【リハに役立つ!!】理学療法士が伝える!痛みと不活動の関わりとは

【医療者向け】痛み

骨折や靭帯損傷の保存療法ではギプスやスプリントを用いた患部の固定があり、損傷した組織の回復促進を目的に行われます。

しかしこのような患部の固定は2次的に拘縮や筋委縮といった運動器の機能障害を惹起することも知られており、リハビリテーションではこういった2次的な機能障害を予防・治癒していくことが重要になります。

リハビリテーションを進めていく中で、痛みという因子は阻害となり、患部の炎症反応が消退し損傷部位が治癒しているのにも関わらず、痛みが残存するケースがあります。

こういった痛みが残存したケースはその痛みの治療に難渋することが多いと思われます。

ギプス固定や非荷重、安静臥床などによって惹起される末梢組織の不活動状態そのものが痛みを生み出し、慢性痛の発生要因になるとされています。

 

不活動と複合性局所疼痛症候群(CRPS)

難治性の慢性痛として知られている複合性局所疼痛症候群(CRPS)と診断された方を対象に行った調査結果によれば、約半数の方は治癒目的のためにギプスやスプリントを用いた固定が行われており、その固定期間は1~24週間であったと報告されています。

また反射性交感神経ジストロフィー(RSD)患者を対象にした調査でも約40%はギプスやスプリントなどによる患部の固定が施されていたと報告されています。

足部周辺の骨折により2~9週間、非荷重ならびにスプリントによる固定が施された対象の50%は機械的刺激に対するアロディニアが認められています。

上記のようにCRPSの発生・進行のリスクとしてギプスやスプリントなどを用いた患部の固定組織の不活動が指摘されています。

人を対象にした不活動と痛覚閾値の変化に関する研究

健康なボランティアの前腕を4週間ギプスで固定すると、その約半数に冷痛覚閾値の低下が認められ、約30%に熱痛閾値の低下が認められたと報告されています。

また健康なボランティアの前腕から手関節を4週間ギプス固定し、第1指・第2指間の皮膚をつまむ際の圧力値によって痛覚閾値を評価した研究ではギプス固定を外した直後だけでなく、外した3日後・28日後においても痛覚閾値の低下が認められています。

動物を対象にした不活動と痛覚閾値の変化に関する研究

ラット足関節を中間位で4週間ギプス固定した後に足底部の機械的刺激に対する痛覚閾値の経時的変化を調査した研究結果では、ギプス固定直後から2週間後まで痛覚閾値の低下が認められています。

その他にもラット足関節を最大底屈位で4週間ギプス固定し、両側固定群と片肢固定群の2群を設けて足底部の機械的刺激に対する痛覚閾値の変化を研究したものもあります。

その結果では、両側固定群はギプス固定2週間後片肢固定群はギプス固定3週間後から痛覚閾値の低下が認められています。

両側固定群は片肢固定群と比較し全身の活動量が少なく、両側固定群と片肢固定群との2群間で痛覚閾値の低下し始めた時期が異なるのは、活動量が影響しているのではないかと考えられています。

不活動期間と慢性痛の発生について調べた研究では、ラット右側足関節を最大底屈位の状態で膝関節上部から前足部までギプス固定した不活動モデルを用い、4週間と8週間のギプス固定の過程とその後のギプス固定を解除した4週間の足底部の機械的刺激に対する痛覚閾値の推移を調査したものがあります。

今まで紹介してきた研究・調査結果と同様にギプス固定から2週間後から痛覚閾値の低下が認められました。

その後の痛覚閾値はギプス固定の期間に準拠して痛覚閾値の低下が著明となりました。

また、ギプス固定を解除した後の痛覚閾値の推移をみていくと4週間のギプス固定の場合には回復が認められたが、8週間のギプス固定の場合には回復は認められませんでした。

このことからギプス固定などによる身体の不活動状態の惹起は痛みの発生を招き、不活動状態が長期化すると痛みは慢性痛へと移行する可能性が示唆されています。

不活動に起因した痛みのメカニズム

神経系の変化

末梢組織にはさまざまな刺激を感知し、それを中枢神経系に伝える、感覚器としても重要な機能があります。

そのため、末梢組織を不活動状態にさらすということは、末梢組織からの刺激入力が減弱・消失することにつながり、結果的に神経系にも変化が生じ、痛みを発生させる可能性があります。

ラット膝関節内にカラゲニン(起炎剤)を投与した【関節炎症モデル群】と6週間ギプス固定しただけの【不活動モデル群】を用いて、安静時・関節運動時の膝関節からの1次求心性ニューロンの活動を調査したものがあります。

