【リハに役立つ!!】関節可動域制限に対する治療戦略の考察まとめ

【医療者向け】ストレッチ
拘縮の定義は以下の通りです。
「皮膚や骨格筋、腱、靭帯、関節包などの関節周囲軟部組織の器質的変化に由来した関節可動域制限」
上記の定義では筋スパズム・痙縮などによって生じる筋収縮は含まれていませんが、関節可動域制限の多くは拘縮に筋収縮の影響が加味されたものであり筋収縮の影響は決して無視できません。
もし筋収縮の影響を無視してしまうと拘縮の病態である軟部組織の器質的変化に対して十分なアプロ―チは難しいと思われます。
筋収縮が生じやすい状態というものは関節の不動を招き、関節の関節の不動が痛みの発生や疼痛による筋収縮を惹起し、不動になるという負のスパイラルが生じると関節可動域制限は重篤なものとなってしまいます。
関節可動域制限の発生・進行に関与する悪循環に着目していきます。

1.疼痛と関節可動域制限の悪循環

組織損傷などの発生によって生体に侵害刺激が加わると、侵害刺激は脊髄後角から大脳皮質に痛覚を知覚させるのと同時に多シナプス反射により運動神経を興奮させて筋収縮が生じます。
また、交感神経の興奮を引き起こすこともあり、交感神経の興奮が血管平滑筋の収縮を持続させ、運動神経による骨格筋の筋収縮と相まって組織を阻血状態にし新たな痛み物質(ブラジキニン・乳酸など)の生成を引き起こしてしまいます。
このような流れにより新たに痛みを発生させる痛みの負のスパイラルが生じます。
また筋収縮が持続するということはミオシンとアクチンでクロスブリッジ(強い結合状態)が形成されていることを意味するので、不動が強いられてしまいます。
持続的な筋収縮は筋線維と並列な位置関係にある筋膜を短縮位にし、拘縮の発生を引き起こしてしまいます。
このように痛みが生じている箇所では拘縮の発生を引き起こす可能性があり、関節可動域制限の悪循環が完成します。
このような痛み・関節可動域制限の悪循環は術後などの運動器疾患をはじめとして多くの症例で考えられます。
痛み・関節可動域制限の悪循環をどこかで断ち切ることが重要であり、断ち切ることが難しいと重篤な痛み・拘縮に発展すると考えておかなければいけません。

2.不動による拘縮と疼痛の発展

骨格筋の不動は筋小胞体のCa²⁺の取り込み能の低下・蓄える能力の低下、筋小胞体の崩壊を引き起こすことでCa²⁺が筋細胞内に放散し筋収縮が惹起されやすい状態となります。
さらに骨格筋の不動は錘内筋の感受性が増加するという報告もされています。
このように骨格筋の不動が筋線維の収縮を惹起し、筋線維が収縮することでさらに骨格筋が不動状態になります。
また、関節の不動は疼痛の発生・増悪に関わると言われており、実際に健常人の前腕から手関節を4週間ギプス固定した後に圧力による疼痛を評価した結果、不動解除後・不動解除3日後・不動解除28日後において疼痛閾値の低下を認めていると言われています。
不動期間が4週間の場合は疼痛閾値の回復を認め、不動期間が8週間の場合は疼痛閾値の回復を認めず慢性痛に発展している可能性が示唆されています。
これは組織を不動化すると安静時・運動時の一時求心性神経には感作が生じているとされており、痛みの発生に関与していると予想されています。
また一時求心性神経の感作だけでなく、一次ニューロンから二次ニューロンに切り替わる脊髄部分では【WDRニューロン:低閾値~高閾値・関節運動に反応】と【関節運動のみに反応するニューロン】の割合が増えています。
これは痛覚を伝えるAδ線維とC線維が脊髄部分において脊髄部分で伝達する二次ニューロンは【侵害受容ニューロン】と【WDRニューロン】であり、WDRニューロンの割合が増えるということは関節運動などの非侵害的な刺激でもWDRニューロンが過度に反応し痛みとして脳に伝達される可能性があるということです。
【不動による疼痛位置値変化】
末梢神経:Aδ線維とC線維などの感作
中枢神経:WDRニューロン割合の増加(非侵害的な刺激でも脳に痛みとして伝達)

