【リハに役立つ】理学療法士が伝える筋委縮まとめ

【医療者向け】基礎

筋委縮とは骨格筋の容積がなんらかの原因で縮小した状態と定義でき、その発生にも身体の不活動が大きく影響しいています。

不活動による筋委縮は廃用性緊縮と言われます。

実際の臨床においてギプスやスプリントなどによって関節が固定されたり、下肢の免荷状態を強いられたりなどによって一部の骨格筋が不活動状態となって生じる場合と、疾病・術後のベッドサイドの生活による全身の骨格筋が不活動状態となり生じる場合があります。

このような廃用性筋委縮とは、筋線維サイズ・筋線維数の減少に伴う筋容積の減少のみならず、筋原線維の微細構造の変化といった病態を呈しています。

廃用性筋委縮の病態

筋容積の減少

健康な成人を20日間ベッドサイドで過ごして頂き下肢筋群の横断面積の変化を調べた研究では腓腹筋・ヒラメ筋には横断面積が減少したが、前脛骨筋は有意に減少しなかったとされています。

さらに健康成人を35日間ベッドサイドで過ごしてもらうと下腿三頭筋の横断面積の減少に加えて大腿四頭筋・殿筋の横断面積が減少しているようです。

筋の横断面積の減少量は下腿三頭筋が最も著名であり、次いで大腿四頭筋・殿筋の順であったとされています。

このことから廃用性筋委縮による筋容積の減少は、抗重力筋においてより顕著に出るということであり、筋容積の減少は筋によって異なるということです。

 

筋線維サイズの減少

廃用性筋委縮の発生による筋容積の減少は筋線維サイズの減少に由来するところが大きいです。

また、人を対象とした実験では筋線維サイズの減少はタイプⅡ線維・タイプⅠ線維のどちらかであるかは一定の見解は得られていません。

※ラット実験ではタイプⅡ線維がタイプⅠ線維よりも筋委縮の程度は著しいとされています。

筋線維数の減少

廃用性筋委縮では筋線維サイズの減少が認められると言われていたが、筋線維数が減少するかは多く議論がなされていました。

今では廃用性筋委縮では筋線維数の減少も引き起こす見解が増えてきています。

つまり筋容積の減少は筋線維サイズの減少に加えて、筋線維の数そのものが減少していることも影響しているということです。

微細構造の変化

廃用性筋委縮が発生すると下記のような筋原線維の微細構造に変化が生じます。

・Z帯の断裂や蛇行

・筋原線維の融解、配列異常

・ミトコンドリアの縮小や膨化

・空胞化

上記のような微細な構造の変化は筋節が正常に機能しない可能性があり、筋収縮機能そのものが低下していると考えられます。

 

廃用性筋委縮の発生メカニズム

筋核数の変化

筋核数と筋線維サイズ・筋線維数は関連が強く、廃用性筋委縮を呈した骨格筋では筋核数の減少が認められます。

筋核数の減少は骨格筋の不活動によって筋核や筋衛星細胞がアポトーシスを起こした結果生じます。

これにより筋線維サイズの減少・筋線維数の減少が生じ、廃用性筋委縮発生のメカニズムの要因となります。

筋構成タンパク質の変化

ミオシンやアクチンなどの筋を構成するタンパク質は常に代謝回転しており、その合成と分解は通常の生活ではバランスが保たれています。

しかし、骨格筋が不活動状態になると筋構成タンパク質の合成低下ならび分解構成が進み、筋構成タンパク質が損失し筋委縮が生じます。

不活動状態となった筋は約3日後まで筋タンパク質合成が低下し、分解亢進は約2週間後まで続くという報告があります。

【まとめ】
廃用性筋委縮の発生メカニズムには筋構成タンパク質の合成低下・分解亢進が進むことが要因となっており、筋構成タンパク質の分解亢進は特に筋委縮の進行に影響しているといえます。

ここからは少し内容が難しくなります。

 

筋構成タンパク質の合成低下のメカニズム

筋構成タンパク質の合成低下は、アミノ酸の新生ポリペプチド鎖が正しく折り畳まれないこと、その伸長が遅延することが影響とされており、骨格筋の不活動状態と関係しています。

詳しくみていくと…

骨格筋の不活動状態は骨格筋のストレスタンパク質であるHSP(heart shock protein)70の発現が減少することと関係しており、HSP70 にはアミノ酸の新生ポリペプチド鎖の正しい折り畳みや伸張などを補助する分子シャベロン機能があるため、不活動状態は結果的に筋構成タンパク質の合成低下を引き起こします。

 

筋構成タンパク質の分解亢進のメカニズム

筋構成タンパク質の分解亢進はリソソーム系・カルパイン系・ユビキチン-プロテアソーム系などが関わっていますが、その中でもリソソーム系・カルパイン系を具体的にお伝えしていきます。

 

リソソーム系

リソソームとは細胞内にあり小器官の1つであり不要になった蛋白質を分解する機能があります。

タンパク質分解酵素であるカテプシンB・カテプシンDは筋委縮に伴い増加し、これらはリソソームに含まれています。

またカテプシンの活性化は神経系の影響を受けている可能性が高いとされています。

 

カルパイン系

細胞内のCa濃度は0.1µM程度に維持されていますが、骨格筋が不活動状態になると筋小胞体の機能低下から細胞内のCa濃度が上昇し、カルパイン(Ca依存性のたんぱく質分解酵素)が活性化します。

カルパインはZ帯を構成するタンパク質を選択的に分解しZ帯の消失を引き起こし、筋節構造は崩壊します。

ここまで読んで頂きありがとうございました。