大腿骨頸部骨折は大腿骨頸部内側骨折とも呼ばれます。
大腿骨頸部骨折は大腿骨転子部骨折と同様によく臨床でみられます。
大腿骨頸部骨折は大腿骨頭と転子間線の間の大腿骨頸部部分の骨折であり、大腿骨頭に血液を供給する内側大腿回旋動脈が骨折と同時に損傷し大腿骨頭への血液量が格段に減ります。
大腿骨頭への血流量が減ることで大腿骨頭が壊死を起こすため、大腿骨頭から置換する人工骨頭置換術が行われます。
ここでは、そんな大腿骨頸部骨折と術後の画像の見方についてお伝えしていきます。
大腿骨頸部骨折の受傷機転・重症度分類
大腿骨頸部骨折は関節包内に生じる骨折であり、その為に骨膜新生がありません。
加えて関節内の滑液が豊富であり血液が凝固しにくく、受傷時に転位が大きくなっていれば栄養血管が乏しいことから骨癒合がしにくいと言われています。
大腿骨頸部骨折はGarden分類が有名であり、Garden分類は骨折部の転位の程度を表し4つに分類されたものです。
一般的にGarden分類Ⅰ~Ⅱは骨接合術、Ⅲ~Ⅳは人工骨頭置換術が施行されます。
しかし、Garden分類Ⅲ~Ⅳであっても、若年者の場合は保存的に仮骨形成が望めると判断されれば、人工骨頭置換術は行われない場合があります。
上図:Garden分類(大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)引用)
Ⅰ:非転位型、不全骨折で骨の連続性が保たれている➡骨接合術
Ⅱ:非転位型、完全骨折であるが転位がない➡骨接合術
Ⅲ:転移型、頸部被膜の連続性が保たれている➡人工骨頭置換術
Ⅳ:転移型、全ての軟部組織の連続性が断たれており整復が困難➡人工骨頭置換術
治療方法
ハンソンピン
ハンソンピンは低侵襲で術創部痛が少ないとされています。
不安定型骨折においてもスクリューによる引き寄せ効果が期待でき、固定性が強くなります。
早期荷重歩行を実現する為に用いられることが多いです。
CCHS
CCHSは術後免荷期間を設けることが多いです。
荷重刺激を受けるため骨癒合の促進効果が期待出来ます。
しかし、術後の状態に合わない過荷重量を加えると頸部短縮を引き起こす可能性があります。
CCHSのヘッドの部分が骨皮質から飛び出していると頸部が短縮している可能性があるので注意が必要です。
人工骨頭置換術
人工骨頭置換術は骨折した骨を人工金属に置換しているため、早期からの荷重訓練が期待出来ます。
しかし、術侵襲による疼痛が生じやすいです。
また、前方・後方アプローチそれぞれに従って、特に早期では脱臼肢位に注意が必要です。
前側侵入:伸展・内転・外旋
後方侵入:屈曲・内転・内旋
画像の見方
①アライメント:骨折線と転位の有無でGarden分類を評価
②骨盤前後傾:骨盤腔の見え方から確認。骨盤腔が円形に見える場合は骨盤前傾位、楕円に見える場合は骨盤後傾位
③骨盤回旋の偏位:閉鎖孔から骨盤回旋位の確認。閉鎖孔の見え方に左右差がある場合、見え方が小さい方への骨盤回旋位(右閉鎖孔が小さい場合、右回旋位)
①人工骨頭の挿入状況:頸体角に左右差は無いか
②ステム周辺の骨皮質の厚み:骨皮質の脆弱性は無いか、骨粗鬆症の有している場合は脆弱している可能性があり運動療法時には注意
③ステムの荷重ベクトル:臼蓋中心に向かっているのかどうか…(荷重を受けるアライメントが良好か)
④臼蓋が人工骨頭を覆っているのか:臼蓋の大きさと人工骨頭の被覆状況を確認
⑤閉鎖孔の大きさ・骨盤腔の見え方:骨盤の回旋位・前後傾を確認
⑥脚長差:左右の坐骨結節を結んだ平行線の垂直線と小転子までの距離に左右差が無いのか?
小転子の見え方:小さく見えると股関節内旋位、大きく見えると股関節外旋位
画像から考えるリスク
骨接合術の場合
基本的には術後の経過に伴い医師の判断で部分荷重~全荷重が許可されます。
大腿骨頸部骨折は内側大腿回旋動脈の損傷を併発することが多く、骨頭壊死が生じやすいので荷重量を増やす際には疼痛の内範囲で行っていきます。
疼痛が残存し荷重量を増やすことが困難な場合は、適宜画像を確認し、骨頭壊死や骨癒合遷延化を疑います。
上記の問題やその他の問題を認める場合は、一度医師と相談しリハビリプログラムを再検討することが大切です。
またスクリュー固定は回旋ストレスに弱く、早期からの股関節内外旋運動のストレッチや筋力強化運動は控えるべきです。
その為、まずは組織に強い負荷のかかるストレッチや筋力強化運動ではなく自動運動から始めることが大切です。
人工骨頭置換術の場合
人工骨頭置換術後の一番のリスクは脱臼です。
特に術後早期は、術中の安定角度を超えるような肢位をとらないように体位変換や起居・異常などの生活動作に注意が必要です。
手術侵襲方向は必ず確認します。
また、骨盤アライメントを骨盤腔や閉鎖孔から確認し、小転子の見え方から股関節内外旋変位を確認します。
後方侵襲であり、骨盤前傾位から股関節屈曲位であり、小転子が小さく見えることから股関節内旋位となっていた場合にはより後方への脱臼リスクが高いので注意が必要です。
理学療法
骨接合術のスクリュー固定では、まず部分荷重から始め、第に全荷重へ移行します。
それに対して、人工骨頭置換術ではセメント・セメントレスの両方で早期から全荷重が可能な場合が多いです。
大腿骨頸部骨折は高齢者に多いため、廃用や認知症の予防のために早期から活動量を確保出来る人工骨頭置換術が行われることが多いです。
しかし、その場合脱臼リスクが伴うので入院前の生活方法を聴取し生活動作全般の練習を行っていくことが必要です。
場合によっては、住宅改修や福祉用具の使用、家族指導などを行い脱臼の危険がないような物的・人的環境を整えていく必要があります。
参考書籍
今回は下の書籍を参考大腿骨頸部骨折の画像の見方をお伝えしました。
下の書籍は運動器画像の見方とリハビリで意識する点などが詳しく書かれておりおススメの書籍です。
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