関節可動域治療の考え方

姿勢の影響を考える

姿勢により下肢伸展筋群の筋緊張には違いがあり、臥位よりも座位・立位といった抗重力位とする姿勢の方が伸張反射の利得が抑えられ、下肢筋の筋緊張は低下すると考えられています。

実際に健常人のヒラメ筋を対象とした研究では端座位よりも立位でヒラメ筋の緊張が低下していると示唆されるような結果が出ています。

また、立位時のヒラメ筋の筋緊張の示唆は荷重量による違いを認めていません

しかし、BRSⅢ~Ⅳを対象とした同様の研究では、長座位・立位時などの姿勢や立位時の荷重量によるヒラメ筋の緊張の違いは認められていません。

そのため、運動器疾患などの上位運動ニューロンの障害が無い症例では、座位や立位でストレッチ・関節運動を行うことが得策であると考えられます。

 

防御性収縮の影響

骨格筋の拘縮の病態には筋長の短縮がありますが、短縮した筋を伸張しようとすると筋につっぱり感痛みが生じ、その筋が収縮するということが多々あるかと思われます。

この時、伸長された筋だけでなく拮抗筋やその周辺筋群が収縮すると短縮した筋を十分に伸張することは難しいと言えます。

そのため、このような

防御性収縮を取り除かなければ拘縮の十分な改善は見込めません。

筋収縮の影響を取り除く

筋収縮の影響を取り除く治療手技として最も代表的なのがスタティックストレッチです。

持続的な骨格筋の伸長は腱紡錘を刺激し、Ⅰb線維を介して興奮が脊髄に伝搬され、最終的に同名筋のα運動ニューロンを抑制するように作用し、筋弛緩を図ることが出来ます。

ヒラメ筋などの下肢伸展筋を対象としたストレッチングを行う場合は、姿勢を考慮し立位訓練と並行して行う事が望ましいと思われます。

物理療法として温熱療法Ⅱ線維γ運動神経の活動を低下させ、Ⅰb線維の活動は増加させると言われています。

このように温熱療法は最終的にα運動ニューロンの活動を低下させ筋弛緩を図ることができ、さらに循環改善により発痛物質の除去にも繋がり疼痛由来の筋収縮を抑制させることも出来ます。

筋収縮が原因の関節可動域制限は、治療手技によって即時効果が得られやすく、1回の治療で関節可動域制限が改善したのであれば、改善した病態は筋収縮の要素であると考え軟部組織の器質的変化が改善したものではないと十分に念頭においておく必要があります。

 

拘縮の治療

不動によって生じる拘縮は骨格筋における筋膜と関節包のコラーゲン線維の変化が主であるとされています。

コラーゲン線維を対象とした治療方法の中で、即時的に影響を与えることが出来るのは温熱療法のみとされています。

しかし、コラーゲン線維に影響を与えるまでの温度はきわめて高く実際の臨床で行っているであろう温熱療法では即時効果を得ることはかなり難しいと言われています。

そのため筋内膜を構成するコラーゲン線維の可動性が低下していたり、含有量が増加(線維化)している場合は即時的に関節可動域拡大を図ることはかなり困難だと思われます。

筋線維が弛緩している状態で、関節周辺の環境を調整しながら関節可動域運動などの治療を継続して行っていけば徐々にコラーゲン線維の可動性は改善していく可能性はあります。

また、筋細胞も活性化され線維化も軽減していく可能性はあります。

温熱療法の中でも超音波を一定期間行うと不動によって生じたコラーゲン線維の架橋結合の数や架橋結合の強度が改善すると報告もされています。

関節包のコラーゲン線維の器質的変化に対しても運動療法や物理療法などの治療を継続して行う必要があり、即時的に1回の治療で改善することはかなり難しいと思われます。

ここまで読んで頂きありがとうございました。