【理学療法士が伝える】痛みを制御するシステムー下降性疼痛抑制系

【医療者向け】痛み

痛みは情動を言われています。

痛みは痛覚刺激に対する情動であり、同じ痛覚刺激であっても感じる情動は人それぞれです。

「痛みに過敏な人」・「痛みをあまり気にしない人」では痛みの感じ方だけでなく、痛覚刺激そのものの違いが生じます。

痛みに対する情動(嫌悪感など)・認知(捉え方など)は下降性疼痛抑制系というシステムの変化をもたらすことで痛覚刺激の違いが生じます。

ここでは痛みをコントロールする為に必要な下降性疼痛抑制系というものをお伝えします。

下降性疼痛抑制系とは

痛み刺激は後根神経節の小型ニューロンと外側・内側脊髄視床路という痛覚伝達系により上位脳に伝達されます。

その内、内側脊髄視床路は前帯状回・島皮質・偏桃体などの情動に関するニューロンと繋がり痛みの情動に強く関わります。

前帯状回・島皮質・偏桃体などの興奮は視床下部・中脳中心灰白質・背外側被蓋部・吻外側延髄腹内側部などに伝わり下降性疼痛抑制系の活動に影響を与えます。

痛覚は一次侵害受容ニューロン~(脊髄後角でシナプス結合)~二次侵害受容ニューロン~(視床)~三次侵害受容ニューロンを経由して脳に伝わります。

下降性疼痛抑制系下は、脳幹から下降する抑制性ニューロンによって脊髄後角での一次侵害受容ニューロンと二次侵害受容ニューロン間の脊髄後角でのシナプス伝達を抑制し、痛みの情報伝達をブロックします。

そしてこの抑制系ニューロンは以下の2つに分けられます。

・ノルアドレナリンを伝達物質とするノルアドレナリン系

・セロトニンを伝達物質とするセロトニン系

ノルアドレナリン系

ノルアドレナリン系は…

・中脳の中脳中心灰白質(PAG:periaqueductal grey)
・橋の橋中脳背外側被蓋部(DLPT:dorsolateral pontomesencephalic tegmentum)
・青斑核(LC:locus ceruleus)

上記の3つの中継し、脊髄の後外側索を下降して脊髄後角に至ります。

セロトニン系

セロトニン系は、

・中脳の中脳中心灰白質
・延髄の吻外側延髄腹内側部(PVM:rostoroventromedial medulla)
・大縫線核(NRM:nucleus raphe magnus)
・巨大細胞網様核(NRGC:nucleus reticularis gigantocellularis)
・傍巨大細胞網様核(NRPG:nucleus reticularis paragigantocellularis)

上記を中継し、脊髄の後外側索を下降して脊髄後角にいたります。

下降性疼痛抑制系の開始ニューロン【中脳中心灰白質】

下降性疼痛抑制系のノルアドレナリン系・セロトニン系のいずれも中脳中心灰白質から始まります

この中脳中心灰白質は以下の2つに分けられます。

背外側中脳中心灰白質

背外側中脳中心灰白質はストレス刺激に対して積極的に対処する情動行為と関与し、逃避行動・防御反応を持っており、急性痛体表痛(皮膚痛・筋肉痛)に関係すると言われています。

腹外側中脳中心灰白質

腹外側中脳中心灰白質はストレス刺激に対して消極的に反応する情動行動と関与し、情動反応・交感神経活動の減少・フリージング(じっとして動かなくなる)・外部刺激に対する反応性が減少します。

以上のことから慢性痛深部痛内臓痛に関係する可能性があります。

薬物療法による下降性疼痛抑制系の賦活

モルヒネオピオイドは中脳中心灰白質を刺激し下降性疼痛抑制系を賦活させます。

その為、モルヒネやオピオイドの分泌を促進させたり、補充する薬物療法は下降性疼痛抑制系を賦活させ痛みを軽減させます。

また、下記の薬物は下降性疼痛抑制系の神経伝達物質の再取り込みを阻害するものであり、下降性疼痛抑制系の賦活につながります。

・抗うつ薬の選択的セロトニン再取り込み薬阻害薬(SSRI:selective serotonin reuptake inhibitor)

・セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI:serotonin noradrenaline reuptake inhibitor)

下降性疼痛抑制系を賦活させるには…

下降性疼痛抑制系は、薬物を使用せずとも行動や考え方によって賦活させることが出来ます。

しかし、その逆に抑制してしまうこともあるので注意が必要です。

下降性疼痛抑制系は、前帯状回島皮質偏桃体などの認識情動に関わる脳領域の活動の影響を受けます。

下降性疼痛抑制系は前帯状回島皮質偏桃体などの脳領域や運動野の活動をコントロールすることで、賦活させることが出来ます。

下降性疼痛抑制系の賦活:理学療法内容

ホットパックなどの温熱療法を患者が「気持ちいい」と感じる程度で行うとリラクセーション効果があり、痛みの情動関連部位の1つであり前帯状回の活動を抑制させます。その結果、下降性疼痛抑制系を賦活させることが出来ます。

ストレッチや関節可動域運動・歩行などの実運動などは筋・腱などへの刺激になり運動ー感覚野の賦活につながります。その結果、痛み出現時の前帯状回の活動を抑制させることに繋がります。

ーまた運動療法においてもペダリングなどの周期的な運動はセロトニンを活性化させ、前帯状回の活動を抑えることが出来ます。

セロトニンは不安や緊張をコントロールする神経伝達物質である為、不安や緊張の強い人はより効果が期待できると思われます。

ー運動療法を行っていく中で、目標を持って課題志向型の運動療法を行い目標を達成していく過程を経験することは、ドーパミンの活性化に繋がり鎮痛作用をもたらします。

慢性腰痛患者では一次運動野に電気刺激を入れても疼痛閾値に差を認めない報告もあり、このような患者ではより効果的に働くことが期待できます。

●組織に損傷は見られないが、痛みによりストレッチや実運動などが困難な場合、振動刺激(バイブレーション)を腱器官に与えることで運動ー感覚野には実運動時と同等の脳活動を引き出すことが出来るということが分かっています。

●下降性疼痛抑制系を賦活させる治療としてTENSはかなり有名です。TENSは脳内麻薬と言われているエンドルフィンエンケファリンなどの分泌を促進させます。エンドルフィン・エンケファリンは別名オピオイドとも呼ばれいます。エンドルフィン・エンケファリンの分泌を促進させることで、下降性疼痛抑制系を賦活させ鎮痛作用をもたらします。

下降性疼痛抑制系:考え方

痛みを自分で制御しようとする試み(考え)そのものは、腹外側前頭前野の活動の賦活につながり下降性疼痛抑制系の賦活に繋がります。

痛みをコントロールしようとするツールとして痛み日記は有名なツールです。

痛みの変化・その時の出来事・感情・行動を書き残すことで、どのようなタイミングで痛みが生じ、どのようにすれば痛みを感じないのか・又は痛みが軽減するのかを記録し痛みを客観視することで認識を改めるきっかけを作ることが出来ます。

痛みを感じない・痛みを感じにくい方法があれば、その方法を活用しますので痛みを主体的もコントロールしようとすることにつながります。

参考書籍

痛みについて詳細に記載している書籍です。

内容はやや難しいですが、痛みについてより詳しく知りたい方にはオススメです!!

痛みの根本的なことを勉強がしたい方はぜひ読んでみて下さい。

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ここまで読んで頂きありがとうございました。