【PTが伝える!!】痛みと損傷組織の治療(炎症時期に基づいて)

【医療者向け】痛み

末梢組織が原因の疼痛として、臨床場面で多く目撃するのが組織損傷由来のものであり炎症反応があります。

組織損傷由来の末梢性の疼痛は長く続くと、神経性の可塑的変化を引き起こし慢性痛に移行します。

その為、痛みの治療として大切なポイントは【痛みを長引かせない】ことです。

組織が損傷すると…

・炎症期

・増殖期

・成熟期

といった過程を得て組織が修復されていきます。

リハビリテーションでは、組織の回復を促進する治療がたいせつですが、炎症時期によって適切な治療方法は異なります。

ここでは炎症時期に着目した治療についてお伝えしていきます。

炎症期の痛み・組織治療戦略

炎症期の身体的な変化は止血炎症であるが、リハビリテーションでは炎症に対して治療を行うことが多いです。

炎症の4徴候として発赤・腫脹・発熱・疼痛があるが、これらは組織が損傷することで生じるサブスタンスPやカルシトニン遺伝子関連ペプチドなどの化学物質の作用によって助長されます。

リハビリテーションでは、化学物質によって引き起こされる血管透過性亢進血管拡張といった血管反応を軽減させることが治療の大切なポイントになってきます。

具体的な方法としては寒冷療法が適応となってきます。

組織の損傷により炎症反応が生じている部分に寒冷療法を行うことは、血管の収縮を促すことで血流量低下・血管透過性低下を促します。

こうすることで、炎症反応に着目すると発赤・腫脹・発熱を抑えることが出来ます!

寒冷療法に加えて、患部を心臓より高くする(elevation)圧迫を加える(compression)を行うことは、さらに患部の血流量は低下するためより効果が期待できるようになります。

この方法は一般的にRICEと呼ばれる処置であり、妥当な方法と言えます。

RICE処置を行うことで損傷組織の血管透過性の低下をを生じさせ、血中内の痛みを生じさせる・助長させる化学物質が末梢組織内に侵入し、痛みの発生を抑えることが出来ます。

