【療法士向け】低血糖とシックスデイ、理学療法士の関わりとは

【医療者向け】糖尿病

リハビリを行っていると既往・持病に糖尿病を有している患者さんに出会うことは少なくありません。

糖尿病患者にリハビリを行う時に、運動量や食事量・服薬の変化によって低血糖症状を起こすこともあります。

ここでは、医療者特に療法士向けに低血糖症状についてまとめていきます。

低血糖症状

低血糖は、糖尿病の治療中にみられる比較的頻度の高い緊急事態です。しかし、血糖値が低いだけで低血糖と定義することは難しいです。

低血糖の自覚閾値には個人差があり、数値は固定されたものではなく同じ患者でも状態によって変化します。

持続性の高血糖がある患者では、低血糖と認知される血糖レベルが健常者と比べて高くなります。例えば、300mg/dL以上の高血糖が持続している患者の場合、血糖値が100mg/dL程度に低下しただけでも軽い低血糖症状が出現することがあります。

低血糖の症状は…
冷汗・不安・動悸・頻脈・振戦・顔面蒼白・頭痛・眼のかすみ・空腹感・眠け(生あくび)・興奮などの異常行動など

低血糖で認められる症状は2つに分類されます。

1つ目は低血糖時に分泌されるカテコラミンなどによる交感神経症状、2つ目はブドウ糖欠乏による中枢神経のエネルギー不足から生じる中枢神経症状です。

交感神経症状の出現する血糖閾値は中枢神経症状の閾値に比べて低いので、先に交感神経症状を認めることが一般的です。

低血糖:交感神経症状

血糖値が80mg/dL程度まで低下すると、膵臓から分泌されるインスリンは減少し、70mg/dL程度まで低下するとインスリン拮抗ホルモンでカテコラミン・グルカゴンを分泌し血糖値が下がらないようにします。

交感神経からのカテコラミン分泌により動悸・冷汗・振戦などの自律神経症状が出現します。

血糖値:80mg/dL程度 膵臓から分泌されるインスリン量が減少
血糖値:70mg/dL程度 インスリン拮抗ホルモン:カテコラミン・グルカゴンの分泌

低血糖:中枢神経症状

血糖値が50mg/dL以下になると、ブドウ糖欠乏により脳機能低下が生じ、疲労感・空腹感・眠気・頭痛・頭重感・眼のかすみ・他覚的所見として注意力低下・焦点が合わない、惰眠や傾眠、興奮・錯乱などの異常行動などの中枢神経症状をきたします。

さらに低血糖状態が続くと、意識レベルが低下し、昏睡へと進行し、低体温・痙攣をきたします。

低血糖症状まとめ

交感神経症状 血糖値が正常範囲より急速に降下した結果生じる

・発汗 ・不安 ・動悸 ・手指振戦 ・顔面蒼白など

中枢神経症状 血糖値が50mg/dL程度に低下したことにより生じる症状で、中枢神経のエネルギー不足を反映する

・頭痛 ・眼のかすみ ・空腹感 ・眠気 ・生あくびなど

血糖値が50mg/dLを下回ると

・意識レベルの低下 ・異常行動 ・痙攣など

低血糖の誘因

臨床的に最も多く経験する低血糖は、糖尿病治療薬によって起こるものが多いです。

特にインスリンそのものやインスリン分泌を促進させるSU薬によって引き起こされる場合が多いです。

糖尿病治療薬の投与量は、普段の食事摂取量や身体活動量とのバランスで決定されるため、食事摂取量が少なかったり・遅れたりする場合や運動量が多かったときなどは、血糖値が低くなりやすくなります。

また、アルコールの摂取は肝臓での糖新生を抑制するため、多量接種は低血糖の原因となることがあります。

薬剤の代謝に影響する肝障害腎障害の存在は低血糖のリスクを増大させるため注意が必要です。

低血糖の誘因
1.薬剤:糖尿病治療薬の量の過剰、又は服薬・駐車時間の不適切
2.食事:摂取量・時間の不適切
3.消化不良:自律神経障害による胃排泄遅延や吸収の低下、嘔吐
4.運動時間・量の変化:消費エネルギー量の増大
5.入浴
6.腎不全:やせ型の人は注意
7.インスリンの感受性改善:糖毒性の解除、体重減少

シックスデイ

シックスデイとは…
糖尿病患者において、感染症による発熱や消化器症状だけでなく、外傷・手術・歯科治療・ステロイド投与など新たに加わる身体的ストレスによって、非日常的に血糖コントロールが困難となった状態

感染症や身体的なストレスは、インスリン拮抗ホルモンの分泌促進サイトカインを介してインスリン抵抗性を増悪させると共に、発熱・下痢・嘔吐・食欲不振は様々なミネラル・水分の喪失をもたらし、糖尿病の状態を悪化させます。

