OAの術前後における検査値の特徴
検査値 | 基準値 | 本疾患の検査値 | 検査値の捉え方 |
C反応性蛋白)CRP | 0.3mg/dL以下 | 中等度上昇: 1~10mg/dL以上 高度上昇:10mg/dL以上 |
術後の炎症反応の判断に用います 10mg/dL以上の場合はリハビリ中止します |
白血球(WBC) | 3300~8600/uL | 軽度~中等度増加: 1.0~5.0×10⁴/dL |
感染症により上昇 |
ヘモグロビン(Hb) | 男性:13.7~16.8g/dL 女性:11.6~14.8g/dL |
低値:10g/dL以下 | 術中出血にともなう貧血の判断に用います 7g/dL以下はリハビリ中止 |
D-ダイマー | 0.9~ug/mL以下 | 増加:1~5ug/ml 高度増加:5ug以上 |
高値では血栓リスクが増加 |
AST(GOT) | 13~30IU/L | 軽度増加:33~100IU/L 中等度増加: 100~500IU/L |
薬剤性肝障害により上昇 |
ALT(GPT) | 7~42IU/L | 軽度増加:43~100IU/L 中等度増加: 100~500IU/L |
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γ-GTP | 男性:13~64IU/L 女性:9~32IU/L |
軽度増加: 基準値~100IU/L 中等度増加: 100~200IU/L |
薬剤性肝障害により上昇 酵素誘導作用があり、管内のγ-GTP蛋白質量を増加 |
クレアチニン(Cr) | 男性:0.65~1.07mg/dL 女性:0.46~0.79mg/dL |
基準値内 | 薬剤性肝障害により上昇 |
尿素窒素(BUN) | 8~20mg/dL | 軽度上昇:21~30mg/dL 中等度上昇:30~60mg/dL |
薬剤性腎障害により上昇 ステロイド使用時も上昇 |
頻出検査項目と検査値
TKAの術侵襲にともなう炎症によりCRP・白血球(WBC)が上昇します
合併症のインプラント感染においてもCRPが上昇するため、患部の状態の把握と合わせて判断します
術中の出血や術後ドレーン排液となり、貧血が進行することがあるのでHb値を確認します
術後の疼痛管理において、NSAIDsやCaチャンネルα₂δリガンド拮抗薬、非麻痺性オピオイドが用いられます。
しかし、薬剤性肝障害・薬剤性腎障害が生じる可能性があるのでAST・ALT・γ-GTP・Cr・BUNの評価を行います。
薬物療法
術後疼痛は、多様式鎮痛法が管理され、「局所または区域麻酔法(局所浸潤麻酔、神経ブロック、硬膜外麻酔など)+非オピオイド鎮痛薬」の方法が一般的です。
アセトアミノフェンは軽度~中等度の痛みに対して有効であり、NSAIDsやオピオイド鎮痛薬に比べて副作用が少ないことが特徴です。
NSAIDsは鎮痛作用に加え抗炎症作用も有しており、軽度~中等度の痛みに対して有効です。
高齢者・胃潰瘍既往・ステロイド投与中・抗凝固療法中・ビスホスホネート(BP)製剤投与中・喫煙者は消化性潰瘍の発症リスクが高くなるため注意が必要です。
Caチャンネルα₂δリガンド拮抗薬は、神経障害性の疼痛への適応とされているが術後急性期にも有効である。
しかし、めまい・ふらつきなどの副作用を有し、なかでも高齢・低体重・腎機能低下は副作用は発生リスクを高めるため注意が必要です。
非麻薬性オピオイドであるトラマドールなどは、慢性疼痛に有効とされている、慢性膝OAにともなう疼痛や術後遷延する疼痛に対して用いられます。
薬剤名 | 検査値への影響 | 薬効 | 副作用 | リハの注意点 |
アセトアミノフェン | 鎮痛作用 | まれに肝障害 | ||
NSAIDs (ロキソプロフェン、ジクロフェナク) |
Cr↗ ALT↗ BUN↗ γ-GTP↗ AST↗ |
抗炎症作用 鎮痛作用 |
消化管障害 腎障害 |
むくみ、尿量の減少に注意 |
Caチャンネル α₂δリガント拮抗薬 (ガバペンチン、プレガバリン) |
Cr↗ BUN↗ |
鎮痛作用(神経障害性疼痛) | めまい ふらつき 傾眠 浮腫 眼障害 |
転倒に注意 |
非麻薬性オピオイド (トラマドール、ペンタゾシン) |
AST↗ Cr↗ ALT↗ BUN↗ γ-GTP↗ |
鎮痛作用 抗不安作用 |
嘔気 眠気 呼吸抑制 |
服用開始直後に嘔気・眠気などがあるのでリスクに注意 |
気を付ける検査値
CRP・白血球(WBC)
【術侵襲による炎症反応】か【外科術後の感染による上昇】か確認します。
CRP・WBCが基準値を大きく上回る場合、リハビリを中止します。
D-ダイマー
血栓発生のリスクの指標であり、Homans徴候など身体所見やエコー・CTなどの画像所見とあわせて診断が必要になります。
深部静脈血栓症は肺塞栓症などにつながり、生命に関わるので非常に危ないリスクです。
血栓が形成された場合、抗凝固投与薬や下大静脈フィルターの留置等が行われ、安全が確保されるまでリハビリは中止します。
RBC・Hb・Ht(特にHb)
術中出血・ドレーン排液などにより低値となる可能性は十分にあり、貧血が生じていないか確認します。
術後の疼痛に使用している鎮痛薬の副作用の可能性も考えられるため、服薬状況を確認します。
術中出血量が多く、体液量が減少している場合は血圧低下に注意します。
Cr・BUN
術侵襲や麻酔などの影響により腎血流が低下し、一過性の腎機能障害を呈している可能性があります。
浮腫など身体所見も確認する必要があります。
腎機能障害を呈していると薬物代謝が落ちるため、服薬の影響を受けやすくなります。
AST・ALT・γ-GTP
術侵襲や麻酔の影響で一過性の肝機能障害を呈している可能性があります。
参考書籍
血液検査の数値を把握しておくことで、より詳しくリハビリのリスクを把握したり、リハビリプログラムの構築の工夫やリハビリの進捗を予測することが出来ます。
血液検査に詳しくなると、周囲の療法士に頼られることが増えると思います!!
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