【医療者向け】理学療法士が伝える!正常歩行に必要な筋力について

【医療者向け】歩行

歩行というものは多くの方が当たり前に行っている移動形態です。

入院患者でも多くの方がまず最初に歩行の再獲得を望みます。

歩行を行う為には、必要最低限の身体機能が必要であり、その中でも筋力が不十分であると跛行の出現につながり、歩行の実用性は失われてしまいます。

ここでは正常歩行に必要な筋力をお伝えしていきます。

歩行周期

歩行というものは相があり、周知の通りそれぞれの相によって必要な個所の筋力は異なります。

歩行周期というものは…8つの相に分かれます。

初期接地【Initial Contact:IC】

ー足がついた瞬間

荷重反応期(応答期)【Loading Response:LR】

ー足がついた瞬間~対側下肢が床から離れる

立脚中期【Mid Stance:MSt】

ー対側下肢が床から離れる~踵が床から離れる

立脚終期【Terminal Stance:TSt】

ー踵が床から離れる~対側下肢接地

前遊脚期【Pre-Swing:PSw】

ー対側下肢接地~つま先が床から離れる

遊脚前期【Initial Swing:ISw】

ーつま先が床から離れる~両下腿交差

遊脚中期【Mid Swing:MSw】

ー両下腿交差~下腿が垂直になる

遊脚終期【Terminal Swing:TSw】

ー下腿が垂直になる~踵が接地する

初期接地【IC】

初期接地に必要な代表の筋力

体重当たりの筋力・・・㎏/体重×100=%

股関節屈曲 股関節伸展 股関節外転 膝関節屈曲 膝関節伸展 足関節背屈 足関節底屈
50% 30%

IC時に働く股関節伸展筋

・大殿筋

・大腿二頭筋

・半腱様筋

・半膜様筋

ー踵接地から立脚中期まで体重を支え、股関節を伸展させる

ー足部全面が床に接地している時は膝関節伸展を補助する

IC時に働く膝関節屈曲筋

・大腿二頭筋

・半腱様筋

・半膜様筋

ー踵接地から立脚中期まで体重を支え、股関節を伸展させる

筋力低下で出現する代表的な跛行

・ジャックナイフ現象:踵接地時の体幹をの急激な前方偏移

荷重反応期(応答期)【LR】

荷重反応期(応答期)に必要な筋力

股関節屈曲 股関節伸展 股関節外転 膝関節屈曲 膝関節伸展 足関節背屈 足関節底屈
60% 70% 40% 20%

LR時に働く股関節伸展筋

・大殿筋

・大腿二頭筋

・半腱様筋

・半膜様筋

ー踵接地から立脚中期まで体重を支え、股関節を伸展させる

ー足部全面が床に接地している時は膝関節伸展を補助する

LR時に働く股関節外転筋

・中殿筋

・小殿筋

・大腿筋膜張筋

ー前額面上の骨盤の制御・対側下肢の過剰な内転防止

LR時に働く膝関節伸展筋

・大腿直筋

・内側広筋

・外側広筋

ー遠心性活動により下肢による体重を受ける速度を制御(衝撃吸収)し、過度の膝関節屈曲を防ぐ

LR時に働く足関節背屈筋

・前脛骨筋

・長趾伸筋

・長母指伸筋

ー踵骨後部に加わる体重により乗じる他動的足関節底屈力を減速させる

筋力低下で出現する代表的な跛行

・膝折れ:過度の膝関節屈曲

・トレンデレンブルグ現象対側骨盤の落下・対側下肢の内転接地

・フットスラップ現象:踵接地後に急激に足部を床に接地させる

立脚中期【MSt】

立脚中期に必要な筋力

股関節屈曲 股関節伸展 股関節外転 膝関節屈曲 膝関節伸展 足関節背屈 足関節底屈
20% 60% 30% 50%

MSt時に働く股関節伸展筋

・大殿筋

ー股関節を伸展させ、体重心を上方へ移動させる

MSt時に働く股関節外転筋

・中殿筋

・小殿筋

・大腿筋膜張筋

ー前額面上の骨盤の制御・対側下肢の過剰な内転防止

MSw時に働く膝関節伸展

・内側広筋

・外側広筋

ー膝関節を伸展させ、体重心を上方へ移動させる

MSw時に働く足関節底屈

・下腿三頭筋

ー遠心性収縮で距骨に対して脛骨・腓骨が前方に動くのを制御

筋力低下で出現する代表的な跛行

・トレンデレンブルグ現象:対側骨盤の落下・対側下肢の内転接地

立脚終期【TSt】

立脚終期に必要な筋力

股関節屈曲 股関節伸展 股関節外転 膝関節屈曲 膝関節伸展 足関節背屈 足関節底屈
60% 70% 30% 140%

TSt時に働く股関節屈曲筋

・腸腰筋

・(大腿直筋)

