【リハに役立つ】物理療法:温熱療法の生理学的効果

【医療者向け】物理療法

物理療法の中でも温熱療法はよく使われる治療の1つです。

温熱療法を上手く扱う、勉学を進めていくために温熱療法の生理学的な効果は知っておく必要があります。

寒冷療法の生理学的効果・目的・適応・禁忌についてお伝えします。

 

温熱療法の生理学的効果

全身反応

全身・過度の加温を行うと身体のホメオスタシスを保ち、生命維持のための反応が全身にみられます。

 

体温調節機構

人の体温は個人差・年齢差・性差・季節差などがありますが、約35~38°に保たれています。

身体に温かい・冷たい刺激が与えられると、体内温を一定域内に調節する体温調節機構が働きます。

 

温度受容器

皮膚には身体表面の温度を感受する受容器があり、また骨格筋・関節・内臓などの体内においても温度受容器は

存在します。

温度受容器によって感じ取られた温度情報は中枢神経系を通り、脳に伝えられます。

 

体温調節中枢

体温調節中枢:温度受容器からの情報を受け入れ、統合・処理し、効果器へ指令を送る器官

最高中枢は視床下部であり、また延髄脊髄においても温度調節中枢は存在します。

 

効果器

体温調節中枢(上記)に従い、熱産生・熱放散量を調節する自立性体温調節反応や体温調節行動が生じます。

温かい刺激:温刺激が加えられると循環の改善発汗作用により水分蒸発が増加し熱放散が増加します。
冷たい刺激:冷刺激が加えられると骨格筋・内臓(主に肝臓)で熱産生を行い、ふるえなどがみられます。

 

呼吸・循環作用

全身加温、長時間の加温を行うと細胞の代謝活動が亢進するため十分な酸素・栄養素の供給が必要になり、代謝産物の排出も必要になるため心拍数・呼吸数が増大します。

また、体内温が上昇すると呼気で熱を排出し、体熱を放散します。

過度な加温を受けた部位は熱傷を防ぐために、加温を受けた部位への血流を増大させ、他の部位の血流を抑える機能でありシャント機能と呼ばれています。

シャントの1つとして皮膚循環-深部循環のシャントとは、加温によって上昇した体温を下げるため内臓などの深部組織の血液を皮膚へ移動させ、体外に熱を放散させるシステムです。

局所反応

代謝機能の変化

加温によって組織温度が上昇すると細胞の活動が亢進し、代謝機能が亢進します。

ファント・ホフの法則では、組織温度が10°上昇すると代謝率は2~3倍に増加し、あるいは1°上昇することに

約13%増加します。

 

末梢血管反応

加温により血液の粘性が低下することで、血流量が増加します。

また、ポリモーダル受容器の働きにより血管拡張作用がみられ、血液量が増加します。

 

※ポリモーダル受容器:機械的刺激・化学刺激・熱刺激などの様々な刺激に反応し、サブスタンスP・カルシトニン遺伝子関連ペプチドなどの疼痛にも関わる化学物質が放出され、血管拡張や血管透過性亢進などを引き起こします。(神経性炎症)

サブスタンスP:血管透過性亢進作用

カルシトニン遺伝子関連ペプチド:血管拡張作用

 

加温が終了すると皮膚や骨格筋の温度は速やかに基に戻る傾向がありますが、血液量の変化は数十分持続します。

また、身体のある部分を加温すると加温部位とは離れた部位の循環が増加します。

ex:一側肢を加温すると他側肢の循環が増加したり、一側下肢の加温により同側上肢の循環が増加したりする現象がみられます。

 

神経・筋に対する影響

基本的に組織温度が上がると神経伝導速度が速まります。

神経伝導速度の変化は無髄線維よりも有髄線維・大径線維よりも小径線維で変化が大きく、痛みを伝える神経線維でいうとC線維よりもAδ線維で影響を受けやすいということになります。

神経伝導速度変化の影響
Aδ線維>C線維

つまり、急性期の痛みに対して温熱療法を行うことはAδ線維の神経伝導速度を速めることにつながり、鋭痛の増悪につながる可能性があります。

急性痛に対して寒冷療法を行うことはAδ線維の伝導速度を遅延させ、鋭痛の痛みを緩和することが出来ます。

 

結合組織(コラーゲン線維)に対する影響

加温により軟部組織の伸張性が高まることはよく知られており、軟部組織のなかでも主要構成成分であるコラーゲン線維の伸張性が高まると言われています。

 

骨格筋の伸張性低下は関節可動域制限などを招きますが、その中でも腱組織はコラーゲン線維が密であり、腱組織の長軸方向に対してコラーゲン線維が平行して走行しているため、伸張性が乏しい組織です。