この結果では、安静時と関節運動時ともに関節炎モデルと不活動モデルの両者において一次求心性ニューロンの活動亢進が認められています。

このことから末梢組織の不活動状態は炎症が生じている時と同様に一次求心性ニューロンには感作が生じることが示唆されています。

また膝関節を支配する一次性求心性ニューロンの75~90%はAδ・C線維であると言われており、不活動による一時求心性ニューロンの感作は痛みの発生に関与していると予想出来ます。

ラット手関節を90°掌屈位で前腕から手掌まで3~4週間ギプス固定した不活動モデルで、C7~Th1の脊髄後角細胞の機能面で分布状況を検索した研究がある。

この結果では低閾値~高閾値ニューロン、関節運動にも反応する広作領域(WDR:wide dynamic range)ニューロンの割合ならびに関節運動のみに反応するニューロンの割合が不活動モデルで増加しているという報告もあります。

こういったことは不活動は脊髄後角レベルの可塑的変化を惹起している可能性が示唆しています。

痛みを伝える一次侵害受容ニューロンであるAδ線維・C線維が脊髄後角でシナプスする二次ニューロンは、【侵害受容ニューロン】【WDRニューロン】であり、WDRニューロンの割合が増加するのであれば、非侵害的な刺激が入力されただけでも痛みとして知覚される可能性があります。

また、ギプス固定後の拘縮改善を目的とした関節運動・ストレッチを行う際は、痛みの発生を認めることがありますが、単純に拘縮が発生しているからだけでなく、脊髄後角において関節運動に反応するニューロンが増加していることも頭に入れておく必要があります。

【動物を対象にした不活動と痛覚閾値の変化に関する研究】で8週間という長期のギプス固定を施すと、その後にギプス固定を解除しても痛覚閾値の低下に回復は認められなかったが、4週間のギプス固定では回復が認められた研究についてお伝えしました。

上記の研究を確かめるためにラットを用いて、【化学的な侵害刺激に対する末梢性の痛み】と【局所の炎症と炎症に引き続ていて起こる脊髄後角細胞の感作に依存した中枢の痛み】について詳しく調べた研究があります。

その研究結果では…

4週間のギプス固定を行った群は【科学的な侵害刺激】のみ有意に高値を示したが、

8週間のギプス固定を行った群は【科学的な侵害刺激】・【局所の炎症と炎症に引き続ていて起こる脊髄後角細胞の感作に依存した中枢の痛み】の両方で有意に高値を示しました。

つまり、8週間のギプス固定を施すと神経系にも変化が及び、慢性痛が発生していると予想出来ます。

4週間のギプス固定では神経系の影響よりも、末梢組織そのものの変化に依存して痛み位が発生していることを推察します。

末梢組織の変化

不活動に起因した痛みの発生メカニズムを末梢組織の変化から検討した報告は、これまでほとんどされていません。

参考になる所見としてはCRPS患者で観察される多様な症状ではないかと思われています。(以下表)

複合性局所疼痛症候群(CRPS)患者で観察される多様な症状

アロディニア、痛覚過敏、感覚過敏、感覚低下、触覚異常、異常痛
皮膚色変化(発赤・赤潮・チアノーゼ・青白い・斑状の変化など)
皮膚温度の異常(温度上昇or低下)
発汗異常(過剰or過少・発汗停止)
浮腫・皮膚萎縮と皮膚色素沈着
体毛の増多・消失
皮膚のしわの消失と光沢化
皮下組織の萎縮あるいは肥厚
爪の隆起・弯曲・菲薄化・脆弱化
デュプイトラン拘縮あるいはその他の拘縮
骨萎縮・骨粗鬆症(斑状・限局性あるいは広範に拡大)
筋委縮・筋力低下
関節の可動域制限・急性又は慢性関節炎
尿道括約筋の機能異常
不随意運動(振戦・ジストニア・痙縮)

またギプス固定後は組織的変化として角質層の乱れが認められ、肉眼的所見として皮膚の乱れがしばしばみられます。

実際にギプス固定期間の影響を検討した結果、ギプス固定1週間後は大将軍と有意差を認めないものの、ギプス固定2週間・4週間は対象群より有意に減少していました。

表皮の菲薄化は自由神経終末が分布する表皮基底層・真皮層と外界との距離が縮まることを意味し通常状態よりも過敏に刺激を感じられるようになると考えられます。

今まで紹介してきた研究結果においても2週間という数字は、痛みの閾値が有意に低下する期間と一致しています。

参考書籍

本記事は下の書籍を参考にしたものです。

内容はやや難しいですが、痛みについてより詳しく知りたい方にはオススメです!!

痛みの根本的な勉強は治療を一から考察することに役立ち、臨床力を高めてくれます。

痛みのマネジメント力を高めたい方はぜひ読んでみて下さい。

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