サルコペニアにおける検査値の特徴
検査値 | 基準値 | 本疾患の検査値 | 検査値の捉え方 |
血清総蛋白(TP) | 6.6~8.1g/dL | 中等度減少:5~6g/dL 高度減少:5g/dL以下 |
中等度減少以下では栄養障害を疑います |
血清アルブミン(Alb) | 4.1~5.1g/dL | 中等度減少:2.5~3.2d/dL 高度減少:2.5g/dL以下 |
栄養状態の指標に用います |
トランスサイレチン(TTR) | 21~43mg/dL | 基準値内 | プレアルブミンともよばれ、栄養状態を反映する蛋白質です |
総リンパ球数(TLC) | 白血球の20~25% | 軽度減少:1500~1800/uL 中等度減少:900~1500/uL 高度減少:900/Ul以下 |
免疫機能を示し、栄養状態と相関します |
トランスフェリン(Tf) | 男性:190~300mg/dL 女性:200~340mg/dL |
基準値内 | 鉄の輸送蛋白で半減期が短いため栄養状態を感度よく早期に表します 肝障害・炎症より低下 |
コリンエステラーゼ(CHE) | 男性:251~489U/L 女性:211~384U/L |
基準値内 | 栄養状態や肝細胞障害で低下 糖尿病やネフローゼ症候群で高値を示す |
総コレステロール(TC) | 130~220mg/dL | 軽度減少:80~130mg/dL 中等度減少:40~80mg/dL 高度減少:40mg/dL |
吸収不良・栄養失調・肝実質障害で定値 |
ヘモグロビン(Hb) | 男性:13.7~16.8g/dL 女性:11.6~14.8g/dL |
貧血:10g/dL以下 | ビタミン欠乏、鉄欠乏性貧血により低下 |
C反応性蛋白(CRP) | 0.3mg/dL以下 | 軽度上昇:0.3~1.0mg/dL 中等度上昇:1~10mg/dL 高度上昇:10mg/dL |
0.3mg/dLにおいて慢性炎症の有無を判断 |
クレアチニン(Cr) | 男性:1.1~1.9g/日 女性:0.5~1.6g/日 |
基準値内 | 筋肉量に相関あり、低値で骨格筋量減少を疑います |
頻出検査項目と検査値
全身の栄養状態の指標として基本的に総蛋白(TP)・アルブミン(Alb)が用いられます。
総蛋白(TP)の増加はグロブリン値の影響を受け、つまり炎症の影響を受けます。
栄養状態の指標としてはよりAlbの値を評価することが大切です。
しかし、Albは炎症反応(CRP)の上昇に伴い減少するので評価する際は注意が必要です。
トランスサイレチン(TTR)はプレアルブミンともよばれ、栄養状態の変動がすみやかに反映されるため外科手術後の患者や乳幼児の栄養指標として有用です。
免疫機能は細胞性免疫や白血球、マクロファージなどにより維持されますが、低栄養状態では免疫細胞の合成低下を招き、免疫機能が低下するため総リンパ球が減少します。
上記から栄養状態の悪化は、感染症のリスクが高くなるので注意が必要です。
クレアチニン(Cr)は食事の影響を受けにくく、筋肉量に比例してほぼ一定であり、骨格筋量を表すマーカーとしてされています。
糖尿病はインスリン分泌能・インスリンの効果が減少している状態であり、グルコースからグリコーゲン・中性脂肪の合成が促されにくく、ATPが産生されづらい状態です。
慢性腎不全ではCrが高値となりやすく、慢性腎不全のような併存疾患も踏まえた評価が必要になります。
薬物療法・食事療法
薬物療法
テストステロン補充療法は行われており、骨格筋量の増加する作用が認められています。
しかし、テストステロン補充療法はサルコペニアの治療・予防としてエビデンスが不足しており、また安全性についても懸念されています。
食事療法は、Harris-Benedictの式で基礎エネルギー消費量に対して、活動係数とストレス係数を考慮した量を摂取することが重要とされています。
男性:66.47+13.75×体重(kg)+5.0×身長(cm)ー6.76×年齢(年)
女性:655.1+9.56×体重(kg)+1.85×身長(cm)ー4.68×年齢(年)
理学療法時に気を付ける検査値
TP・Alb・TTR
上記の検査値は低値であれば栄養不良状態といえます。
骨格筋が異化状態となっており、高負荷レジスタンストレーニングが不適応となる可能性があります。
Alb・Hb・Tf
消化管出血などの出血傾向を認めないにも関わらず、これらの検査値が低値であれば、栄養状態不良にともなう貧血症状が進行している可能性があります。
特にHbが7.0g/dL以下では、リハビリ中止を検討します。
Tfが上昇している場合は、鉄欠乏性貧血が疑われるため、有酸素運動の負荷量に注意が必要になります。
Alb・CRP
CRPが高値であれば、慢性炎症症状の再燃の可能性があります。
慢性的な炎症症状が疑われている場合は、積極的なリハビリは実施せずに医師に相談します。
糖尿病・慢性腎不全など併存疾患に関する場合は、Albが低値となりますいので身体所見・血液データを確認し症状の進行の有無を確認します。
CRPが高値である場合や低栄養状態の際は、異化作用が亢進しているため、低負荷の運動に留めます。
栄養状態および併存疾患の状態が良好な場合は、同化作用が亢進しているため、積極的な運動が推奨されます。
参考書籍
血液検査の数値を把握しておくことで、より詳しくリハビリのリスクを把握したり、リハビリプログラムの構築の工夫やリハビリの進捗を予測することが出来ます。
血液検査に詳しくなると、周囲の療法士に頼られることが増えると思います!!
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