【リハに役立つ!】筋収縮から生じる骨格筋の伸長性低下と変化まとめ

【医療者向け】ストレッチ

脳卒中・脊髄損傷から生じる痙縮・痛みによる筋スパズムなどから筋収縮が生じ、関節可動域制限の発生を左右する要因だと言われています。

筋収縮は一時的に筋肉を短縮させて張力を得るということであり、持続的な筋収縮は筋・関節周囲の軟部組織の柔軟性低下を惹起し関節可動域制限へと繋がります。

関節可動域制限に対してスタティックストレッチなどの運動療法や振動刺激などの物理療法を用いることは、関節可動域制限を惹起させる筋収縮を抑制するという視点から必要不可欠です。

スタティックストレッチや振動刺激などにより関節可動域制限を改善する為には、筋収縮に由来する関節可動域制限のメカニズムを知っておくことが大切だと思われます。

まずは、筋収縮により関節可動域制限が生じるメカニズムについてお伝えしていきます。

 

筋収縮による骨格筋の伸長性低下のメカニズム

膝関節屈曲筋に筋収縮が生じている状態で膝関節伸展方向にストレッチを行っても、ストレッチ効果は得られにくいということは想像しやすいかと思われます。

筋収縮が生じている状態というものは、筋原線維の太いフィラメント(ミオシン)と細いフィラメント(アクチン)で形成される連結橋(クロスブリッジ)が大きく影響していると言われています。

連結橋はミオシンとアクチンをつなぎ、筋収縮により発生する力の最小単位とされています。

ミオシンとアクチンをつなぐ連結橋には、【弱い結合】と【強い結合】があり、筋収縮が惹起されている状態の連結橋は【強い結合】になっており、ストレッチを行っても簡単には伸長されません。

筋収縮が惹起されている状態というのは、脳卒中や脊髄損傷などによる痙縮、神経痛などによる筋スパズムが当てはまります。

つまり、【骨格筋の伸長性というものは神経系の状態の影響が大きく関わる】ということです。

また、臨床において運動前後に筋緊張が高い状態の患者をみることがあると思われます。

これは筋肉が収縮するためにATPが必要なのは周知の通りですが、収縮した筋が弛緩するためにもATPが必要であり、筋収縮によって周囲の微細な毛細血管を圧迫した状態では十分な血流を受けることが出来ずATPが産生出来ません。

夜間に長時間同じ臥位姿勢をとっていた場合や運動によって強い筋収縮が生じた場合は、筋への血流が乏しい状態となり、筋収縮が惹起されやすい状態になっていることが考えられます。

虚血により筋収縮が惹起されている状態は、リラクセーションや軽い運動などにより改善を図ることが出来ます。

筋収縮が惹起されやすい状態1つでも、神経系の異常から生じているものは根本的な治療は理学療法対象外ですが、虚血により生じている者は理学療法治療対象内になっている可能性が十分にあります。

神経系の異常だけでなく、虚血によっても筋収縮は惹起されるということも知っておく必要があり、筋収縮が惹起されている状態の根本的な原因がどちらなのかを評価し、治療を行っていく必要があります。

筋収縮によってミオシン・アクチン間で連結橋ができ、筋収縮が惹起されている状態は強く結合されており、容易に伸張できない
筋収縮が惹起されている状態①:神経系の異常(根本的な治療は理学療法対象外)
筋収縮が惹起されている状態②:虚血(理学療法治療対象内となっている場合が十分にある)

筋収縮が惹起されている状態では、容易に骨格筋は伸長出来ないことは分かりましたが、痙縮などによる持続的な筋収縮は二次的な骨格筋の器質的な変化を引き起こし、拘縮の発生にも関与します。

 

不動による骨格筋の変化

筋収縮は脳から発信された活動電位は末梢神経に到達し、神経筋接合部を介して筋細胞に筋収縮信号が到達します。

筋収縮信号が筋細胞に到達することで生じる電気的変化は、横行小管を経て筋小胞体に伝わり筋小胞体内にあるCa²⁺が放出させ、筋細胞内のCa²⁺濃度が増加されることで筋収縮が生じます。

また、筋弛緩は筋細胞内にあるCa²⁺濃度が十分に低下することで生じます。

詳細は下記記事を参照して下さい。

筋収縮・弛緩のメカニズムは上記の通りですが、ギプス固定などの骨格筋の不動により変化が生じると言われています。

骨折後のギプス固定などにより骨格筋の長さに制限が生じると、神経系からの出力が増大し筋を収縮させようとする変化が生じます。また、神経筋接合部にあるアセチルコリン受容体の密度が増加することも分かっています。

