リハビリを行っていく上で部分的な評価だけでなく、理学療法以外でも全体的な評価は欠かせません。
全体的な評価の1つとして血液データの解釈は欠かせません!
ここではTSH・FT₄(甲状腺機能の指標)の解釈についてお伝えしていきます。
TSH・FT₄、甲状腺とは
甲状腺は新陳代謝に促進するためのホルモンを分泌する臓器であり、身体活動に大きく関与しています。
その為、甲状腺の機能が亢進すると新陳代謝が過剰に促進され身体は消耗傾向となり、甲状腺の機能が低下すると新陳代謝が弱くなり身体機能も低下傾向になります。
視床下部から分泌されるホルモンが下垂体前葉を刺激すると、TSH(甲状腺刺激ホルモン)が分泌されます。(上図)
甲状腺を刺激することでFT₄・FT₃の産生が調整されます。
FT₃はFT₄が肝臓などの臓器でつくり替えられたものであり、甲状腺ホルモンを産生する能力はFT₄の値に規定され、甲状腺ホルモンの全身への作用能力はFT₃となるため、FT₃とFT₄は同様の増減を示します。
TSHはFT₄産生を増加させます。FT₄が低下した場合、TSHは増加します。
基本的にはTSHが異常値であればFT₄を確認し、高値・低値で甲状腺機能亢進・低下を判断します。
TSH・FT4の基準値
甲状腺機能亢進(TSH低値・FT₄高値)の時
症状 | 全身倦怠感 体重減少 動悸 心房細動 手指振戦 周期性四肢麻痺 発汗増加 不眠 |
病態 | FT4が高値となることにより甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌が低下 |
原因・影響因子 | バセドウ病 甲状腺クリーゼ 甲状腺炎 |
甲状腺機能亢進症・中毒症とは、甲状腺ホルモンの高値により代謝亢進の諸症状(頻脈・発汗・体温上昇・体重減少・精神症状)をきたした状態です。
※甲状腺機能亢進症:甲状腺で過剰に甲状腺ホルモンを合成・分泌している状態
※甲状腺中毒症:血中甲状腺ホルモン値が高い状態
甲状腺機能低下(TSH低値・FT₄高値)の時
症状 | 全身倦怠感 浮腫 体重増加 徐脈 便秘 嗄声 無気力 寒がり |
病態 | FT4が低値となり甲状腺ホルモン(TSH)分泌が亢進 |
原因・影響因子 | 慢性甲状腺炎(橋本病) ヨード過剰・欠乏 アミオダロンなどの薬剤性 |
甲状腺機能低下症は視床下部や下垂体の疾患、標的組織の甲状腺ホルモン不応性、甲状腺でのサイロキシンの合成・分泌の障害により、永続的または一過性の甲状腺ホルモンの作用不足により多彩な症状を示す病態です。
甲状腺ホルモンはほぼ全身の臓器を標的臓器とするため全身にわたり多彩な症状を呈します。
代謝の閾値は皮膚の乾燥・粗雑化、脱毛、徐脈、低体温、肥満、浮腫、深部腱反射の弛緩時間遅延、便秘、記銘力低下、うつ状態などをきたします。
また、心不全・心膜液貯留・舌の肥大・嗄声・体重増加を呈し、機能低下が亢進した場合は自覚症状が乏しく加齢や認知症との鑑別が難しくなることも多いです。
リハプログラム
甲状腺機能障害がリハビリの直接的な禁忌となることは基本的にありませんが、倦怠感・頻脈・徐脈などの症状がリハビリの中止基準に引っ掛かることがあります。
内服状況の確認を行い、症状が改善傾向なのか、検査値の変動とともに注意します。
心不全治療(薬物療法)にともない甲状腺機能障害が頻発し、心臓に負担をかけるため、心電図モニターや心不全増悪(浮腫・疲労感・息切れなど)に注意しながらリハビリを行う必要があります。
その他の注意点
TSH低値でFT₄が正常であれば、FT₃上昇のみに起因する甲状腺機能亢進症があります
慢性的なCK高値、脂質異常症の場合にはリハビリスタッフは甲状腺に関する血液検査を確認します。
➡総コレステロール低値かつアルカリフォスファターゼ(ALP)の場合は甲状腺中毒症(亢進)、総コレステロール高値かつCK高値の場合は甲状腺機能低下症が疑われます。
参考書籍
血液検査の数値を把握しておくことで、より詳しくリハビリのリスクを把握したり、リハビリプログラムの構築の工夫やリハビリの進捗を予測することが出来ます。
血液検査に詳しくなると、周囲の療法士に頼られることが増えると思います!!
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