関節可動域制限に対する治療の考え方(筋収縮に対する効果)

【医療者向け】基礎

臨床における関節可動域制限の多くは拘縮のような軟部組織の器質的な変化に筋収縮が加わった病態を呈していることが多いです。

痛みが生じている場合、痛みは多シナプス反射により筋収縮を惹起することが分かっているため、痛みが筋収縮を発生させ関節可動域制限の助長につながります。

そして、痛みが生じている又は痛みが生じやすい症例では、ストレッチや関節運動を行った際に痛みが出現・助長されることで異常な筋収縮が生じることで拘縮に対して直接的なアプローチが出来なくなります。

つまり筋収縮によって関節可動域制限が生じている状態を治療しなければ、拘縮を進行させてしまうことにつながってしまいます。

そのため、関節可動域制限に対する治療の初期では筋収縮を抑える必要があります。

 

筋収縮の抑制①:スタティックストレッチ

運動療法の1つであるスタティックストレッチ(持続的なストレッチ)は、骨格筋を持続的に伸張することでゴルジ腱器官が興奮させ、Ib線維を介して脊髄後角で抑制性介在ニューロンを介して同名筋は弛緩されます。(Ib抑制)

スタティックストレッチによって筋収縮を抑制すると関節可動域拡大の即時効果が得られると報告がされています。

※関節可動域制限の原因が上位ニューロン由来のものである場合、ストレッチの生理学的変化は末梢神経~脊髄までのみ期待出来るため、根本的な治療は困難です。即時効果はあっても長期的な効果はあまり期待出来ないと言われているので、関節可動域制限の根本的な原因が運動器・下位運動ニューロン由来のものか、上位運動ニューロン由来のものか見極めて予後予測しストレッチを行う必要があります。

 

筋収縮の抑制②:振動刺激

ストレッチ以外に物理療法にて筋収縮を抑制することは可能であり、ストレッチと異なり物理療法は治療者の技術に左右されにくいという利点があります。

物理療法の中でも振動刺激は筋収縮を抑制する物理療法の代表であり、先行研究から様々な効果が出ていることが分かっています。

Bongiovanni LG et al:Tonic vibration reflexes elicited during fatigue from maximal voluntary contractions in man.J Physiol 423:1-14.1990
Bongiovanni LG, et al:Prolonged muscle vibration reducing motor output in maximal voluntary contractions in man.J Physiol 423:15-26,1990

上の研究では、最大収縮させた前脛骨筋に振動刺激を負荷すると、筋出力・α運動ニューロンの発揮頻度が一時的に減少したとされています。

 

Desmedt JE et al:Mechanism of the vibration paradox:excitatory and inhibitory effects of tendon vibration on single soleus muscle motor units in man. J Physiol 285:197-207,1978

上の研究では【低周波+大振幅】の振動刺激は筋収縮を抑制することを示唆しています。

 

中林絋二, 他:振動刺激による可動三頭筋による下腿三頭筋の筋緊張抑制効果ーH/M比を用いた筋緊張の経時的解析, 理学療法学 26:393-396,2011

上記研究では振動刺激時間を検証しており、下腿三頭筋に振動刺激を開始した1分後からH波/M波の有意な低下を認め、3分後からプラトーになることが示されています。

※H波:脊髄前角細胞の興奮性を示す代表。H波/M波という表現は筋の持続収縮をより正確に表すために用いられている。

 

振動刺激により筋収縮が抑制されるメカニズム

骨格筋に与えられた振動刺激は筋長の微小な変化という形で筋紡錘に感知され、Ⅰa線維・Ⅱ線維に伝わることで脊髄においてシナプス前抑制の発動によってα運動ニューロンの興奮を抑制します。

このように骨格筋に振動刺激負荷が加わることで筋収縮が抑制されるメカニズムは脊髄反射回路が大きく関与しています。

脳卒中・脊髄損傷などによる上位ニューロンの異常から生じる痙性に対して振動刺激は効果を発揮することが報告されています。

しかし、即時的に効果は期待出来ても、根本的な解決にはならないため長期的な効果はあまり期待出来ません。

 

筋収縮抑制の必要性

関節可動域制限の要因として筋収縮が関わっていると適切な治療を提供することで、筋収縮を抑制し即時的に関節可動域の改善を図ることが出来ます。

筋収縮は外的刺激によっても惹起されやすく、筋収縮を惹起している原因又は異常な筋収縮を治療するということは拘縮の発生・進行などによる新たな関節可動域制限の防止に影響します。

拘縮などの軟部組織の器質的変化に対する治療を行っても、筋収縮が惹起されすい状態を解決出来なければ拘縮に対する治療の効果が半減又は得られなくなります。

そのため、関節可動域制限の進行、治療効果を発揮するために異常な筋収縮を抑制することが必要不可欠だということです。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

コメント

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