大腿骨骨幹部骨折は受傷機転が小児・成人・高齢者で大きく異なります。
小児では骨の弾力性があり、強い外力で生じることは稀です。
小児で大腿骨骨幹部骨折が生じる場合は、交通事故や高い所からの転落などが多い傾向です。
成人では小児に比べると骨の弾力性に劣るものの、大腿骨骨幹部骨折は稀であり、交通事故や転落などの極めて強い外力(高エネルギー外傷)が多いです。
大腿骨骨幹部骨折は高エネルギー外傷により他の部位の損傷や骨折した骨の転位による周辺軟部組織が想定できます。
高齢者の骨折では転倒などの軽微な外力によっても生じやすく、持病を患っていることも多いためOpe前に全身の検査を行った上でOpe適応を評価します。
大腿骨骨幹部骨折は強い外力及び筋の付着部位と走行から近位骨は外側、遠位骨は前方に転移しやすい傾向です。
近位骨:外側
遠位骨:前方
画像所見から受傷時の転移の大きさを確認し、骨だけでなく周辺組織の軟部組織の損傷を予測しリハを進めることが大切になってきます。
また、大腿骨骨幹部骨折は強い外力によって生じることが多いため、解放骨折例も決して少なくなく、2次的な感染の危険性も配慮します。
治療方法
小児では骨の癒合が早く、多少の変形は矯正されることが多いので牽引療法やギプス固定などの保存療法が選択されることが多いです。
しかし、10歳以降では自家矯正力が働きにくく特に成人以降では拘縮や長期臥床による廃用症候群を予防する為に手術療法が選択されます。
手術療法はプレート固定や髄内釘・横止めスクリューを用いること方法があります。
プレート固定は手術侵襲範囲が大きくなりやすく、負担がかかりやすいため髄内釘を用いる方法が多くみられます。
大腿骨骨幹部骨折の手術療法後は関節可動域運動や筋力強化運動は早期から行うことが出来ますが、荷重を加えた歩行訓練などは遅くなるため、免荷により生じる廃用症候群予防や残存機能の維持改善が重要となります。
画像の見方
大腿骨骨幹部骨折に転移を伴う横骨折です。
転位が大きく、骨折した骨の転位により周辺の軟部組織の損傷が予測されます。
周辺軟部組織の損傷 | 転位を伴う骨折により大腿四頭筋や内転筋・ハムストリングスの損傷が考えられ、皮下出血が多いことが考えられます。癒着や瘢痕化、脂肪塞栓などを考慮しリハビリを行います。 |
整復法 | 髄内釘固定に対して横止めスクリューが行われているのか確認します。 横止めスクリューは骨の回旋予防の為に行われますが、過度の回旋は骨癒合を妨げてしまうため注意が必要です。プレート固定は手術侵襲が大きく軟部組織の損傷が大きいため、疼痛や癒着などの増悪・出現防止に注意します。 |
リハビリテーション | 大腿骨の連続性が断たれていること・周辺の損傷により、立て膝やベッドから下肢をおろす動作は出来なくなっていることが多いため、注意が必要です。また、膝関節伸展不全や可動域制限、術部の疼痛が生じやすいので注意が必要です。 |
※脂肪塞栓:長管骨の骨折・軟部組織の広範な挫滅を伴う外傷の場合に脂肪組織が遊離し、血管又はリンパ管内に流入して肺や脳の血流障害を来すことを言います。
画像から考えるリスク
骨折による骨の転位があったことで、血種や軟部組織の損傷が生じ、大腿四頭筋を主とした筋に癒着や瘢痕化が起こりやすく、受傷後72時間以内では脂肪塞栓や肺塞栓に注意が必要です。
受傷後、初めて離床する際はバイタルサインや自覚症状の確認を行いながらリハビリを進めていきます。
大腿骨骨幹部骨折は軟部組織の損傷を併発しやすいため、離床の際には下肢を自分で動かせるか確認したうえでトイレや免荷での立位・歩行を行っていきます。
離床の際には股関節の回旋運動は髄内釘にストレスがかかるため、早期には積極的に行わないようにします。
リハビリテーション
術後は大骨の創部から膝関節上まで疼痛・腫脹・熱感といった炎症症状が生じるため、アイシング・挙上・弾性包帯による圧迫などのRICE処置を行います。
股関節・膝関節の可動性を得る為にも、早期から関節可動域訓練や筋力強化運動を中心にリハビリを行っていきます。
大腿四頭筋の癒着により膝関節屈曲制限や膝伸展不全が生じることがあるため治療を行っていくことが大切です。
患側下肢の荷重は受傷時の骨折の状態や術後の状態、整復・固定方法により変わってきます。
大腿骨骨幹部骨折では特に荷重量を増加した際に、X線画像や疼痛増悪・脚長差を確認していきます。
髄内釘の術侵入を確認することも大切であり、髄内釘の術侵入が股関節側であれば外転筋が、膝関節側であれば膝蓋靭帯や脂肪体に疼痛が生じることも考えておきます。
受傷・術後に癒着が残存し膝関節の屈曲可動域制限の治療に難渋する場合は、Drの判断で癒着剥離が行われることがあります。
癒着剥離が行われる場合、再癒着を避ける為に早期から可動域改善に努めますが、疼痛や腫脹も再び出現・増悪してしまいますので、数時間ごとに目標角度を改善出来るように努めていきます。
参考書籍
今回は下の書籍を参考大腿骨転子部骨折の画像の見方をお伝えしました。
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