【療法士向け】理学療法士が教える浮腫のメカニズム・評価・治療

【医療者向け】浮腫

浮腫は身体を重くするだけでなく、浮腫を放っておくと組織の線維化につながり重大な関節可動域制限につながる可能性もあります。

しかし、浮腫が生じる原因は様々であり、原因により治療方法が異なります。

また、治療を行うと重大な疾患を悪化させてしまうものもあるので、浮腫に関する知識は医療者にとって欠かせません。

ここでは、普段理学療法士として働いている視点から浮腫についてお伝えしていきます。

浮腫が出来る仕組み

浮腫とは…細胞外液のうち特に組織間質液が増加している状態。

浮腫はどうして生じるのでしょうか?

血管を流れる血液から栄養分や酸素を組織細胞に送っていることは既に多くの方が周知だと思います。

血管内の血液(血漿)と細胞内の血液(血漿)の量は普段はバランスを上手くとっています。

しかし、そのバランスが崩れて皮膚皮下組織に過剰な水分が蓄積している状態が浮腫です。

血管内⇔細胞内で血液を送りあう際に...Starling(スターリング)の法則にしたがいます

・静水圧:水が持つ押し出す力
・浸透圧:組織のイオンなどの密度の違いから生じる水が移動する力
人の身体はイオンなどの物質の密度を一定に保とうとする力がある(ホメオスタシス)

以上の2つの力が働きます。

この2つの力は、【血管内➡細胞内】・【細胞内➡血管内】の両方に常に働きます。

このバランスが崩れてしまうと浮腫が生じるわけですが…

例えば…

血管内の血液量が過剰に増えると、血管内から水が押し出ようとする静水圧が加わります

細胞内のあるイオンの密度が高くなると、細胞内の水分量を増やすことで密度を相対的に一定に保とうとします

このように静水圧・浸透圧のどちらか・又は両方のバランスが崩れると…

血管内から細胞内に水分が移動しようとし、皮膚皮下組織に過剰な組織間液が貯留することで浮腫が生じます。

発生機序による浮腫の分類

浮腫は静水圧と浸透圧のバランスが崩れることで現れます。

浮腫が現れる仕組みを上記の説明から考えると…

1:血管内静水圧の上昇

2:血管内膠質浸透圧の低下

3:間質液膠質浸透圧の上昇

この3つに分けられます。

上記3つの発生原因別に浮腫を分類していくと以下になります。

1:血管内静水圧の上昇
1)循環血漿量の増加
腎不全・糸球体腎炎・心不全
薬物(NSAID・ADH・β遮断薬・ACE阻害薬)、妊婦・特発性浮腫(下肢)
2)静脈還流の阻害
肝硬変・肝静脈閉塞・心不全・静脈血栓・外傷・腫瘤・高度肥満
2:血管内膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症・低栄養状態)
1)腎・消化管からの蛋白漏出
ネフローゼ症候群・蛋白漏出性腸症
2)肝における蛋白合成低下
肝硬変
3)蛋白質の摂取不十分
3:間質液膠質浸透圧の上昇
1)血管透過性の亢進
炎症・外傷・熱傷・アレルギー・血管神経性浮腫(Quincke浮腫)
2)リンパ流の障害
癌のリンパ節転移・悪性リンパ腫・手術・外傷
3)間質のムコポリサッカライトの沈着
甲状腺機能低下症(粘液水腫)

