【理学療法士が伝える】臨床ですぐに使える痛みの評価ポイントまとめ

【医療者向け】痛み

痛みというものは筋力低下・筋委縮・関節可動域制限・廃用症候群など様々な悪影響を及ぼし、痛みというものは更なる機能障害を引き起こさない為にも早急に治療すべき症状の1つと言えます。

痛みを治療する為には痛みの原因を評価することが大切であり、評価を誤うと痛みの治療が出来ないだけでなく、治療により痛みを増悪させてしまう可能性もあります。

痛みの治療を行う為の、痛みの評価のポイントを今回お伝えしていきます。

痛みは大きく分けて2種類

形態学的分類 有髄・無髄線維 機能 感覚神経の分類 直径(um) 伝達速度(m/s)
求心性神経 遠心性神経
A α 有髄 固有知覚 運動神経(骨格筋:錘外筋線維)  Ⅰa・Ⅰb 12~20 70~120
β 触覚・圧覚 5~12 30~70
γ 運動神経(骨格筋:錘内筋線維) 3~6 15~30
δ 痛覚・温度覚 2~5 12~30
B 交感神経節前線維 <3 3~5
C 無髄 痛覚・温度覚 交感神経節後線維 0.3~1.5 0.5~2.3

上表から 痛みはAδ線維とC線維によって伝達されます。

Aδ線維は鋭痛C線維は鈍痛を脳に伝達し、痛みは大きく分けてこの2種類に分かれます。

鋭痛は高閾値機械受容器の反応によって生じます。

つまり、強いメカニカルストレス(物理的刺激)によって生じます。

鈍痛はポリモーダル受容器が反応し、ポリモーダル受容器は様々刺激(メカニカルストレス・化学刺激・温冷etc)に反応します。

ポリモーダル受容器は高閾値機械受容器と比較し閾値が低いので比較的痛みに敏感に反応する受容器と言えます。

 

痛みの評価は視診・触診・問診

痛みの評価は基本的に視診・触診・問診で行います。

 

視診

痛みを視診で評価するために見るべきポイントは腫脹・皮膚の色・骨格筋量・関節アライメントなどです。

炎症反応がある場合、炎症の程度によりますがの四徴候として腫脹発赤が診られることが多いです。

骨格筋量が少ない場合、身体活動を行う際の負荷が大きく痛みが生じている可能性もあります。

 

触診

触診では硬さ・温度・伸張感などを評価します。

硬さは軟部組織の緊張(筋肉や靭帯・関節包など)を主に評価します。緊張が高い状態では、高閾値機械受容器ポリモーダル受容器が反応しやすくなり、痛みが生じやすくなります。

温度は炎症反応時の熱感などを主に評価します。視診で腫脹と発赤を認め、触診で熱感を認める時は炎症反応があるのでポリモーダル受容器が反応しC線維を介して痛みが伝達されている可能性が高いといえます。

伸張感は軟部組織を触診し動かしてみることで、軟部組織の緊張・伸張感・短縮の有無などを評価します。

軟部組織は表層から表皮・真皮・皮下組織(主に脂肪)・浅筋膜・心筋膜・筋線維などに分けられ、触り分けることが出来ると評価と治療が行い易くなります。

また身体・関節を動かした時の抵抗感なども評価しておくとより痛みの評価が行いやすくなります。

視診と触診を行いますが、痛みの評価で一番大切なのは問診です。

どのような痛み?痛みの種類と質

まず痛みそのものが【理学療法で治療可能な痛みなのか】、【理学療法の適応外なのか】をまず評価しなければいけません。

そのために【どのように痛むのか】を問診する必要があります。

痛み方 痛みの原因部位
突っ張って痛い 軟部組織(筋・筋膜・靭帯・関節包など)
ズキズキする・チクチクする 血管損傷:炎症による痛み
刺されるような痛み・焼けるように痛い 神経痛:椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、梨状筋症候群など
鈍く響くように痛い