ー立脚後期下肢側の床反力から生じる体幹伸展(股関節伸展)を遠心性収縮で制御

TSt時に働く股関節外転筋

・中殿筋

・小殿筋

・(大腿筋膜張筋)

ー前額面上の骨盤の制御

TSt時に働く膝関節伸展筋

・大腿直筋

ー立脚後期下肢側の床反力から生じる体幹伸展(股関節伸展)を遠心性収縮で制御

ー立脚後期下肢側の床反力から生じる膝関節屈曲を遠心性収縮で制御

TSt時に働く足関節底屈筋

・下腿三頭筋

ー遠心性収縮で距骨に対して脛骨・腓骨が前方に動くのを制御

筋力低下で出現する代表的な跛行

・膝折れ:過度の膝関節屈曲

・トレンデレンブルグ現象:対側骨盤の落下

前遊脚期【PSw】

前遊脚期に必要な筋力

股関節屈曲 股関節伸展 股関節外転 膝関節屈曲 膝関節伸展 足関節背屈 足関節底屈
50% 60% 130%

PSW時に働く股関節屈曲筋

・(腸腰筋)

・大腿直筋

ー立脚後期下肢側の床反力から生じる体幹伸展(股関節伸展)を遠心性収縮で制御

ー大腿直筋は立脚後期下肢側の床反力から生じる膝関節屈曲を遠心性収縮で制御

PSW時に働く股関節外転筋

・中殿筋

・小殿筋

ー前額面上の骨盤の制御

PSW時に働く足関節底屈筋

・下腿三頭筋

ー求心性収縮により下肢を蹴り出す(プッシュオフ)

筋力低下で出現する代表的な跛行

・膝折れ:過度の膝関節屈曲

・トレンデレンブルグ現象:対側骨盤の落下

遊脚初期【ISw】

遊脚初期に必要な筋力

股関節屈曲 股関節伸展 股関節外転 膝関節屈曲 膝関節伸展 足関節背屈 足関節底屈
20%

ISw時に働く股関節屈曲筋

・腸腰筋

ー遊脚開始時の下肢の振り出し

遊脚中期【MSw】

遊脚中期に必要な筋力

股関節屈曲 股関節伸展 股関節外転 膝関節屈曲 膝関節伸展 足関節背屈 足関節底屈
5%

MSw時に働く股関節屈曲筋

・腸腰筋

ー下肢の振り出し継続の補助

遊脚終期【TSw】

遊脚終期に必要な筋力

股関節屈曲 股関節伸展 股関節外転 膝関節屈曲 膝関節伸展 足関節背屈 足関節底屈
50% 30%

TSw時に働く股関節伸展筋

・大殿筋

・大腿二頭筋

・半腱様筋

・半膜様筋

ー振り出した下肢の減速・踵接地の際の体重を支える準備

TSw時に働く膝関節屈曲筋

・大腿二頭筋

・半腱様筋

・半膜様筋

ー振り出した下肢の膝関節伸展減速

まとめ

全歩行周期で必要な最大筋力

股関節屈曲 股関節伸展 股関節外転 膝関節屈曲 膝関節伸展 足関節背屈 足関節底屈
60% 60% 70% 30% 40% 20% 140%

ここまで歩行周期別に必要な体重当たりの筋力(㎏/体重=%)をお伝えしてきました。

上記のまとめ表の体重当たりの筋力が備わっていないと跛行が出てしまっても仕方ないといえます。

跛行が出てしまい実用性の欠けた歩行になっている場合、まず筋力は十分に備わっているのか、それ以外なのか評価してみてはいかがでしょうか?

筋力の評価を正確に行うにはMMTではなく、HHDなどの筋力測定装置を使用することをオススメします。

HHDで測った筋力から体重を考慮して計算し、理学療法プログラムを考察するとよりより治療計画が作成できると思います。

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