浮腫のリスク

浮腫は皮膚や皮下組織に過剰な組織間液が貯留した状態であるため、皮膚は菲薄で外力による損傷を受けやすい状態です。

皮質の分泌低下や水分保持能力も低下するため、皮膚は乾燥し、バリア機能が低下します。

また、血流障害を引き起こし末梢の酸素供給・栄養不足皮膚温の低下皮膚の免疫機能も低下するため、小さな傷からも細菌感染を引き起こすリスクが高くなります。

浮腫の評価のポイント

局所性・全身性浮腫

局所性浮腫:限局した部位に左右非対称に現れる。

全身性浮腫:初期は顔や下肢に部分的に現れるが、左右対称に現れる。

全身性浮腫は重力の影響で歩行可能な患者は下肢に強くみられる。臥床している患者では後頭部背部に強くみられる。

圧痕の有無

圧痕の確認部位は、脛骨粗面や仙骨・前頭部などの骨が皮下にある部位を母子で圧迫して行います。

基本的に数秒で分かることがおおいですが、正確に診断する為にも1分程度押し続ける方がオススメです。

●圧痕が残るタイプの浮腫を「圧痕性浮腫:pitting edema

●圧痕が残らずにすぐに回復する浮腫を「非圧痕性浮腫:non-pitting edema

と言います。

●圧痕性浮腫間質に水分が貯留するため圧痕が残り、ネフローゼ症候群肝硬変心不全でみられる。

●非圧痕性浮腫間質の蛋白濃度が増加するリンパ浮腫甲状腺機能低下症でみられる。

圧痕性浮腫の分類

圧痕性浮腫は、その回復時間により40秒未満のfast edemaと40秒以上のslow edemaに分類されます。

fast edemaの場合は、低アルブミン血症に伴う浮腫です。

浮腫の評価:フローチャート

浮腫の治療(理学療法)

理学療法で紹介されている治療方法として…

・患肢の挙上

・ドレナージ手技

・運動療法(筋ポンプ作用促進・軽運動負荷)

・圧迫療法(バンテージ・弾性包帯・弾性ストッキングなどの使用)

・間欠的空気圧迫療法

以上が挙げられます。

患肢の挙上は心臓の位置より高くすることで重力の影響により排水を促すことが目的です。

過去の研究から患肢の挙上の高さは30cmが有効であるとされているが、浮腫の原因別で適応の有無は不明瞭です。

心疾患に起因する浮腫では患肢の挙上を行っても、浮腫を有意に減少させなかったと報告されています。

浮腫の起因別の理学療法

心疾患・腎疾患

心疾患・腎疾患のような全身性浮腫の場合、理学療法で対応することは困難です。

心疾患・腎疾患のような全身性浮腫の場合、原疾患に対する治療が最優先です。

心疾患に起因する浮腫の場合は過剰に静脈還流を促すよう手技は、心臓に返ってくる水分量が増大し、心臓の負荷を上げてしまう恐れもあるので注意が必要です。

心疾患・腎疾患に起因する浮腫の理学療法出来る対症療法は困難ですが、予防として過剰な運動負荷は浮腫を増悪させてしまう可能性があるので運動負荷には注意が必要です。

脳血管疾患

脳血管障害の後遺症として麻痺側の上下肢に浮腫がみられることはよくあります。

麻痺側のみに浮腫が限局するメカニズムは明確には理解されていないが、おそらく血管透過性の亢進が起こっていることが考えられます。

また、自律神経系機能異常が関与していることも示唆される。

さらに、麻痺側の筋活動の減少麻痺側の不使用による筋ポンプ作用の減弱が浮腫を増悪させている要因になっていると考えられる。

理学療法として、筋ポンプ作用を促す為の運動療法ドレナージ手技間欠的空気圧迫法が考えられる。

外科的術後

侵襲的な治療を行った場合、急性期に浮腫を認める場合が多い。

浮腫が生じる原因として、安静に伴う不動による筋ポンプ作用の低下炎症反応に起因するが考えられる。

体幹・下肢の術後には、DVT(深部静脈血栓症)の予防のために間欠的空気圧迫装置を用いることが一般的である。

また、浮腫の治療に限り炎症反応に留意しながら負荷量を調整した運動療法を行うことも大切です。

炎症

炎症時に肥満細胞から分泌されるヒスタミンやなどの化学物質が血管拡張・血管透過性の亢進を引き起こし浮腫が症状として出る。

また、ブラジキニンは血管透過性の亢進作用が強く浮腫の誘因となる。

この炎症期には理学療法を行うことは望ましくなく、安静にすることが大切です。

また、蜂窩組炎のような感染症に起因する炎症の場合には禁忌である。

リンパ浮腫

リンパ浮腫に対する理学療法としてバンテージや弾性包帯による圧迫療法、ドレナージ手技を組み合わせた複合的理学療法が用いられることが多い。

しかし、経験を積んだ療法士でないとドレナージ手技で改善を図ることは難しいです。

 

書籍紹介

浮腫に対する理学療法の書籍は意外に少ないものです。

浮腫に対する知識を身に着けたい方は、以下の書籍を参考にしてみてはいかがでしょうか?

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