるものであれば、それはコネクチンが原因であると推測されます。

また、筋収縮に強く関わるCa²⁺は筋収縮を引き起こすだけでなく、コネクチンにも作用すると言われており、Ca²⁺濃度が高い方が受動的張力の発生が大きくなることが言われています。

 

筋膜の伸張性

筋が収縮していない状態では、筋線維のコネクチンに加えて、筋膜の構造・機能が伸張性に大きく関与し、実際に骨格筋の伸長性は筋膜に由来するところが大きいと言われています。

筋膜は、表層から筋上膜➡筋周膜➡筋内膜という順に3種類あります。

筋上膜:骨格全体を覆う最外層

筋周膜:骨格筋内部の複数の筋線維を束ねて覆う

筋内膜:ここの筋線維を包み込む

筋膜を構成する組織成分にはコラーゲン線維とエラスチン線維があり、他に脂肪細胞や肥満細胞・マクロファージなどがあります。

ここではコラーゲン線維・エラスチン線維についてお伝えしていきます。

 

コラーゲン線維

筋膜の構成成分の中で、伸張性に最も影響を与えているのはコラーゲン線維と言われています。

コラーゲン線維は棒状の線維性蛋白質で、織物のような網目状の形態をしています。

網目状の形成をすることで、伸張された際にはコラーゲン線維の配列を変化させることで十分な可動性を生み出しています。

つまり、筋膜を構成しているコラーゲン線維は、筋弛緩時は様々な方向に走行しているが、伸張時はその伸長された方向にほぼ平行になるということです。(下図)

また、コラーゲン線維は張力に対して強い抵抗性を示す特性があり、筋膜を強く伸張するとコラーゲン線維の配列変化に加えて、抗張力が発揮されるため、伸張された軟部組織はそれ以上には伸長されにくくなります。

コラーゲン線維の抗張力は、コラーゲン線維の分子と分子が架橋(クロスリンク)することで生じるとされています。

架橋はコラーゲン線維の分子の末端にて生成され、身体が成長していくにつれて増加していき、コラーゲン線維はある程度の硬さをもつようになります。

しかし、架橋は身体が老化していくにつれても生成されていき、老化による架橋はコラーゲン線維の分子末端ではなく、分子間にランダムに生成されていきます。

老化につれて、血管や筋肉・関節などが硬くなっていく現象は、この架橋の生成が関わっています。

そして、骨格筋が伸張されると、筋線維よりも筋膜が先に伸張されるため、筋膜を構成しているコラーゲン線維の配列変化が生じなければ、骨格筋の伸長性が低下してしまうということです。

 

エラスチン線維

エラスチンは線維性蛋白質より生成されており、ゴム・バネのような弾力と形態記憶性を有しています。

エラスチン線維は伸長されると元の長さの2~2.5倍まで伸張され、伸張される力が除かれると元の長さに戻ります。

エラスチン線維もコラーゲン線維と同様に網目状に形態されており、常にエラスチン線維とコラーゲン線維は組みになって働いていると考えられています。

筋膜が伸張されるとエラスチン線維の弾力が、まず伸張刺激に応じて元に戻ろうとする力を発揮し、さらに強く院長するとコラーゲン線維が抗張力を発揮し、伸張された筋膜はそれ以上伸ばされないようにします。

筋膜伸張性の制御機構

筋膜の構造・機能面から、筋膜の伸張性というものはコラーゲン線維の変化に由来するところが大きく、【伸張された際のコラーゲン線維の配列変化】や【コラーゲン線維の分子間の架橋生成】が影響していると考えられます。
筋膜におけるコラーゲンはタイプⅠコラーゲンとタイプⅢコラーゲンが主であり、この両者は筋膜の種類によって含有率は異なります。
※タイプⅠコラーゲン:硬度が要求される組織で含有率が高く、伸張性は乏しい
※タイプⅢコラーゲン:伸張性や柔軟性が要求される組織で含有率が高く、伸張に富んでいる
タイプⅢコラーゲンの含有率は、筋内膜で最も高く、筋上膜で最も低くなっています。
筋内膜は筋収縮による収縮・伸張・弛緩に伴う筋線維の長さ変化に直接対応することが要求されるため含有率が高いと思われます。

まとめ

一カ月以内の不動で生じる拘縮の原因は主に骨格筋にあると言われています。

骨格筋を詳細にみていくと、直列弾性要素として筋フィラメント・クロスブリッジ・コネクチンや腱などがあり、並列弾性要素は筋膜があります。

筋フィラメント・クロスブリッジは筋収縮の際に、骨格筋の伸張性を著しく低下させます。筋収縮に依存しないコネクチンは伸張性低下に影響することもあります。

しかし、コネクチンよりも筋収縮が生じていない骨格筋の伸長性低下は、主に筋膜に原因があると考えられています。

関節可動域制限が骨格筋の器質的変化によって生じている場合、筋収縮が生じている状態では筋線維、筋収縮が生じていない状態では主に筋膜が原因である可能性が高いということではないでしょうか?

全ての症例で同じということはあり得ませんが、この知識をしっておくと関節可動域制限の原因が骨格筋にある場合、その治療方法を考える基礎知識になってくると思われます。

ここまで読んで頂きありがとうございました。

コメント

  1. […] 骨格筋の変化に由来する拘縮 【リハに役立つ!】骨格筋の変化に由来している拘縮についてまとめ岡本眞須美, 他:不動期間の延長に伴うラット足関節可動域の制限因子の変化ー軟部組 […]