【リハに役立つ】物理療法:寒冷療法の生理学的効果

【医療者向け】物理療法

物理療法の中でも寒冷療法はよく使われる治療の1つです。

寒冷療法を上手く扱う、勉学を進めていくために寒冷療法の生理学的な効果は知っておく必要があります。

寒冷療法の生理学的効果・目的・適応・禁忌についてお伝えします。

寒冷療法の生理学的効果

寒冷療法は生体の循環系・代謝系・神経筋系対し、生理学的作用を引き起こします。

循環系

一次的血管収縮

寒冷療法によって組織温度が低下すると、皮膚の温度受容器や交感神経性アドレナリン作動性ニューロンが興奮し、末梢血管を収縮させます。

血液成分の構造的変化として、赤血球は15°以下に冷却されると集合体形成が促進され、血液粘度を上昇させます。

末梢血管の収縮・血液の粘度の上昇は血管抵抗や血流抵抗を高めるため血圧は高くなり、抹消循環血液量が減少します。

抹消循環血液量を減少させることで、熱の損失を防ぎ、体温を維持しようとします。

 

二次的血管拡張

組織温度を10°以下の状態で持続的に冷却することによって、冷却された組織を温めるために乱調反応寒冷誘発血管拡張などの二次的な欠陥拡張が生じます。

※乱調反応:冷却中の皮膚温にみられる周期的な温度上昇と低下を示す現象。これは、組織温度の低下に対する神経性の反射機構による生体防御反応であり、皮膚血管の動静脈吻合部によって引き起こされます。

※寒冷誘発血管拡張:四肢遠位部において長時間の強い冷却後にみられる血管反応で、遅発性の血管拡張効果により末梢血管が拡張し、冷却前に比べて血流量の増加と組織温度の上昇を引き起こします。

 

代謝系

組織温度が低下すると消費エネルギー量が減少し、酸素要求を抑えることにより組織の代謝活動を抑えることが出来ます。

一次血管収縮による組織血流量減少に伴い、血中酸素におけるヘモグロビンの解離が低下し、組織酸素活動が抑制されます。

 

神経筋系

部位 作用部位 作用機序 作用
神経 有髄線維・小径線維 単一活動電位の持続時間延長による活動電位発生頻度の減少 伝導速度の低下
運動神経ではγ線維、
感覚神経ではAδ線維が強く影響を受けます
神経筋接合部 シナプス小胞・シナプス前膜 アセチルコリン分泌の低下 興奮伝達の低下
筋紡錘 らせん終末・散形終末・腱紡錘 神経伝導速度の低下(γ線維・Ⅰa線維) 筋紡錘活動の低下(伸張反射・固有受容感覚の低下)

神経伝導速度の低下

組織温度が低下すると単一活動電位の持続時間が延長し、活動電位発生頻度が減少することで運動・感覚神経の伝導速度は低下します。

痛覚を伝導するAδ線維が強く影響を受けるため、急性痛の緩和を図ることができます。

運動神経ではγ線維が寒冷刺激が強く影響を受けるため、筋緊張の軽減を図ることができます。

 

神経接合部の興奮伝導の低下

寒冷刺激は神経伝導速度の低下やシナプス前膜におけるアセチルコリン分泌量が減少し、神経筋接合部の興奮伝導を低下させます。

 

筋紡錘活動の低下

寒冷刺激によって組織温度が低下すると、γ線維の神経伝導速度の低下により筋紡錘の活動性を低下させます。

筋紡錘の活動性が低下することで、筋緊張軽減を図ることが出来るため機械的侵害受容器による疼痛軽減を図ることが出来る可能性があります。

寒冷療法の目的

急性外科(救急措置)における寒冷療法の目的

急性外傷では一時的外傷性損傷二次的外傷性損傷が引き起こされます。

一次的外傷性損傷では外傷によって直接的に組織が損傷され組織破壊が起こります。

生体では組織破壊によって壊死または壊死しつつある組織をマクロファージが排除し、正常な組織への再生を促進するため炎症が惹起されます。

 

一次的外傷性損傷により惹起されや炎症は、損傷組織周辺に二次的低酸素状態二次的酵素性損傷を引き起こします。

二次的損傷酸素性損傷により正常な組織の二次的外傷性損傷を引き起こし、炎症は助長され拡大されます。

また、炎症メディエーターによって誘発される痛みは周囲骨格筋の緊張を高め、血管を収縮させ、さらに二次的低酸素状態を増悪させることにつながります。

そのため、急性外傷における救急措置として可及的速やかに炎症を抑制し、二次的外傷性損傷を防ぐことで炎症の拡大を予防することが、機能障害の程度や治癒期間に影響を与える重要なポイントになります。