ストレッチのみを行った群と温熱療法とストレッチを併用した群では、温熱療法を併用した群において有意に軟部組織の伸張性が増大したという研究が多くみられます。

その為、温熱療法により組織を加温することは軟部組織の伸張性向上に有効であると考えられています。

しかし、腱器官は動物実験では45°以上の温水浴で加温すると伸張性が高まるという報告がありますが、臨床にて45°で加温するということは難しく、腱器官の伸張性を十分に増大させることは難しい可能性があります。

温熱療法の目的

温熱療法は加温による組織温度の上昇によって引き起こされる局所・あるいは全身の生理反応を利用し、

・痛みの軽減

・循環の改善

・軟部組織の伸張性向上

・創傷治癒の促進

上記などを目的に施行されます。

 

痛みの軽減

温熱療法による血管拡張に伴い血流増加はサブスタンスPやブラジキニンなどの発痛物質の除去が行われ、痛みの軽減が期待できます。

また、温熱療法を行うことで心理的に心地よく感じ、一時的な痛みの軽減が期待出来ます。

しかし、局所の血流増加は浮腫を増悪させる危険があるので患部に炎症がある場合は禁忌となります。

循環の改善

温熱療法による血管反応は局所への熱の蓄積を防ぎ、熱傷を防ぐための生体防御機構です。

この防御制御機構を利用し組織の循環改善を図ることが出来ます。

 

軟部組織の伸張性向上

臨床において温熱療法と併用、または温熱療法実施直後に軟部組織をストレッチする方法が推奨されており、より有意に関節可動域の向上に繋がることが報告されています。

 

創傷治癒の促進

温熱療法は血管新生を促すことが出来るため、創傷治癒過程の増殖期や成熟期に効果があると言われています。

温熱療法の適応と禁忌

一般的な適応

疼痛(亜急性期以降、急性期の痛みは増悪の可能性)

温熱療法によって痛みが出ている部位の循環を促進することで、発痛物質・発痛増強物質を拡散させることで痛みの緩和を図ることが出来る可能性があります。

末梢組織の痛みの原因がない慢性痛では、ホットパックを用いて温熱療法を行うことで扁桃体の活動に変化をもたらし慢性痛の緩和を図ることが出来る可能性があると報告されています。

しかし、痛みの改善は一時的なものであり慢性痛の根本的な治療は難しいと考えれています。

 

筋ズパズム・痙縮

組織温度が上昇すると神経伝導速度は速くなり、筋紡錘の興奮も低下させる効果があると言われています。(γ運動ニューロンの活動を低下させる)

 

軟部組織の伸張性低下(拘縮)

ストレッチのみを行った群と温熱療法とストレッチを併用した群では、温熱療法を併用した群において有意に軟部組織の伸張性が増大したという研究が多くみられ、温熱療法により組織を加温することは軟部組織の伸張性向上に有効であると考えられています。

 

創傷

温熱療法は血管新生を促進する為、炎症が治まる亜急性期以降において循環を促進することで、創傷治癒促進が期待出来ます。

 

一般的な禁忌

炎症のある部位

組織温度を上げると血管拡張と血流増加が起こり、浮腫や出血を助長する危険性があります。

組織損傷を増悪させ、痛みを強め、創傷治癒を遅らせる可能性があります。

 

出血傾向のある部位

血管拡張により血管の傷口が広がり、さらに血流量増加により出血が再開する危険性があります。

 

重度の感覚障害のある部位

温熱療法は患者本人の温度覚・痛覚を聴取しながら行いますが、感覚障害がある個所に温熱療法を行うと温度覚・痛覚の変化を判断することが難しくなり、熱傷の危険があります。

 

末梢循環障害がある部位

加温すると細胞の代謝が亢進し、必要な栄養・酸素量が増えます。また、代謝によって生じた代謝産物の排出も必要になります。

しかし、末梢循環障害があると十分な血流量を供給することが難しくなり、阻血を助長することになります。

また、血流量を増加させることで熱を拡散させることも難しいので局所への熱蓄積が促進され、組織障害が生じる可能性があります。

 

悪性腫瘍

悪性腫瘍がある場合、循環促進・代謝亢進により悪性腫瘍の増殖速度・転移速度を速めることがあります。

 

心疾患

加温することで代謝が亢進するため、循環する血液量増加に伴い心臓の負荷が強くなります。

 

全身衰弱の激しい状態

アジソン病などの代謝疾患により代謝が亢進している場合、温熱により代謝をさらに亢進させると状態を悪化させる可能性があります。

 

特殊禁忌

ペースメーカーを装着している人に極超短波・超短波はペースメーカーの故障に繋がる可能性があるので特殊禁忌とされています。

また、人工関節などの金属置換をしている箇所に極超短波・超短波をしている場合も熱傷の危険があるので禁忌となります。

 

ここまで読んで頂きありがとうございました。