【理学療法士が伝える!】シナジーについて基礎知識

【医療者向け】基礎

シナジーという言葉を聞いたことはありますか?

シナジーとはいくつかの機能的に類似した筋をまとめて支配する神経制御機構と呼ばれていますが、簡単に言うと【複数の筋肉をまとめた筋活動パターン】です。

人が動く為には筋が収縮し骨を動かすることで関節を曲げる必要があります。

しかし、筋を1つ1つを個別を制御することは理論上かなり難しく、実行することはかなり困難と言えます。

そのため、動きを制御するためには複数の筋活動のパターンをもっておき運動によって活動パターンを組み合わせます。

 

シナジー

あらためてシナジーとは【複数の筋をまとめた筋活動パターン】であり、1つの運動を行う為に複数持っている筋活動パターンを組み合わせることで運動を行います。(上図)

上図では1つの運動を行う為に筋活動パターン1と2を組み合わせています。(上軸:筋活動、横軸:時間)

しかし、全てが上図のように表現できるわけではないので注意が必要です。

トレッドミル上で歩行をしている時の体幹・下肢筋活動が、5つのシナジーによって制御されている可能性を示している研究もあります。(以下)

Ivanenko YP, et al:Five basic muscle activation patterns account for muscle activity during human locomotion. J Physiol 556:267-282,2004

上記の研究ではトレッドミル歩行を行っている時、12~16の筋肉から筋電図を測定し、歩行速度や免荷量をそれぞれ4段階設定し、様々な条件下の歩行時の筋活動パターンを記録すると多様なパターンを示しました。

多様な筋活動の波形パターンを分析すると波形は5つのパターンに類型化されていることが分かり、5つの波形パターンを基本として様々な歩行条件下の歩行の筋活動を調節していたということです。

つまり、トレッドミル歩行を制御するために5つの【シナジー:複数のまとめた筋活動パターン】が基本であり、それぞれのパターンを利用し制御しているということです。

 

脳卒中の運動麻痺とシナジーの変化

シナジーの研究は脳卒中などの運動障害が生じた患者の症状の理解を得ることに役立つと思われます。

脳卒中などによる運動障害が生じるとシナジーはどのように変化するのかをお伝えしていきます。

脳卒中などにより運動障害が生じると、脳卒中の回復過程の変化にも応じてシナジーは主に3つの変化が生じます。

 

シナジーの変化①

パターン1つは健側と比較し運動障害によりシナジーが少なくなるということです。

シナジーが少なくなるということは制御が単純になり、スムーズ・柔軟な協調運動を行うことが難しくなります。

シナジーが少なくなるというタイプは重度脳卒中患者のような麻痺の程度が高い患者に著明です。

シナジーが少なくなるということが共同運動の発現・関節可動域制限につながっている可能性も考えられています。

 

シナジーの変化②

次に健側と比較し麻痺側運動は巧緻性に欠けますが、シナジーの構成が健側と変わらないタイプです。

健側とシナジーが変わらないタイプは麻痺の程度が低い患者に著明と言われています。

シナジーは健側と比較し著名な差がないのに、動作そのものが拙劣になっているということは脳が保有している運動パターンそのものではなく末梢レベルに原因があると考えられています。

 

シナジーの変化③

脳卒中の回復過程において健側とは異なる新しいシナジーが増えます。

脳卒中などの運動障害が生じてから経過が長い患者に著明であったことから、リハビリの成果・麻痺に対する適応を反映したものではないかと思われます。

脳卒中などの麻痺の改善は個別の筋肉に対する麻痺が改善したり・随意性が増したり・分離が良くなるということではないのです。

 

まとめ

シナジーとは【複数の筋活動パターン】のことであり、私たちの運動は筋活動パターンの組み合わせ・強弱による調整で行っていると言われています。

個人個人の体格・技術などから持っているシナジーは同じ運動でも全く同じものはないと思われます。

脳卒中などにより運動障害が生じるとシナジーが少なくなる・シナジーの弱小化などの変化が生じます。

しかし、リハビリ・自然回復などにより回復していくにつれてシナジーの筋活動が向上したり、シナジーのパターンが増えたりすることで本来の運動を取り戻したり、代償動作を獲得し生活の再獲得を図ることが出来ます。

これからシナジーの研究が進むと脳卒中患者などのリハビリが変わっていくかもしれませんね。

ここまで読んで頂きありがとうございました。