【理学療法士が伝える】痛みの抹消性機構と感作と悪循環

【医療者向け】痛み

痛みは放っておくと感作を起こし慢性痛に移行します。

その為、治療対象の痛みはなるべく早く治療することが望ましいと言えます。

組織が損傷されると炎症反応が生じ痛みが発生しますが、この痛みは損傷を受けた組織・周辺組織に原因がある急性痛です。

この痛みが過度な場合や損傷・炎症が繰り返し生じることで痛みが長期化すると神経系の感作可塑的変化を起こし慢性痛に移行してしまいます。

神経系の感作・可塑的変化の下記に作成してますので参考にして下さい!

その為、慢性痛に移行する前に末梢組織由来の痛みは的確に評価し治療することがが重要です。

一次痛と二次痛

皮膚・靭帯・骨格筋などが損傷を受けたり、過度に伸張ストレスなどのメカニカルストレスが加わり断裂を起こした直後は、よく「刺すような鋭い痛み」が生じると表現されます。

この「刺すような鋭い痛み」は一次痛と呼ばれ、一次痛を伝達する神経の受容器は局所にある為、一次痛は痛みの局在(痛みの識別)に優れており、組織に加わった機械的刺激の強度に依存した痛みが生じます。

一次痛は高閾値機械受容器(侵害受容器)が受け取り、Aδ線維(速い伝導速度)によって一次侵害受容ニューロンとして脊髄後角を経由し外側脊髄視床路として大脳皮質の体性感覚野痛覚として伝えられます。

二次痛は機械的刺激などをポリモーダル受容器が受け取り、C線維(遅い伝導速度)によって脊髄後角を経由し内側脊髄視床路として情動領域として有名な偏桃体や前帯状回・島皮質、自律神経に関わる視床下部、記憶に海馬などを経由し体性感覚野に伝えられる。

その為、二次痛は痛みの情動記憶にも関わり、自律神経にも影響を与えるということです。

神経性の炎症とは…?

二次痛の発生と同じ時期に組織損傷部位には発赤がみられ、その損傷部位とその周辺部位には腫脹・発赤部位が拡大していきます。

痛みも腫脹・発赤に伴い広がっていきます。

この反応は神経性炎症によるものであり、ポリモーダル受容器の特性を持つ一次侵害受容ニューロンが上位中枢へ痛覚を伝導する過程で軸索反射後根反射を生じさせます。

軸索反射・後根反射により神経終末からサブスタンスP(SP)カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が放出されます。

SPには血管透過性亢進作用、CGRPには血管拡張作用があり損傷組織の回復を図る為に損傷部位への血流を促します。

しかし、SPやCGRPそのものがポリモーダル受容器を刺激する為、痛みが損傷部位周辺へ広がってしまいます。

また、SPやCGRPには肥満細胞を刺激し、刺激された肥満細胞からヒスタミンが遊離され、血管拡張・血管透過性亢進が促され発赤や腫脹はより一層著しくなります。

SPやCGRPには好中球・マクロファージ、リンパ球などを活性化させ、線維芽細胞や平滑筋の活動も調節しています。

SPやCGRPは組織の回復には欠かせないものであり、神経性炎症は組織の治癒に不可欠なものといえます。

糖尿病患者のような末梢神経障害をきたしている患者様ではこの神経性炎症の反応が乏しくなることが予想され、治癒に時間がかかる理由の一因といえます。

炎症による痛みが生じる理由とは…?

組織損傷により炎症が生じると炎症サイトカインなどの化学物質由来の痛みが生じます。

このような痛みはほぼ全ての刺激に反応するポリモーダル受容器が主に反応する為、痛みが持続します。

痛みが生じる化学物質には…

・損傷を受けた細胞:K⁺・H⁺・ATP

・血小板:セロトニン

・肥満細胞:ヒスタミン

などがあり、ポリモーダル受容器を刺激します。

また、血液凝固が生じるとブラジキニン(BK)が産生され、ブラジキニンがポリモーダル受容器を刺激し痛みが生じます。

ブラジキニンが産生されると、プロスタグラジン(PG)が合成されます。

プロスタグラジンそのものには疼痛作用はありませんが、ブラジキニンが存在することで疼痛を増強する作用を発揮します。

ここまで紹介した、セロトニン・ヒスタミン・ブラジキニン・プロスタグラジンには血管透過性亢進や血管拡張作用があります。

ここまでお伝えしたサブスタンスP・カルシトニン遺伝子関連ペプチド・セロトニン・ヒスタミン・ブラジキニン・プロスタグラジンなどの化学物質が、血管拡張・血管透過性亢進・疼痛作用を発揮する為、炎症の4徴候の発赤・発熱・腫脹・疼痛が出現してきます。

組織損傷から30~60分経過すると、白血球である好中球・リンパ球・マクロファージなどが反応するようになります。

特にマクロファージブラジキニンと反応し、インターロイキンなどの炎症性サイトカインを放出するようになり、この炎症性サイトカインがポリモーダル受容器を刺激し痛みが出現します。

また、線維芽細胞はブラジキニンとインターロイキンの作用によってプロスタグラジンと神経成長因子を放出するようになります。

この神経成長因子はポリモーダル受容器を刺激し疼痛を発生させるだけでなく、神経線維に取り込まれて後根神経節内の神経細胞体に運ばれることで、神経線維の細胞体におけるサブスタンスPや遺伝子関連ペプチド・TRPV1受容体などの発現増加に繋がります。

この結果により、痛みの増強・持続に繋がってしまいます。

炎症による痛みの感作

痛みの感作とは同じ刺激に対する痛みの反応性が増強した状態であり末梢性感作中枢性感作がある。

中枢性感作に関しては以下の記事を参照して下さい!