※二次的低酸素状態:外傷によって直接的に損傷された組織では、出血などの血管損傷が起こり、損傷部位より末梢の血行が断たれます。炎症性のうっ血・浮腫のために周辺組織に分布する血管は圧迫され血流が減少することにより低酸素状態となります。

※二次的酸素性損傷:炎症過程における食作用により組織が破壊され壊死した細胞を消化するための酵素が活性化されます。この酵素が周辺組織の正常な細胞に接触すると、細胞膜を破壊し壊死を引き起こします。

※炎症メディエーター:ヒスタミン・プロスタグラジン・ブラジキニンなどがあり、組織損傷に伴う炎症によって白血球・肥満細胞、マクロファージなどから放出される物質です。

整形外科術後における寒冷療法の目的

運療療法の前処置としての寒冷療法

筋骨格系障害の炎症期において、寒冷療法は痛み筋スパズムの緩和による早期からの運動療法開始を目的に、その前処置として施行されます。

早期に運動療法を開始ずることは廃用症候群を予防するとともに、リンパ液・老廃物の運搬を促進し、酸素・栄養が供給されることで損傷部位の修復を助けます。

神経症状としてみられる痙縮に対し、寒冷療法は即時的な痙縮改善を目的に関節可動域訓練や運動療法の前処置として施行される場合があります。

 

ファシリテーションテクニックとしての寒冷療法

錐体路障害によって弛緩性麻痺を呈した神経筋に対し、感覚受容器に対して刺激を加え、脊髄反射や姿勢反応を利用してα運動神経の興奮性を高め、筋収縮活動の促通を目的にアイスマッサージが適用される場合があります。

 

運動療法後の寒冷療法

運動療法後に寒冷療法を施行することによって、炎症を抑えるとともに痛みや筋スパズムを緩和し、遅発性筋肉痛の程度を軽減することが出来ます。

※遅発性筋肉痛:運動負荷された筋の圧痛・運動痛であり、機械痛覚過敏状態です。遅発性筋肉痛は繰り返されることによって重篤な慢性的変化・痛みへとつながる可能性があります。

寒冷療法の適応と禁忌

寒冷療法:適応

急性外傷における救急措置

①急性腰痛症

②頸部捻挫

③骨折

④脱臼

⑤その他の捻挫・打撲など

 

整形外科術後の炎症の抑制と止血

①人工関節置換術

②靭帯再建術

③骨整復固定術

④骨・関節形成術

 

運動療法の前処置として痛み・筋スパズムの緩和

①肩関節周囲炎

②石灰沈着性腱炎

③変形性関節症

④関節リウマチ

 

中枢神経障害による痙縮の抑制

①脳卒中

②脳性まひ

③脊髄損傷

 

脳卒中片麻痺に対する神経筋活動の促進

①脳血管障害による弛緩性麻痺

 

運動療法後のクーリングダウン

①遅発性筋肉痛

②疲労感

 

寒冷療法:禁忌

①重度の心疾患・呼吸器疾患:身体の広範囲10%以上に寒冷刺激を負荷する場合は、血圧や心拍数の上昇が起こります。心不全・動脈硬化・血栓症などが疑われる場合は慎重な検討が必要です。

②寒冷過敏症:寒冷療法実施中に強い痛みや痒み、冷感などを訴えます。寒冷療法実施後には拍動性疼痛感が出現します。

 

【禁忌部位】

ー心臓および胸部

ー重度の感覚障害のある部位

ー開放創:整形外科術後早期に炎症の抑制と止血などを目的に寒冷療法を行う場合、創部からの感染のリスクがあるので注意が必要です。

 

ー浅在性の主要神経経路:肘(尺骨神経)や膝(総腓骨神経)などに寒冷療法を実施する場合は、浅在性の主要神経が走行しており、長時間の冷却を行うと神経伝導障害を引き起こすことがあるため注意します。

 

【禁忌症状】

ー末梢神経障害:抹消循環障害があると、寒冷負荷に対して生体防御反応が動作しにくいため凍傷のリスクが高くなります。

凍傷は過度の冷却が引き起こす組織凍結の状態を示し、組織損傷が生じます。凍傷の程度によっては血管・神経・筋が損傷され、重篤な後遺症をもたらす可能性があります。

寒冷療法を過度に行うと皮膚は青色または紫色に変化し、腫脹が生じ、水泡が形成され、やがて皮膚剥離が生じます。

ー表在感覚鈍麻

ー重度の高血圧

ー寒冷アレルギー症状

ー自律神経過反射:第6頚髄より高位の脊髄損傷患者では、麻痺域への寒冷療法によって自律神経過反射を引き起こす場合があります。

寒冷療法を施行する場合、頭痛や血圧上昇・徐脈・損傷部位より高位の発汗・鳥肌・皮膚の紅潮などの症状に注意し、徴候が現れたときにはただちに中止します。

 

ここまで読んで頂きありがとうございました。