脱水による血漿浸透圧の上昇は高血糖を助長し、※糖毒性と悪循環を形成してさらに高血糖状態を悪化させてしまいます。

※糖毒性:血液中のブドウ糖の濃度が高くなる高血糖が続くことで生じる毒性をいう。ブドウ糖はエネルギーの源だが、たんぱく質を変質させる毒性を持っている。高血糖状態が続くと、様々な細胞のたんぱく質をブドウ糖が変質させ、膵臓でもインスリンを分泌する細胞の働きが低下したり、インスリンが効きにくくなったりする。

一方、食欲不振などにより糖質の摂取が不足した状態でインスリン注射や傾向血糖降下薬(スルホニル尿素薬:SU薬など)を継続すると、低血糖を起こすこともあります。

つまり、シックスデイの病態は複雑であり、高血糖にも低血糖にもなりうるため注意が必要となる。

理学療法士の関わり

低血糖時の関わり

患者に低血糖症状が認められる場合、経口摂取が可能なときはブドウ糖(10g)またはブドウ糖を含む飲料水を摂取させる。

ショ糖では少なくともブドウ糖の倍量(砂糖で20g)を取らせる。しかし、α-グルコシターゼ阻害薬(グルコバイ・ベイスン・セイブル)は糖の吸収を遅らせることにより食後の高血糖を抑制する作用があり、ブドウ糖以外では効果発現が遅延する可能性があります。

その為、α-グルコシターゼ阻害薬を服用している患者が低血糖に陥った場合には必ずブドウ糖を選択する。

経口摂取が不可能な場合には、ブドウ糖や砂糖を口唇と歯肉の間に塗り付ける。

シックスデイ患者の関わり

シックスデイ時における原則をまず指導しておくことが重要であるが、患者の病態は個々で異なるため、個人の特性に合わせたシックスデイ対応法を作成し指導することが理想的である。

シックスデイルール時における原則のルール
1.安静と保温に努め、早めに主治医っまたは医療機関に連絡する
2.水やお茶などで水分摂取を心がけ、脱水を防ぐ
3.食欲が無くても、おかゆ・果物・うどん・ジュースなどで、炭水化物を補給する
4.インスリン治療中の患者では自己の判断でインスリンを中止しない
1)食事摂取出来なくても、インスリンを中止しない
2)血糖自己測定(SMBG:Self Monitoring of blood glucose)を行いながら、増減の目安を参考にインスリン量を調整する
5.経口血糖降下薬・GLP-1受容体作動薬は、種類や食事摂取量に応じて減量・中止する
6.入院治療が必要な時は、休日でも電話連絡をしてから受診する
7.医療機関では、原疾患の治療と補液による水分・栄養補給を行う
医療機関の受信が必要な時の目安
1.嘔吐や下痢が激しく1日以上続き、食事摂取が不可能な状態が続くとき
2.高血糖と尿中ケトン体陽性が1日以上続くとき
3.38℃以上の高熱が2日以上続き、改善傾向がみられないとき
4.腹痛が強い時
5.胸痛や呼吸困難、意識混濁がみられるとき
6.脱水症状がは激しい、あるいは著しい体重減少がみられるとき
7.インスリン注射や経口血糖降下薬の服薬量が、自分で判断出来ないとき

服薬の特徴と管理指導

経口血糖降下薬を服薬中の患者では、食事量が普通であればそのままとし、食事量が半分以下であれば服薬量を調整ないし中止します。

SU薬や速攻型インスリン型分泌促進薬は、血糖値を下げる効果が早く・強く効くため食事量が半分程度であれば服用量も半分にし、1/3以下であれば服薬を中止する必要があります。

α-グルコシターゼ阻害薬やビグアナイド薬は消化管系に影響がでる為中止することが望ましいです。

チアゾリジン・DDP-4阻害薬は食事量が半分以下であれば服薬を中止します。

内服薬を中止した場合、または食事摂取が不能、尿ケトン体が強陽性の場合はインスリン療法への切り替えも考えます。

GLP-1受容体作動薬は下痢・嘔吐などの消化器症状がある時は、食事量が半分以下であれば中止する。

この場合には、血糖自己測定値を参考にインスリン療法への切り替えも考慮されます。

インスリン療法中の患者の場合、1型糖尿病患者では基礎インスリン(持効型インスリン・中型インスリン)は食事量が減ったり、全く食べられなかったりするときでも原則として減量はしない。

追加インスリン(超速攻型インスリン・速攻型インスリン)は食事量および血糖自己測定値に応じて増減します。

食事量が分からない時は、超速攻型インスリンは食直後に注射します。

2型糖尿病患者でも、内因性インスリン分泌が枯渇している場合や強化療法を行っている場合は、1型糖尿病患者に準じた対応を行います。

混合型1日2回注射の場合は、食事量や血糖自己測定値に応じて増減します。

経口血糖薬と持効型インスリン注射との併用療法であるBOT(Basal supported oral therapy)の場合、食事がまったく摂れなくても原則として持効型インスリンの量はそのままでよいが、血糖自己測定値を参考に対処することが望ましいです。

高齢者は、若壮年者に比べて高血糖や低血糖時の自覚症状に乏しく、口渇感の訴えも少ないため、脱水症・高血糖膠質浸透圧症候群への進展リスクが高いので注意が必要です。

参考書籍

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