リハビリを行っていく上で部分的な評価だけでなく、理学療法以外でも全体的な評価は欠かせません。
全体的な評価の1つとして血液データの解釈は欠かせません!
ここではまずCr(クレアチニン)の解釈についてお伝えしていきます。
血液検査:Cr(クレアチニン)
尿素窒素(BUN)同様に、体内の蛋白質が分解されたあとの最終産物です。
筋肉内でクレアチンという物質から生み出され血液中に出現し、腎臓から尿中へ排泄されます。
Cr(クレアチニン)と尿素窒素(BUN)は共に腎臓から尿中へ排泄されますが、尿素窒素は腎臓では糸球体で濾過されて尿細管から再吸収されますが、クレアチニンは尿細管から再吸収されません。
クレアチニンは腎臓以外の影響を受けにくいという性質があります。
血液検査:Cr(クレアチニン)の基準値
血液検査:Cr(クレアチニン)が高値の時
症状 | 乏尿 低Na血症 高K血症 脱水 筋肉痛 浮腫 高血圧症 |
病態 | 心不全・脱水などにより腎血流量が減少し乏尿となります。 体外への排出が少なくなり全身に浮腫が認められるようになります。 また、循環血液量が過剰となり血圧が高値となります。 腎機能障害になると体内水分量の増加によって血中Naが希釈され低Na血症になります。 腎機能低下になるとKを尿中に排出できなくなり高K血症になります |
原因・影響因子 | 腎機能障害(腎前性・腎性・腎後性) 急性心不全 ネフローゼ症候群 肝硬変 甲状腺機能低下症 心因性多飲 巨人症 激しい運動 |
Cr(クレアチニン)は腎不全により上昇する為、病棟では尿量・全身の浮腫・血圧を確認します。
外来・訪問リハビリでは全身浮腫と血圧、体重のチェックをします。同時に薬の飲み忘れがないかを確認し、日頃の水分摂取量・塩分摂取量を確認します。
また、Crは筋肉のクレアチニンの代謝産物であるため、筋の損傷により上昇します。その為、激しい運動によりCrが上昇する場合は、介入前の運動量・運動負荷量も確認も大切なポイントになってきます。
Crの上昇は腎機能障害を示唆している可能性があり、総合的に評価し腎機能障害を認める場合は薬物の腎排泄が遅延するため、患者が内服している薬の副作用を確認し自覚症状の確認を怠ってはいけません。
Crが急上昇し、急性心不全・急性腎不全を認める場合は、リハビリを中止しDrに報告します。
血液検査:Cr(クレアチニン)が低値の時
症状 | 筋肉量減少 |
病態 | 筋肉量が減少することにより、相対的にCr産生が低くなり低値となります。 |
原因・影響因子 | 低蛋白食 栄養障害(低栄養や長期臥床) 筋委縮性側索硬化症(ALS) 筋ジストロフィー 尿崩症 |
Cr(クレアチニン)は、低蛋白や筋肉量減少時に低値となる。そのため、食事に含まれる蛋白量を確認し、四肢周径を測定し骨格筋の状態を把握します。
血清中筋原性酵素であるCK・AST・ALTを同時にチェックし筋線維が障害されていないか確認します。
しかし、CK・AST・ALTは服薬の副作用によって上昇するため服薬している薬を確認することも必要です。
リハプログラム
注意点
筋ジストロフィーやALS(筋萎縮性側索硬化症)などの疾患は過度な負荷により筋線維の破壊が容易に起こりますので運動量や負荷量には注意します。
また、食事量が十分でない状態の激しい運動や筋力強化を目的としたレジスタンストレーニングは推奨されません。
禁忌
急性心不全・慢性心不全急性増悪により腎機能障害が進行しCrが上昇している場合はリハビリは禁忌となり、Drに相談し確認します。
その他の注意点
腎機能障害ではCrのみで判断するのではなく他の検査値(BUN・eGFR・尿検査)や臨床所見(全身性浮腫・尿量)などから総合的に評価し判断します。
Crは筋のクレアチニン代謝の産物なので筋肉量に比例します。その為、骨格筋量が多い男性の場合は正常値が高くなります。
心不全が増悪傾向であればCrの上昇ともに尿量が減少し体重が増えて、体内水分量が増えることがあります。
体内水分量が増えて過剰になった場合は、NaやKなどの電解質のバランスが乱れるため不整脈に注意します。
加齢に伴い腎血流量と腎機能の低下が起こり、Crが上昇します。しかし、加齢に伴い筋肉量が減少した高齢者の場合はCrが低値を示すため、検査値を確認するときは留意が必要です。
※腎前性:循環障害(脱水・ショック・うっ血性心不全など)など全身疾患のため腎臓への血流が低下し起こる腎障害
腎性:腎臓の糸球体や尿細管に原因があり腎臓そのものに障害が発生したために起こる腎障害
腎後性:腎臓より下位の尿路(尿管・膀胱・尿道)に原因があることで起こる腎障害
参考書籍
血液検査の数値を把握しておくことで、より詳しくリハビリのリスクを把握したり、リハビリプログラムの構築の工夫やリハビリの進捗を予測することが出来ます。
血液検査に詳しくなると、周囲の療法士に頼られることが増えると思います!!
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