【理学療法士が教える】痛みの中枢性感作ー脊髄の神経可塑的変化

【医療者向け】痛み

急性痛というものは放っておくと慢性痛に移行し、痛みが長期間にわたって出てしまうことがあります。

急性痛が慢性痛に移行する原因は多種多様です。

急性痛が慢性痛に移行する原因・メカニズムを知っておけば防止につながり、痛みの治療にもつながります。

ここでは、急性痛が慢性痛に移行するメカニズムを脊髄レベルでお伝えしていきます。

ワインドアップ

ワインドアップ(wind-up)とは、末梢神経(C線維)への繰り返しの刺激により、脊髄後角の広作領域(WDR)ニューロンの放散時間が延長していき、放散数が増加していきます。

ワインドアップ現状のメカニズムとして、繰り返し刺激されるC線維の一次侵害受容ニューロンの末端(脊髄側)から、グルタミン酸サブスタンスPカルシトニン遺伝子関連ペプチドが放出されることで二次侵害受容ニューロン末端の受容体が活性化します。

二次侵害受容ニューロンの末端が活性化することで、興奮性シナプス後電位(EPSP)が発生します。

※興奮性シナプス:シナプス伝達によってシナプス後細胞を脱分極させ、活動電位の発火を促進するシナプス結合。

つまり、低頻度の活動電位でも神経活動が活性化しやすくなっている状態です。

興奮性シナプス後電位によりC線維の低頻度興奮でも二次ニューロンのAMPA受容体を介した経時的加重を引き起こしNMDA受容体のMg²⁺ブロックが外れて大量のCa²⁺が細胞に流入し、さらに陽イオンが流入して脱分極を促進することで経時的加重が起こります。

※C線維:主に鈍痛を伝える神経経路・痛みの情動・認知に関わる

※AMPA受容体・NMPA受容体:痛みの神経伝達物質の1種のグルタミン酸の受容体。NMPA受容体は普段はブロックされているが、グルタミン酸やサブスタンスPが大量に放出されると陽イオンを引き入れて脱分極を起こし、痛覚経路の細胞の興奮性を高める。

長期増強

長期増強とは、強く高頻度の刺激によりニューロンのシナプス伝達効率が上昇した現象のこと。

長期増強は海馬における短期記憶に関与しシナプスの可塑性を示すものであり、痛みの持続・慢性化に関与すると考えられています。

長期増強のメカニズムとして、二次侵害受容ニューロン末端のNMDA受容体が活性化されるとCa²⁺の細胞内流入により

・シナプス後膜の受容体増加

・サイレントシナプスの活性化

・前シナプスからの神経伝達物質の放出増加

上記の3つが起こり、シナプス伝達効率が上昇することで痛みの神経回路の活性化が生じます。

シナプス再構築

脊髄損傷時などで、脊髄後角におけるサブスタンスPの発言低下とC線維の退縮により非侵害受容ニューロン(Aδ線維)の中枢末端から軸索発芽が生じます。

発芽した軸索が、脊髄後角の中で痛み情報の伝達部に進入してくることにより脊髄後角への誤入力が生じます。

グリア細胞の活性化

末梢神経損傷時、脊髄後角のグリア細胞の1つであるミクログリアが活性化して損傷神経を貪食するとともにサイトカインを放出し、後角のシナプス伝達を亢進させます。

炎症性疾患では炎症により産生される炎症性サイトカインが血流にのり脊髄に入り込むことでミクログリアを活性化させます。

ミクログリアの活性化はアロディニア痛覚過敏、痛み行動と相関が高いといわれています。

炎症により疼痛脊髄レベルで疼痛が増大しやすいことを頭に入れておく必要があります。

脱抑制

通常、脊髄後角のシナプスには前・後シナプス抑制による調整が作用しています。

この調整は下降性疼痛抑制系などの作用により行われていますが、この下降性疼痛抑制系などの抑制系ニューロンの減少・消失によってこの抑制系が減弱すると脊髄後角ニューロンの活動は亢進し、痛みの伝達を促進させます。

※下降性疼痛抑制系:脳幹から下降する抑制性ニューロンによって脊髄後角の一次侵害受容ニューロンと二次侵害受容ニューロン間のシナプス伝達を抑制する。この作用は脳の背外側前頭前野・腹外側前頭前野・偏桃体などの認知や情動とに支配されて活動がコントロールされる。

まとめ・考察

痛みが長く続くと脊髄レベルでワインドアップ現象や長期増強などにより痛みが強く伝達されやすいことが分かります。

また炎症性疾患ではミクログリア細胞の活性化によって痛みの伝達が促進されます。

そうして一次侵害受容ニューロンと二次侵害受容ニューロン間のシナプス伝達は促進されますが、これを下降性疼痛抑制が調整します。

しかし、下降性疼痛抑制系は情動や認知に強く関わりを持ち、痛みの認知・情動によって活動が変化します。

痛みが生じている場合、理学療法の治療対象であればいち早く治療することで改善の近道であり、痛みはコントロール出来ることを相手にしっかり理解してもらうことが大切です。

しかし、認知症患者人の意見を聞き入れない頑固な人などは痛みの認知・情動の指導によるコントロールが難しくなるので、痛みを感じない範囲でリハビリを行うか痛みをいち早く治療することが望ましいといえます。

参考書籍

痛みについて詳細に記載している書籍です。

内容はやや難しいですが、痛みについてより詳しく知りたい方にはオススメです!!

痛みの根本的なことを勉強がしたい方はぜひ読んでみて下さい。

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ここまで読んで頂きありがとうございました。

コメント

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