炎症・骨による痛み・神経痛(梨状筋症候群を除く)の即時的な根治療法は理学療法の適応外です。

炎症反応による痛みに対する対症療法として、寒冷療法や炎症の時期(増殖期以降)によっては温熱療法も適応となります。

しかし、炎症そのものを即時的に消炎することは出来ないため、組織回復を阻害しない範囲で理学療法を進めるしかありません。

痛みが強くて理学療法を進めることが困難な場合は、薬物療法の追加・変化をDrに相談してみてもいいかもしれません。

骨の痛みも同様であり、骨癒合を阻害しない範囲で理学療法を進めていきます。骨癒合を促進する方法としては超音波療法が有名です。

神経痛は梨状筋症候群などの軟部組織により神経圧迫の場合は、梨状筋を治療することで痛みの改善を図ることが出来ますが、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの脊髄症では根本的な治療が行えません。

理学療法で出来ることは痛みが増悪しない範囲で痛み原因部位周辺の筋力向上や機能向上を図ったり、脊柱や骨盤の牽引療法で関節のストレスを軽減することです。

しかし牽引療法で一時的に関節ストレスが軽減するため即時的に効果を発揮するかもしれませんが、短期・長期的にはあまり効果が期待出来ないことを踏まえて治療を行う必要があります。

神経痛に有効なのは薬物療法であるため、リリカなどの神経ブロックの薬を服用していないかの確認やDrに症状を伝え処方を検討してもらうといいかもしれません。

 

痛みが出るのはどこ?

痛みが出現する部位が筋走行部位・関節・関節周辺・骨などの部位を問診で聞く必要があります。

ここで解剖学の知識は欠かせません。痛みが存在している部位には何があるのかを知っておく必要があります。

また、2次元で痛みの部位を評価するのではなく、3次元的に評価する必要があり、痛む部位が表層なのか深層なのかも聞き出しておく必要があります。

痛みの部位が限局出来るのか、広範囲なのかを評価することも大切です。

Aδ線維は痛みの分布領域が狭いため、痛みの部位が限局することが多いです。

反対にC線維は痛みの分布領域が広いため、痛みが広範囲にある場合が多いです。

痛みを問診する際に「痛み部位を指先で示すことが出来ますか?それとも、何となくこの辺が痛いという感じですか?」と聞いてみると、痛む範囲が限局しているのか広範囲なのかを評価することが出来ると思います。

相手が「ここが痛いです!」という指先ではっきり示すとAδ線維である可能性が高く、「ここら辺が痛いです!」という時はC線維である可能性が高いといえます。

ただし、筋肉の付着部や靭帯の付着部に痛みが生じている場合は痛みが限局しますので、痛みが限局している部位に何があるのかを知っておく必要があります。

痛みが出る時はいつ?

痛みタイミングは痛みの原因を知る重要なヒントになります。

・「安静時から痛むのか」

・「どのような動作時に痛むのか」

・「荷重時に痛むのか」

などを問診し評価します。

安静時から痛みが生じている場合は、炎症などによる化学刺激がポリモーダル受容器が反応しC線維を経由して痛みが伝達されている可能性があります。

また、骨の損傷によって痛みが出ている可能性もあります。

安静時に痛みはなく動作時に痛みが生じている場合は軟部組織の機能障害が原因である可能性があり、どのような動作時に痛むのかを評価します。

そのため、どのような動作時にどの筋肉が活動し、どの部位に伸張ストレスなどが加わるのかを知っておく必要があります。

安静時に痛みが無く、特定の動作時に痛みが生じ、痛みが生じている原因部位を探る為に別の動きをしてもらい評価するということも大切なポイントです。

ー例えばー
安静時に痛みがないが起立時・歩行時(足が着くとき)に膝蓋骨直下という限局した痛みが生じている場合、大腿四頭筋の活動によって痛みが生じている可能性を考察し、座位で膝関節伸展を行ってもらい痛みが出るのかを評価します。

荷重時に痛みが出る場合、関節に荷重が加わり痛みが生じている場合と荷重により抗重力筋が活動し痛みが生じている場合があります。

そのため、荷重時にどこが痛むのか、動作時痛と組み合わせて評価する必要があります。

また、筋・筋膜の痛みの筋緊張などによる痛みの場合は特に朝一で痛みが生じていることがあります。

安静時・動作時・荷重時だけでなく、一日の痛みの変動も評価しておきます。

痛み始めたタイミング

痛み始めたタイミングがいつなのかを聞いておくことも必要です。

痛みが出現した直前・前日に何を行っていたのか、問診し痛みの原因を考察します。

痛みが出現した前日に手術をしていたり、リハビリプログラムを変更していたり、生活場面で無理に動いた場面があったなどの普段と日常と異なったことは無かったのかを聞き出します。