末梢性感作には、

1:TRPV1受容体の変化

2:プロスタグラジンの変化

3:侵害受容器の変化

などがあり痛みの感作を生じさせ、痛みの増悪を招きます。

TRPV1受容体の変化

組織が損傷し炎症反応が生じるとその周辺部位にブラジキニンなどの化学物質が放出されることはお伝えしました。

このような化学物質が存在していると、43℃以上の熱刺激で活性化するTRPV1受容体の閾値温度が下がり、36℃程度の体温に近い温度の領域でも活性化するようになり、痛みを感じるようになります。

炎症反応による痛みは化学物質の放出によるTRPV1受容体の閾値低下のよる過度な活性化が関わっているといえます。

プロスタグランジンの変化

ブラジキニンの産生により合成されるプロスタグラジンは疼痛増強作用を持っておりポリモーダル受容器の閾値を低下させます。

その為、ブラジキニンやサブスタンスPなどの化学物質によるポリモーダル受容器の反応が活性化させ、痛みの感作を引き起こします。

炎症による痛みの治療薬として有名なNSAIDsはプロスタグラジンを合成する為の物質のを阻害し、プロスタグラジンの合成を抑制させます。

侵害受容器の変化

皮膚・骨格筋・関節・内臓などの身体の多くの組織には通常時は活性化しない非活動性侵害受容器が存在するとされています。

その中でも関節内の侵害受容器の約1/3は非活動性侵害受容器であると言われています。

この非活動性侵害受容器は組織損傷による化学物質や組織の低酸素状態によって活性化すると言われています。

非活動性受容器は一度活性化すると自発放電頻度が増加し、刺激に対する閾値が低下します。

このような非活動性受容器の性質変化により痛みの感作が生じています。

痛みの悪循環

痛みが生じると、痛みから逃避するために脊髄反射レベルで屈曲反射が生じます。

この屈曲反射は「画鋲などの鋭い物を踏むと、踏んだ瞬間に無意識に足を上げる」といったような反応です。

屈曲反射は一次侵害受容ニューロン(主にAδ線維)が興奮し、脊髄後角で介在ニューロンを介して屈曲筋のα運動ニューロンに伝えられます。

この屈曲反射は多シナプス性の経路から成り立ち、反応は一過性でなく、しばらくの間持続するといった特徴があります。

その為、組織が損傷しい痛みが生じている間は、α運動ニューロンも刺激され筋収縮が惹起されます。

また、同時にγ運動ニューロンも刺激されるため筋紡錘の感度亢進に繋がり、伸張刺激に対する反応性が亢進します。

その為、有痛性疾患を患っている患者の多くが筋緊張亢進筋スパズムといった病態はこのメカニズムが関係していると思われます。

このメカニズムなどにより筋が持続的に収縮すると局所的に循環障害が起こり、一部の組織が低酸素状態になります。

この低酸素状態によりブラジキニンなどの化学物質が産生され痛みが生じます。

また、痛みにより交感神経の活動が活性化すると平滑筋や血管収縮が著明になり、さらなる循環障害に陥ります。

痛み➡筋の持続的な活動➡局所の循環障害➡新たに痛みが出現➡交感神経が興奮し、さらなる循環障害が発生➡循環障害が新たに痛みを増強させる➡痛みの増強(最初に戻る)

といった悪循環が生じますので、この痛みの悪循環は断ち切らないといけません。

また、筋の持続的な活動は関節の動きを阻害させることになり、組織の不活動に繋がり不活動性の痛みが発生する可能性があります。

まとめ

ここまでお伝えした炎症による痛みや外部からの持続的な侵害刺激による痛みは感作を生じさせ、痛みは悪循環を引き起こします。

痛みを最も治療しやすいタイミングは、他の身体の状態や精神状態などによって左右されますが痛みに限るならば、痛みが生じている瞬間と言えるのではないでしょうか?

つまり、痛みを的確にマネジメントし治療することが大切だということです。

参考書籍

本記事は下の書籍を参考にしたものです。

内容はやや難しいですが、痛みについてより詳しく知りたい方にはオススメです!!

痛みの根本的な勉強は治療を一から考察することに役立ち、臨床力を高めてくれます。

痛みのマネジメント力を高めたい方はぜひ読んでみて下さい。

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ここまで読んで頂きありがとうございました。

コメント

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