筋小胞体の内にあるCa²⁺が筋細胞内に流出し濃度が上がると筋収縮が生じることをお伝えしました。

また、骨格筋が不動状態になると筋細胞内のCa²⁺濃度が上昇することが分かっています。

これは骨格筋の不動が筋小胞体のCa²⁺の取り込み・Ca²⁺を蓄える能力の低下を引き起こしている可能性が示唆されています。

不動により筋細胞内のCa²⁺濃度が上昇している筋では、過剰収縮した筋線維・変性した筋小胞体が確認されています。

過剰収縮した筋線維は壊死の初期段階であるとされており、Ca²⁺濃度の上昇によりカルパイン(Ca²⁺依存性のたんぱく質分解酵素)を刺激したことから生じています。

最終的に筋細胞膜・Z帯の破壊に陥ってしまうと、筋細胞全体の消化をもたらすことになり筋線維自体の円滑な収縮・弛緩が難しくなることが予想されます。

骨格筋の不動:筋小胞体のCa²⁺能力・蓄積能力低下に繋がり、筋細胞内のCa²⁺濃度が上昇する
Ca²⁺濃度の上昇:カルパインが刺激され、最終的に筋線維が壊死する

 

不動による筋紡錘の変化

機能的変化

Maier A, et al:The effects on spindles of muscle atrophy and hypertrophy.Exp Neurol37:100-123,1972

上記研究では動物実験ですが、【不動後は筋紡錘の感受性が増加】していると報告されています。

 

藤野英己, 他:ギプス固定によるラットヒラメ筋の廃用萎縮時の求心性神経活動および力学的性質の解析. 日基礎理療誌 7:3-9, 2004

上記研究ではラットの一側足関節を最大底屈位で固定(不動群)、対側は放置(対象群)としたモデルで研究を行っています。

不動側の筋(ヒラメ筋)では【安静における求心性神経活動の自然発火頻度】・【筋を伸張した際の求心性神経活動】の上昇が認められています。

また、対象側は足関節背屈角度の増加に伴い求心性神経活動が増加しますが、不動側ではある角度から神経活動が一定になっています。

 

解剖学的変化

筋紡錘の機能的な変化は解剖学的変化に由来している可能性が十分にあります。

Jozsa L et al:The effect of tenotomy and immobilization on muscle spindles and tendon organs of the rat calf muscle, A histochemical and morphometrical study. Acta Neuropathol 76:465-470,1988

上記研究では動物実験ですが、弛緩位で不動化した筋では錘内筋線維中の核袋線維・核鎖線維で萎縮が認められ、筋紡錘を被膜するコラーゲンは不動により増生し、厚みが約2倍になっていると報告しています。

 

Takahashi Y,et al:Muscle spindles in immobilized muscle:electron microscope study of recovery.Med Electron Micros 30:102-109,1997

上記研究においてもコラーゲンの増生により被膜が厚くなり、さらに錘内筋線維の筋原線維において配列の乱れや空胞の形成を認めています。

【まとめ】
長期間における骨格筋の不動は筋紡錘に機能的・解剖学的変化を生じさせる
機能的変化:筋紡錘の感受性の増加(求心性神経活動の増加)
解剖学的変化:筋紡錘の被膜が厚くなる(コラーゲン線維の増生)・筋原線維の配列乱れや空胞形成
上記の解剖学的変化により筋紡錘における柔軟性が低下したことが、機能的変化に繋がっている可能性

 

まとめ

脳卒中・脊髄損傷などによる痙縮、神経痛などによる筋スパズムは筋収縮が惹起しやすい状態であり、筋収縮が生じている状態はミオシン・アクチン間の結合が強い状態であり、容易に伸張できる状態ではありません。

また、持続的な筋収縮は関節周囲軟部組織・骨格筋の器質的変化を引き起こし、その結果拘縮などにより関節可動域制限が生じます。

関節可動域制限に対する治療効果の発揮】・【関節可動域制限の発生・進行の予防】の両者において、異常な筋収縮を抑制させることは非常に重要なことです。

持続的な筋収縮には痙縮や神経痛による筋スパズムといった神経系由来のものは、根本的な治療が理学療法対象外であり治療困難ですが、虚血由来のものであれば十分に治療できる可能性があるため、持続的に筋収縮が生じている根本的な原因を探る必要があります。

持続的な筋収縮などによる骨格筋の不動化は筋細胞・筋紡錘において機能的・解剖学的変化を引き起こし、リハビリなどによる身体の回復が難しくなります。

そのため、関節可動域制限に対して最も治療効果を発揮しやすいのは早期の段階であり、療法士は出来る限り早く治療・予防に努めることが大切なのです。

ここまで読んで頂きありがとうございました。

 

治療に関しては下記記事を参照して下さい。