もし、痛みが出現してから長期間経過している場合は痛みが慢性痛に移行している可能性があります。

慢性痛に移行しているのかどうかを評価する痛みの経過期間は約3ヶ月が目安とされています。

痛みが長く続くと神経的可塑性が生じ徐々に慢性痛へ移行していくので、いきなり慢性痛に移行するわけではありませんので注意して評価します。

 

どれくらい痛む?痛みの程度

よく多くの方が痛みの評価として最も多く行っているのがどのくらい痛むのかということです。

痛みの程度の評価としてVASやNRSが有名です。

NRSは認知がしっかりしている方の場合、前回の数字の影響を受けるため比較的VASが有効となる場合が多いです。

痛みの程度の評価は1回ではなく、痛みの経過として別の日程でも評価することが大切です。

また、安静時・動作時・荷重時などの痛むタイミングで痛みの程度が異なるのかも評価しておく必要があります。

ー例えばー
NRSで評価した時、
安静時:2
起立時:4
歩行時:6
荷重時:5

また、痛みは基本的に鋭痛と鈍痛に分かれますが、鋭痛・鈍痛の中でも痛みの強弱があります。

痛みが比較的弱い鋭痛や痛みが強い鈍痛があります。

痛みの程度を評価することが大切ですが、その痛みは【どちらなの要因が強いのか】を見極めると治療が行い易くなります。

痛みの鋭痛・鈍痛を見極めるポイントは【安静時痛の有無】や【疼痛回避行動】です。

鋭痛でれば高閾値機械受容器が反応するため、安静時は反応しにくく鈍痛であるCポリモーダル受容器が反応すると思われます。

また、鋭痛の場合はその痛みを避ける為に痛みが出ない方法で行動している可能性が高いといえます。

それが跛行であったり、立位姿勢で荷重を避けていたり、起き上がりの方法であったり様々です。

ーまとめー
安静時痛無し×疼痛回避行動あり➡鋭痛
安静時痛有り×疼痛回避行動無し➡鈍痛

※ただし痛みは鋭痛・鈍痛の中で程度が異なるため、あくまで1つの参考として知っておく程度にしておいて下さい。

痛みの問診の注意点

痛みとは同じ痛み信号でも感じ方は個々で異なるということに注意が必要です。時にはつじつまが合わないこともあります。

そのため問診の評価だけでなく、視診・触診の評価を組み合わせることで治療の評価の信頼性・妥当性を高める必要があります。

まとめ

痛みの評価・治療を行う為には視診・触診・問診を組み合わせることが必要であり、適切に組み合わせて評価するために解剖学・生理学の知識は特に欠かせません

痛みの評価は以下を組み合わせて原因を追究し評価・治療していく必要があります。

視診
腫脹・皮膚の色・骨格筋量・関節アライメントなど
触診
硬さ・ 温度・伸張感・抵抗感

痛みの質(どのような痛み)
突っ張る?・ズキズキ?刺されるような?鈍くて響く?

痛む部位
筋走行部位?関節?関節周辺?深層?表層?

痛みが出るタイミング
安静時?運動時?荷重時?日内変動は?

痛み始めたタイミング
直前・前日に何をした?長く痛みが続いていないか?(慢性痛に移行していないか?)

痛みの程度
VAS・NRS・鋭痛?・鈍痛?・疼痛回避行動は?

痛みは全てが理学療法治療対象ではなく、痛みの原因によっては理学療法対象外ということになります。

そのため、理学療法にこだわるのではなく、薬物療法や外科的治療などを提案・相談することも時には大切です。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

文献・書籍を基に出来る限り信頼性・妥当性のある記事を書いていますが、情報が古かったりすることもあるかもしれません。
この記事内容を鵜呑みにするのではなく、情報の一部として取り入れて頂き別の文献や書籍・勉強会などで勉強する時に組み合わせて知識を得るなどして役立てて下さい。

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