さらに寒冷療法は神経伝導速度を低下させるため、痛みを伝える神経伝導速度が低下し痛みの軽減につながります。

特に有髄線維であるAδ線維において効果が期待できる為、痛み(鋭痛)の軽減が見込めます。

痛みの神経伝導速度の低下により鎮痛効果に加えて、熱刺激によって痛みの反応を示すTRPV1受容体の活性化温度閾値が低下することによる鎮痛効果が期待出来ます。

寒冷療法以外においても超音波・レーザー・TENSなどがあげられます。

超音波療法は低刺激による非温熱作用が足関節捻挫の急性期の痛みを軽減させる効果を示した研究があるが、効果に違いが出ています。

しかし、非温熱療法はフォノフォレーシス効果があり、NSAIDsを配合した鎮痛・抗炎症塗布剤の効果を高める可能性が期待出来ます。

レーザーやTENSを末梢組織に行う事で下降性疼痛抑制系が賦活され。痛みが軽減することが分かっています。

増殖期の痛み・治療戦略

増殖期の身体的な変化は表皮における上皮化と真皮における肉芽組織形成血管新生です。

上皮化には新しいケラチノサイトの新陳代謝が必要で、これを促すリハビリテーションとしては温熱療法が挙げられます。

温熱療法は血管内皮細胞の活性化を促すことが分かっており、増殖期における血管新生の大きな役割を担っており毛細血管新生とネットワーク形成を促します。

肉芽組織の形成には酸素・栄養素の供給が不可欠であり、温熱療法を行うことで血流を促し二次的に肉芽組織形成を促すことが考えられます。

温熱療法は増殖期において身体の回復を促す効果が期待出来ますが、炎症期が終わってから増殖期が始まるわけではないので、増殖期と炎症期が合わさっている時期があります。

温熱療法を行うタイミングには注意が必要であり、臨床上苦慮します。

温熱療法を行うタイミングとして、「CRP・ESR」の血液検査数値を確認することが1つの目安になると思われます。

温熱療法以外においても超音波レーザー療法においても線維芽細胞を刺激することが分かっており、コラーゲン合成が活発になり肉芽組織形成が促されます。

成熟期の痛み・治療戦略

成熟期の身体的な変化は、【創全体を閉鎖するための創収縮と【肉芽組織から瘢痕組織へ変化する過程におけるコラーゲンのリモデリングです。

創収縮

創収縮は線維芽細胞から分化した筋線維芽細胞が主に役割を担っており、この分化を促す為には線維芽細胞を活性化させる必要があります。

増殖期でお伝えしましたが、超音波レーザーなどには線維芽細胞を活性化させる効果があり、創収縮に対しても効果を発揮する可能性があります。

 

コラーゲン線維のリモデリング

線維芽細胞におけるコラーゲン合成と蛋白質分配酵素(MMPs)によって生じるコラーゲン分解のバランスがもとに成り立っています。

線維芽細胞におけるコラーゲン合成は超音波やレーザー療法が線維芽細胞を活性化させることで効果を発揮することが期待されます。

蛋白質分解酵素に関してはリハビリテーションの治療効果を認めることが出来るのかどうかは分かりません。

コラーゲン合成と蛋白質分解酵素のバランスが崩れ、コラーゲン合成が過剰になった場合、瘢痕組織が拡大してしまいますが瘢痕化が痛みに関わる可能性があることも分かっています。

コラーゲン合成は線維芽細胞を活性化させることで促すことが出来ますが、線維芽細胞はブラジキニンと反応しインターロイキンなどの炎症性サイトカインを分泌し、最終的にプロスタグラジンの分泌に繋がります。

詳しくは下記の記事を参考にして下さい。
【理学療法士が伝える】痛みの末梢性機構と感作

プロスタグラジンそのものには疼痛作用はないものの、疼痛増強作用を発揮するため痛みが強くなり、末梢性痛みの感作の原因の1つになっています。

リハビリテーションにおいては、成熟期における痛みの治療・コントロールが大切になってくると言われています。

痛みが発生すると、その神経伝達は体性感覚野に到達して痛みが伝わるだけでなく、多シナプス反射により筋収縮が生じたり、視床下部といった自律神経コントロールの中核を担う部分にも到達します。

つまり、痛みが発生すると筋収縮の惹起交感神経の興奮を招き、痛みの増悪循環障害の発生に繋がります。

循環障害が生じるとブラジキニンの産生による疼痛非活動性侵害受容器が活性化することで痛みが生じます。

痛みの発生による循環障害はさらなる痛みを引き起こし、痛みの悪循環を形成するため、痛みをアセスメントし的確に治療することが大切です。

特に炎症症状が終焉した増殖期~成熟期において、この痛みの悪循環を防止することが大切です。

リハビリテーションにおいて治療戦略としてリラクセーション運動療法温熱療法などによる循環改善が挙がってきます。

 

例:変形性膝関節症

変形性膝関節症に対して持続的な関節可動域運動炎症性サイトカインの減少や抗炎症性サイトカインの増加を招くという報告があります。

また、炎症軟骨細胞に張力刺激を負荷すると炎症性サイトカインが減少する報告もあります。

こういった報告はリハビリテーションにおける運動療法が生理学的に痛みの治療に繋がることを意味します。

そして、不活動による痛みの発生・悪循環を防止することも出来るため、運動療法は痛みの治療・増悪予防として必要な治療方法です。

参考書籍

本記事は下の書籍を参考にしたものです。

内容はやや難しいですが、痛みについてより詳しく知りたい方にはオススメです!!

痛みの根本的な勉強は治療を一から考察することに役立ち、臨床力を高めてくれます。

痛みのマネジメント力を高めたい方はぜひ読んでみて下さい。

【送料無料】 ペインリハビリテーション / 松原貴子 【本】

価格:4,620円
(2020/6/8 22:18時点)
感想(0件)

 

【送料無料】 ペインリハビリテーション入門 / 沖田実 【本】

価格:3,850円
(2020/6/8 22:18時点)
感想(0件)

ここまで読んで頂きありがとうございました。