尿検査は非侵襲的検査であり、スクリーニング検査としての役割が非常に大きいです。
尿糖・ケトン体・尿蛋白の測定は、主に糖尿病を疑う場合や、糖尿病の程度を把握するために行われます。
尿検査:尿糖
検査値 | 陰性 | 偽陽性 | 陽性 | ||
- | ± | + | 2+ | 3+ | |
数値 | 50未満 | 50~ | 100~ | 500~ | 2000~ |
症状 | ー | 尿糖単独では無症状 |
尿糖とは尿中に移行するグルコースのことであり、健常者では腎尿細管でほとんどが再吸収され陰性となります。
尿細管の再吸収閾値を上回って血糖が上昇した場合や、尿細管の再吸収障害がある場合に陽性となります。
尿検査:尿糖が陽性の時
症状 | 尿糖単独では無症状 高血糖状態が続くことで、糖尿病合併症の症状がみられる |
病態 | 血糖値が160~180mg/dL以上となると、濾過される糖の量が尿細管での再吸収値を超えるため尿に糖が出てくる |
原因・影響因子 | 高血糖(糖尿病・心筋梗塞・膵炎・膵癌・甲状腺機能亢進症・Cushing症候群・低K血症など) 腎尿細管障害(腎性糖尿・Fanconi症候群・重金属による腎障害など) 妊娠 SGLT2阻害薬の服用 |
尿糖が陽性の場合、高血糖による尿糖なのか・腎障害による腎性尿糖なのかを判断する必要があります。
高血糖の評価として血液検査の血糖値・HbA1cも合わせて評価します。
高血糖による陽性の場合、糖尿病合併症に注意します。
・網膜症
・糖尿病性腎症
・神経障害
・動脈硬化性疾患
・足の損傷・壊死など
尿検査:ケトン体
検査値 | 陰性 | 陽性(軽度) | 陽性(中等度) | 陽性(重度) |
- | + | 2+ | 3+ | |
数値 | 0 | 5~ | 20~ | 100~ |
症状 | ー | アセトン臭・意識障害 |
尿ケトン体とはアセト酢酸・3-ヒドロキシ酪酸・アセトンの総称です。
グルコースの代謝障害や摂取不足の指標となります。
体脂肪量・骨格筋が減少していないかを確認します。
ケトン体は脂質や蛋白質を分解した際の副産物で、ケトン体が高い場合、体脂肪や骨格筋の減少が推測されます。
尿ケトン体が陽性の時
症状 | アセトン臭 意識障害(ケトアシドーシス) |
病態 | グルコースがエネルギー源として利用できない場合、脂肪および蛋白質がエネルギー源として利用され、その分解が亢進したときにケトン体が生成されます。 |
原因・影響因子 | 飢餓 過剰な運動 糖代謝異常(糖尿病) |
まず、空腹でないかを確認します。
空腹で糖質が少ない状態で運動した場合、脂質がエネルギーとして利用されるためケトン体が産生されることになります。
ケトン体はエネルギー不足の状態で運動をした結果の産物なので、リハビリでは運動を制限する必要のある状態といえます。
インスリン作用不足が進むとケトン体が蓄積されるので、糖尿病の有無、服薬内容を確認します。
ケトン体の1つであるアセトンは気化しやすいので、特異な甘酸っぱい臭いがあるので、尿検査に加えて
・食事摂取量が少ない
・体調が良くない(シックスデイ)
・甘酸っぱい臭い
上記のような状態の時は注意します。
尿検査:尿蛋白
検査値 | 陰性 | 偽陽性 | 陽性(中等度) | 陽性(重度) |
ー | ± | + | 2+ | |
数値 | 15未満 | 15~30 | 30~ | 100~ |
症状 | ー | 尿蛋白単独では無症状 |
尿蛋白とは尿中に排出された蛋白質のことです。
健常人でも運動や立位、精神的ストレスなどで40~100mg/日(随時尿30mg/dL未満)の尿蛋白が認められます。
尿蛋白が陽性の時
症状 | 尿蛋白単独では無症状 腎疾患の症状(腎性高血圧・糖尿病合併症)で高値となることがあります |
病態 | 糸球体を自由に通過する分子量数万以下の血漿蛋白質が多量に産生され、尿細管の再吸収を上回って出現してきます 糸球体毛細血管の障害や内圧亢進、尿細管障害により高値となります 下部尿路系の炎症・欠席・腫瘍などにより高値なることがあります |
原因・影響因子 | 慢性糸球体腎炎 糖尿病腎症 高血圧性腎硬化症 巣状腎硬化症など |
腎疾患・糖尿病の有無を確認します。
運動や精神的ストレスで尿たんぱくが増加するため、生活活動を含めた運動内容やストレスの程度を把握しておく必要があります。
尿Albや糸球体濾過量(eGFR)をあわせて確認し、糖尿病腎症病期や慢性腎臓病の重症度を把握します。
尿ケトン体濃度が中等度以上陽性であるときは運動療法が禁忌となります。
まとめ
尿糖・尿ケトン体・尿蛋白が高値で糖尿病が背景にある場合、糖尿病の羅漢期間が長く、他の合併症も併発している可能性もあります。
尿糖・尿ケトン体・尿蛋白それぞれは腎障害に関連するものです。
運動を行うと筋への血流量が増え、腎臓などの内部への血流量は少なからず減少するため、運動療法による腎臓への影響を念頭に置く必要があります。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
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